石田泰尚氏による京都市ジュニアオーケストラ公開レッスン


 

2025年2月8日(土)18:00開演
京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ

京都市ジュニアオーケストラ有志メンバー
講師:石田泰尚(京都市交響楽団特別客演コンサートマスター)、杉江洋子(京都市交響楽団第2ヴァイオリン副首席奏者)、出原修司(京都市交響楽団コントラバス奏者)

モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138

座席:自由


 
京都市交響楽団特別客演コンサートマスターを務める石田泰尚が、京都市ジュニアオーケストラを指導する公開レッスンに行きました。京都コンサートホール・ロームシアター京都Club会員と京響友の会会員限定のイベントで、翌日の「KCH的クラシック音楽のススメVol.5「石田泰尚 ヴァイオリン・コンサート」」に合わせての開催です。石田泰尚がどんな指導をするのか、公開レッスンはめったにない機会で、興味がありまくりでした。明日は本番で、前日の夜なのに休めませんね。お忙しいところありがとうございます。
 
参加費は無料でしたが、11月1日から12月28日までに京都コンサートホールの申し込みフォームから事前申し込みが必要でした。定員は450名で、申し込み多数の場合は抽選でしたが、1月11日にめでたく当選メールが届きました。
 
石田泰尚は昨年11月10日(日)に石田組結成10周年を記念して日本武道館で公演を行ないました。8000人以上を動員して、日本武道館での弦楽合奏団の単独ライブは初めてだったとのこと。また、本公演の前々日の2月6日(木)には2025年4月から就任する横浜みなとみらいホール「プロデューサー in レジデンス」第3期プロデューサーとして、2025年度の自主事業ラインナップ記者発表会に出席しました。また、その日の夜には「YAMATO String Quartet 30th Anniversaryディナーショー」(ホテルニューグランド タワー館3階 ペリー来航の間)に出演(1人28,000円)。その翌日(本公演の前日)の2月7日(金)は浜離宮朝日ホールで、トリオジャパンの公演に出演しました。そして本日は京都で、共演者も曲目も違うのに、本当に人間離れした超多忙なスケジュールです。
 
この日は大雪で、京都市内でも8センチの積雪がありました。夜にはだいぶ溶けていましたが、京都コンサートホールの前の池は凍っていました。17:30に開場。本公演は自由席だったので、開場前に行列ができました。受付で当選メールを提示して入場。簡単なプログラムが配布されました。客席は8割くらいの入り。開演前は私語がなく緊張感がありました。
 
京都市ジュニアオーケストラの有志メンバーは、弦楽アンサンブルの26名。左から、第1ヴァイオリン8名、第2ヴァイオリン8名、チェロ3名、ヴィオラ5名。チェロの後ろにコントラバス2名の編成で、チェロ以外は立って演奏しました。メンバーは私服でした。チューニングの後、京都コンサートホールのスタッフから紹介。石田が講師で、杉江洋子と出原修司はアシスタントという位置づけです。出原を「Juvichan」と紹介しました。先に出原と杉江が登場して、石田を呼び込み。石田は赤い服に白メガネでした。練習曲目は事前には発表されませんでしたが、モーツァルト作曲/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138でした。JUN'ICHI'S Café~京都コンサートホール館長の音楽談義~Vol.3「広上淳一館長の『音楽づくり』に迫る」では、同じモーツァルトのディヴェルティメント ニ長調 K.136だったので、京都市ジュニアオーケストラはモーツァルトが好きですね。
 
最初に、出原が「昨日広島にいた」ということで、石田にもみじまんじゅうを渡すパフォーマンス。また、出原が「京都市ジュニアオーケストラが20年経つんですよ」と言うと、石田は「へぇー」のひとこと。「とりあえず聴かせてもらいましょうか」ということで、私の2列前の7列目(むっちゃ近い!)に3人が並んで座って演奏を聴きました。石田は足を組んでリラックスして聴きました。十分上手い演奏でしたが、第1楽章(アレグロ)はヴァイオリンのアーティキュレーションがもう少し揃うといいでしょう。第2楽章(アンダンテ)はややかったるく感じました。第3楽章(プレスト)はヴァイオリンがもう少しスリムな響きになるといいでしょう。

