KCH的クラシック音楽のススメVol.5「石田泰尚 ヴァイオリン・コンサート」
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2025年2月9日(日)14:00開演 京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ
石田泰尚(ヴァイオリン)、中島剛(ピアノ)
スメタナ/わが故郷 フランク/ヴァイオリン・ソナタ クライスラー/愛の悲しみ クライスラー/シンコペーション クライスラー/テンポ・ディ・メヌエット ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女(ヴァイオリンとピアノ版) ドビュッシー(ハイフェッツ編)/ゴリウォーグのケークウォーク ピアソラ/アディオス・ノニーノ ピアソラ/フラカナーパ ピアソラ/天使のミロンガ ピアソラ/ル・グラン・タンゴ(ヴァイオリンとピアノ版)
座席:全席指定 2列21番
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本公演は、「KCH的クラシック音楽のススメVol.5」として開催されました。KCHとは京都コンサートホールのイニシャルで、「何を聴けば良いか分からない? そんなときは、KCHにお任せあれ!」ということで、京都コンサートホールが自信を持ってオススメするコンサートシリーズです。これまでに、反田恭平(第1回、2019年7月)、The Rev Saxophone Quartet(第2回、2022年2月)、東京六人組(第3回、2023年3月)、小曽根真(第4回、2023年5月)が出演しました。
チケットは、京都コンサートホール・ロームシアター京都Club会員と京響友の会会員対象に10月5日に先行発売されましたが、ほぼ即日完売状態で、10月12日の一般発売では残り僅かが発売されて、10月25日に全席完売しました。
この日は下の階の大ホールでは、「高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト コンサートツアー2024~2025」が開催されました。大ホールも小ホールもヴァイオリンコンサートは珍しい。高嶋ちさ子も全席完売で、開演時間が近かったため、北山駅周辺の飲食店のランチはどこも行列でした。石田と高嶋ちさ子のツーショット写真が、石田が所属する音楽事務所(株式会社ミュージシャンズ・パーティー)のX(@musiciansparty)に掲載されました。大ホールの高嶋の楽屋に石田が挨拶に行ったようで、こういうところはきちんとされていますね。
本公演は圧倒的に女性が多く、女性トイレが大行列でした。前日の
石田泰尚氏による京都市ジュニアオーケストラ公開レッスンに出演した杉江洋子と出原修司も聴きに来られていました。私の座席は前から2列目で、むっちゃ前でした。ステージを見上げる感じで、石田が吐く息やため息もたまに聴こえました。
石田は黒い服で白縁メガネをかけていました。バックプリントに白で絵が描かれていましたが、何の絵柄かは不明です。石田は全曲(アンコールを含めて)譜面台を立てて演奏しました。ピアノの中島剛(ごう)は、東邦音楽大学で専任講師を務めていて、後述するように石田と共演したCDがリリースされています。
プログラム1曲目は、スメタナ作曲/わが故郷。曲名が似ていますが、連作交響詩「我が祖国」とは別の曲で、2曲からなります。石田はオクターヴの重音もあっさり力を加えずに弾きます。最後は弾き切ったというパフォーマンス。
プログラム2曲目は、フランク作曲/ヴァイオリン・ソナタ。石田は大きな音を出しません。繊細そのものですが、ノッて演奏。両足を広げたり、足を揃えて背伸びするように弾いたり、膝を曲げて屈んだり、頭を上下にガクガクさせたり、動きを含めて石田の演奏と言えるでしょう。中島のピアノは、ソロの部分も控えめ。また響きすぎで輪郭が不鮮明なのが残念。第4楽章はやや速めのテンポ。
休憩後の後半は小品集。はじめにクライスラーを3曲。プログラム3曲目は、クライスラー作曲/愛の悲しみ。いいメロディーで、石田の音色によく似合います。
礼もせずに続けて、プログラム4曲目は、クライスラー作曲/シンコペーション。アクセントを強調して、楽しく聴ける作品です。
プログラム5曲目は、クライスラー作曲/テンポ・ディ・メヌエット。いいメロディーです。
チューニングしてから、続けてドビュッシーを2曲演奏。プログラム6曲目は、ドビュッシー作曲/亜麻色の髪の乙女(ヴァイオリンとピアノ版)。石田の美音を堪能できました。
プログラム7曲目は、ドビュッシー作曲(ハイフェッツ編)/ゴリウォーグのケークウォーク。組曲「子供の領分」の第6曲ですが、ヴァイオリンは原曲のピアノにはないメロディーを演奏しました。ピツィカートもありました。
演奏が終わっても礼をしないで次々に演奏します。ピアソラを4曲演奏。石田と中島が2021年にリリースしたCD「PIAZZOLLA LIVE」に4曲とも収録されています。プログラム8曲目は、ピアソラ作曲/アディオス・ノニーノ。長いソロが伸びやかで、右手で弾きながら、左手でピツィカートする部分がありました。重音のグリッサンドなど聴きどころも多く、石田組でも演奏して欲しい作品です。
プログラム9曲目は、ピアソラ作曲/フラカナーパ。ねっとりした演奏。
プログラム10曲目は、ピアソラ作曲/天使のミロンガ。ゆったりしたバラード。
プログラム11曲目は、ピアソラ作曲/ル・グラン・タンゴ(ヴァイオリンとピアノ版)。もともとはロストロポーヴィチのために書かれたチェロとピアノの作品ですが、まさにタンゴ。右手の弓さばきが見事で、リズミカルな表情を作り出します。やや長い曲でした。
拍手に応えてアンコール。アンコール1曲目は、クライスラー作曲/クープランの様式による才たけた貴婦人。民謡風のメロディー。
続けて、アンコール2曲目は、ファリャ作曲/火祭りの踊り。バレエ音楽「恋は魔術師」のからの1曲で、スピード感がある演奏ですが、スペインらしさは感じません。弾き終わるとその勢いですぐに早足で退場しました。
ふたたび登場して、アンコール3曲目は、
ジョン・ウィリアムズ作曲/シンドラーのリスト。
石田組2023/2024アルバム発売記念ツアーや、
京都市交響楽団第686回定期演奏会のアンコールで聴きましたが、いいメロディーです。演奏が終わると、楽器を構えたまま退場して笑わせました。
石田がマイクを持ってMC。「今日はどうもありがとうございました。ちょっともう疲れました。でももうちょっと弾きます」と話して、アンコール4曲目は、チック・コリア作曲/スペイン。ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」第2楽章の有名なメロディーからゆったりと始まり、途中からは速いテンポです。
石田が「だいぶ疲れちゃったんですけど、もう1曲やります」と話して、アンコール5曲目は、ピアソラ作曲/リベルタンゴ。速いテンポで、ピツィカートもあり、最後は倒れ込むように終わりました。カーテンコールの最後は、石田が楽器を左手で立てるように持って退場。16:05に終演しました。
アンコールを含めて16曲でしたが、あっという間の2時間で、ピアノ伴奏だけでもじゅうぶん楽しめました。プログラムもクラシックからピアソラまで多彩でした。すごく近くの席で聴けてよかったです。石田は今年で51歳で、今がまさに脂がのっている時期と言えるでしょう。外見のイメージとは真逆の繊細な演奏で、曲間でチューニングするほど音程に気を使っていて、音楽に対する真摯な姿勢がうかがえました。
なお、本公演の2日後の2月11日(祝・火)には、瀬戸市文化センター文化ホールで同じ曲目で「石田泰尚ヴァイオリンリサイタル」が開催されました。本当に全国を飛び回っておられます。また聴きたいです。
