兵庫芸術文化センター管弦楽団第166回定期演奏会「佐渡裕 ガーシュウィン&バルトーク」


  2026年1月24日(土)15:00開演
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

佐渡裕指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団
上原ひろみ(ピアノ)

ガーシュウィン/ピアノ協奏曲(ヘ調の協奏曲)
バルトーク/管弦楽のための協奏曲

座席:A席 2階2B列44番


兵庫芸術文化センター管弦楽団は2025-2026シーズンで、20年目を迎えました。毎年1月の定期演奏会は、阪神・淡路大震災が発生した1月17日の前後に開催されていましたが、今年は1週間遅く、1月23日(金)、24日(土)、25日(日)の3日間でした。2日目の公演を聴きました。

注目は、世界的ジャズピアニストの上原ひろみ。「Place To Be(プレイス・トゥ・ビー)」や「Haze(ヘイズ)」が大好きですが、演奏会で聴くのは初めてです。上原がガーシュウィンの「ピアノ協奏曲」を演奏するのは今回が初めてとのこと。佐渡裕と上原ひろみも初共演でした。なお、佐渡裕は2025年8月に「令和7年度外務大臣表彰」を受賞しました。2025年6月まで10年間務めたトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督として、「音楽を通じた日本とオーストリアとの文化交流の促進」の功績が評価されました。現在は同団の名誉指揮者を務めています。

チケットは、芸術文化センター会員先行予約(9月4日)でも、一般発売(9月7日)でもすぐに販売終了になってしまい、確保できませんでしたが、ローソンチケットでなんとか確保できました。よかったよかった。しかし、システム利用料330円と店頭発券手数料165円がかかってしまいました。
なお、本公演と同一プログラムで、佐渡が2023年度から第5代音楽監督を務める新日本フィルハーモニー交響楽団で演奏しました(「横浜特別演奏会 佐渡裕×上原ひろみ」2026.1.30 横浜みなとみらいホール、「第667回定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉」2026.1.31 すみだトリフォニーホール、「第667回定期演奏会〈サントリーホール・シリーズ〉」2026.2.1 サントリーホール)。

14:45からプレトーク。佐渡裕が「今年もどうぞよろしくお願いします」と新年の挨拶。曲目解説(後述)に続いて、4月から始めたクラウドファンディングに160名から2200万円が集まったことを報告。さらに、来年度の定期会員募集の呼びかけ。本公演のプログラムに日程と指揮者が掲載されていましたが、佐渡は「英雄の生涯、ショスタコーヴィチの10番、シューマンの2番を指揮する」と明かしました。「クラリネットのリチャード・ストルツマンと共演するが、PACの卒業生の親戚で、LINEで知った」と、意外なつながりがあったことも紹介。林英哲は石井眞木の「モノプリズム」を演奏するようで楽しみです。佐渡がいつもよりボソボソ話しましたが、少しお疲れでしょうか。10分で終了。

本公演のプログラムに名前が掲載されたメンバーは90名で、コンサートマスターは田野倉雅秋。
プログラム1曲目は、ガーシュウィン作曲/ピアノ協奏曲(ヘ調の協奏曲)。ピアノ独奏は上原ひろみ。プレトークで、佐渡は上原について「昨日は本当にすごかったですよ。クラシックとジャズのジャンルを越えて。すっごい音がきれい。昨日は本当に感動した」と話しました。
上原は46歳。かわいらしい赤の花柄のチュニックに黒いパンツに、スニーカーを履いていました。髪の毛が多く、花束みたいに見える独特のヘアスタイルです。楽譜を置いて演奏しましたが、まったくと言っていいほど見ていません。オーケストラの前奏に続いて、上原のソロが始まると一気に別世界に連れていかれました。ピアノが輝かしくきれいな音色です。上原の顔がよく見えましたが、口は半開きで、上の方を見て弾き、客席のほうをよく見ます。客席と一緒に音楽を作り上げるというスタンスでしょうか。逆にオーケストラの方は見ません。上原はもっとアドリブを交えて弾くかと思いましたが、音型を崩さずに譜面通りに弾きます。京都市交響楽団大阪特別公演の山下洋輔のように鍵盤をひじ打ちしたりはしません。それに比べるとオーケストラ(特に金管楽器と打楽器)がやや重い。もう少し軽やかが欲しいです。第2楽章は、トランペットのソロはもっとジャズらしくやってもよかったでしょう。上原のピアノソロが入ると雰囲気が一変しました。長いカデンツァは上原ひろみオリジナルで、目をつぶって笑顔で弾きました。続けて第3楽章。弦楽器がなめらかな響き。カデンツァはまた上原のオリジナルで、佐渡も振り向いて聴いていました。足を鳴らしたり飛び上がったり、ちょっとだけ「ラプソディー・イン・ブルー」のメロディーを引用しました。まさに快感の表情です。演奏中にイビキのようなノイズが少し耳につきましたのですが、私だけでしょうか?。