石田は「すばらしかった」とひとこと。石田は舞台裏まで自分の楽器を取りに行って、譜面台の横のピアノ用の椅子に置きました。石田にマイクが用意してありましたが、使わずに話しました。石田が「出だし」と言って第1楽章の練習。石田が前に立っただけで、音が変わりました。周りの音をよく聴くようになったからでしょうか。演奏を止めて石田が実際に弾いてみせました。「こういうような形」と手で示して、クレシェンド&デクレシェンドをつけるようにヴァイオリンに指示。「連符ではもうちょっとクレシェンドがほしい」と言うと、ヴァイオリンがなめらかになりました。コンサートマスターの譜面を見ながら一緒に演奏。石田が「26小節からぼわーんっていう感じが欲しい。音色(おんしょく)変えられますか」と話しました。杉江と出原はチェロの後ろで聴いていましたが、出原はコントラバスの音量が大きいと感じたようで「ヴァイオリンの音をよく聴いてみて」。杉江はヴィオラ、チェロ、コントラバスに「軽く」とアドバイスすると、中低音がまろやかになりました。石田が「36小節から第1ヴァイオリン以外は音量をもっと大きくできる?」とリクエストすると、第1ヴァイオリンもまとまってきました。杉江は「チェロはフレーズを意識して、もっとヴァイオリンを連れていって欲しい」。石田も「ちょっと重くなっちゃう」と同調。出原は「コントラバスは重い。軽さが欲しい」とアドバイス。

第2楽章は、石田が「第2ヴァイオリンにもうちょっと出してもらっていいですか?」と話し、石田に言われて、杉江も楽器を持ってきました。杉江に「最初弾いてもらえる?」と言われて、石田と杉江がデュエット。石田は「こういう感じで。第2ヴァイオリンは拍を意識しないで」。ヴィオラに後ろ向きにならないように指示すると、流れがよくなりました。出原はコントラバスに「八分音符が長いのでちょっと短くして」。杉江は「和音が変わるところは第2ヴァイオリンはおいしい」と第2ヴァイオリン奏者ならではのアドバイス。

第3楽章は、石田が「15小節から第2ヴァイオリンとヴィオラはもう少し大きくしてください。82小節から第1ヴァイオリンはがんばらなくてもいい」と音量バランスを指示。「58小節からエコーをやってる第1ヴァイオリンは、2回目は指の幅を狭める」と技術的なアドバイス。
 
ここで団員からの質問を受け付け。コンサートマスターから「第3楽章71小節2回目の繰り返しのときにあえて空気を作る表現をどう思うか?」と間を空ける表現についての質問。この曲は「京都市ジュニアオーケストラ アウトリーチ・コンサート」(2024.10.19 くろ谷金戒光明寺御影堂)で演奏したことがあるようで、その際に指揮者から指示されたようです。杉江が「私はやったことないなあ」と話すと、石田が「俺もない」と答えました。
ヴィオラ奏者から「第2楽章は低音が先に出るか、一緒に入るか、曲のはじめの入りの使い分けをどうしているか」という質問。石田は「そのときの空気。低音が曲を作って欲しいので、先に出て欲しいっていうのはある」と答え、杉江も同感で「ヴァイオリンはその中に入っていくほうが響きが豊かになる」と話しました。
ヴィオラ奏者から「モーツァルトを弾くときのコツは?」の質問に、杉江が「同じ音を弾いてはいけないと教わった。常に変化して次の和音に向かう」と話すと、石田も「その通り」とうなずきました。
第2ヴァイオリン奏者からも「モーツァルトを弾くときに気をつけることは?」の質問が出て、石田が「軽やかさが大事。あまり頑張りすぎない。変に押しつけない。モーツァルトは弾いててごまかしがきかないのでイヤ」とコメント。石田は言葉数が少なく、マイクを持ちたがらないので、出原が後ろから石田が言ったことをマイクで客席に伝達しました。
 
客席からの質問を受け付け。メロディーと伴奏のバランスについて、石田は「僕の場合セカンドヴァイオリンを聴くことです」と答えました。また、ヴァイオリンをやっているこどもから「右手と左手はどちらが大事か?」という質問に、石田は「両方大事」と答えました。
 
最後に石田、杉江、出原が加わって全員で演奏。繰り返しの有無を確認して、石田がコンサートマスターの隣に立ちました。演奏を始めましたが、石田が「ちょっと待って」と演奏を止めて、対面のヴィオラ奏者に、音が客席に飛ばないので、お客さんの方を向いて弾くように指導しました。全員で演奏。流れがあって一番いい演奏でした。第2楽章のヴァイオリンのメロディーもスリム。第3楽章は躍動感が生まれました。石田も石田組のように楽しそうに演奏しました。19:15に終演。
 
石田泰尚の指導は難しい用語は使わずに、音符単位の指示や音楽記号の話はしませんでした。おそらく石田組の練習でもそうなのでしょう。野球で例えると長嶋茂雄のような感覚的な天才タイプと言えるでしょうか。杉江も出原もいろいろ教えたそうだったので、もっとこういう機会があるといいですね。このようなイベントを企画してくれた京都コンサートホールに拍手。

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(2025.2.25記)

 

兵庫芸術文化センター管弦楽団第156回定期演奏会「佐渡裕 マーラー8番「千人の交響曲」 KCH的クラシック音楽のススメVol.5「石田泰尚 ヴァイオリン・コンサート」