演奏終了後は上原と佐渡がハグ。拍手に応えてアンコール。オーケストラと一緒に、上原ひろみ作曲/MOVEを演奏。ピアノが同一音を連打して始まり、低弦が伴奏リズムの音型を続ける中をピアノソロが続きます。いかにもジャズといったゲーム音楽のような作品です。上原は途中で立ち上がって弾きました。オーケストラの音色がいつもと違いました。
上原が走って出てきてもう1曲。アンコール2曲目は、上原のソロで、ガーシュウィン作曲/I Got Rhythmを演奏。鍵盤を押しているとは思えない柔らかい音色で、クラシックでは聴けないレベルの軽さ。ピアノ1台でひとつの音楽になっていて、自由自在に操ります。うなり声をあげながら足を踏み鳴らす弾きました。ここでも「ラプソディー・イン・ブルー」のメロディーをを入れ込みました。テンポが速い。ピアノという楽器の無限の可能性を感じる演奏でした。上原が弾いている姿から音楽する喜びが客席にも伝わってきました。小曽根真のように、ガーシュウィンだけではなく、ラフマニノフも弾いてほしいです。なお、上原は意外にもラーメン好きのようで、西宮北口駅の近くにある「拉麺 水輝(あくあ)」と「鶏白湯soba KIZUNA 西宮北口店」に行った写真が、上原のInstagram(@hiromimusic)にアップされました。

休憩後のプログラム2曲目は、バルトーク作曲/管弦楽のための協奏曲。プレトークで佐渡は「メインのバルトークは、オーケストラ自体が協奏曲。管楽器は2番奏者も3番奏者もソリストのよう。1943年に作曲されて戦争が影響してる曲で、第1楽章は壮絶な叫び」と紹介しました。
オーケストラ全体のレベルが以前よりも上がって、トゥッティの合奏力がかなり向上しました。木管楽器のソロがとてもよい。第1楽章「序章」がかなりゆっくり始まりました。続くソロが健闘。348小節からの金管楽器のファンファーレも期待以上。438小節からの第2ハープは三味線のように打ち鳴らしましたが、fなのでスコア通りです。第2楽章「対の遊び」はファゴットの音量が大きい。スコアではpなのでもう少し小さく演奏して欲しいです。続くクラリネットとフルートが絶品。特にフルートの石原小春がかなりうまい。どの管楽器も2番奏者がうまいので、うまくハモって聴こえます。90小節からのトランペットも音量が大きい(スコアではp)。228小節からのトランペットのメロディーでハープのグリッサンドを聴かせました。第3楽章「悲歌」は、34小節からのトゥッティでトランペットソロを強奏させました。第4楽章「中断された間奏曲」を経て、第5楽章「終曲」冒頭の弦楽器はもっとガリガリ弾いてほしい。テンポが再び速くなってからの394小節から、ホルンの連符を聴かせるのがおもしろい。482小節(Più presto)からゆっくり盛り上げて、556小節(Lo stesso tempo, ma pesante)から一気に速いテンポに切り替え。トランペットがよく鳴りました。最後はリタルダンド気味に締めくくりました。

カーテンコールで佐渡がマイクを持ってMC。阪神・淡路大震災に触れて、アンコールとして大友良英作曲(江藤直子、加藤みちあき、荻原和音編曲)/ 「そらとみらいと」Part3 祭りと空と short ver.を演奏しました。演奏前に、第1楽章と第2楽章について説明して、「第3楽章は未来を見つめていこうという応援歌で、関西万博でも開会式で演奏した」と話しました。初演の兵庫芸術文化センター管弦楽団第156回定期演奏会「佐渡裕 マーラー8番「千人の交響曲」」で聴きましたが、また聴けるとは思いませんでした。打楽器メンバーが入場して、チャンチキと小さな締め太鼓を演奏。佐渡は客席を振り向いて、三・三・七拍子を指揮。最後はチャンチキの連打で終わりました。なお、カーテンコールでは写真撮影が可能でした(演奏中は禁止)。17:10に終演。

終演後に大ホールのホワイエで佐渡裕のサイン会があり、100人くらいが並びました。せっかくの機会なので、参加しました。サインは1点のみで、記念撮影も可能で、スタッフが撮影してくれました。佐渡は私服に着替えて登場。パンフレットにサインしてもらって記念撮影。最後に握手。「また来てね」と声をかけてくださいました。流れ作業のように進むため、話す時間はありませんでしたが、ファンサービスがすごい。間違いなく日本で一番でしょう。お疲れのところありがとうございました。

兵庫芸術文化センター管弦楽団は、3年でメンバーが入れ替わりますが、期待以上の演奏でした。来シーズンは楽しみなプログラムが多いので、期待しています。

なお、アンコールで演奏された「そらとみらいと」のCDが2025年12月17日にリリースされました。演奏は大友良英スペシャルビッグバンドですが、佐渡裕が「Special Guest」として「第2楽章 Life」のconductingを担当しています。佐渡裕のInstagram(@yutakasado_official)によると、兵庫のオペラの稽古OFF日を利用して、六本木のスタジオで1時間だけ録音に参加したとのこと。「第1楽章 レクイエム」「第2楽章 Life」「第3楽章 祭りと空と」の全曲と、最後に「Epilogue」を収録しています。収録時間は47分で、兵庫芸術文化センター管弦楽団第156回定期演奏会「佐渡裕 マーラー8番「千人の交響曲」」で演奏されたオーケストラ版よりも2倍以上長い。
大友良英はCD封入の解説で、2013年のNHKドラマ「あまちゃん」を演奏するために集まったメンバーが大友良英スペシャルビッグバンドの原型で、サックスを吹いている江川良子が佐渡と仕事をしている縁で、佐渡から作曲の依頼があったと綴っています(江川はこの録音にも参加)。「第1楽章 レクイエム」の「Scene1」(6分)は全員でmetal percussionを演奏。「Scene2」(10分)はゆったりとメロディーが演奏されます。「第2楽章 Life」は、「Scene1」(5分)、「Scene2」(2分)、「Scene3」(5分)から成りますが、オーケストラとは楽器編成が異なるため、ピアノソロや打楽器ソロなどがあり、ずいぶんと印象が違います。「Scene2」はエレキギターとドラムが中心で、即興演奏というよりは楽譜に沿って演奏しているように聴こえました。「第3楽章 祭りと空と」は16分もあり、オーケストラ版で弦楽器で演奏されるメロディーが管楽器で演奏されます。1回落ち着きますが、ふたたび盛り上がって、後半は不協和音や打楽器の乱れ打ちで、熱狂的な演奏。ジャズバンドならではのアレンジです。最後の「Epilogue」(1分)は、どこかのお祭りのお囃子が聴こえてくる不思議な終わり方です。

 

開場 プレトークの案内 映像モニター 開場 カーテンコールにて写真撮影が可能です アンコール曲 サイン会の案内

(2026.2.27記)

 

京都大学交響楽団第218回定期演奏会