ウエスティ音暦 〜Special Sounds ここにしかない音〜
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2024年6月8日(土)14:00開演 京都市西文化会館ウエスティホール
京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科 管・打楽専攻生 外囿祥一郎(指揮)
〜第1部〜 ジェイリン/パースペクティブより第1楽章(Paradigm)、第3楽章(Derivative) ラゴ/シウダデスより第1楽章「Córdoba(Spain)」、第3楽章「Tokyo(Japan)」 ヨーク/PCカルテット「トラディショナル・ヴァリューズ」 ヒンデミット/5つの管楽器のための小室内楽曲第2番 ヘイゼル/3匹の猫
〜第2部〜 リード/パンチネロ~ロマンチック・コメディのための序曲~ ルディン/詩のない歌 酒井格/波の通り道 ホルスト/吹奏楽のための第1組曲
座席:全席自由
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京都市立芸術大学の管・打楽専攻生によるコンサート「ウエスティ音暦」に行きました。2010年度から京都市西文化会館ウエスティホールで年2回開催されて、6月は管・打楽専攻が担当し、11月頃には弦楽専攻が演奏します。京都市立芸術大学は昨年10月に右京区の沓掛キャンパスから京都駅前の崇仁キャンパスに移転しましたが、キャンパス移転後の今年も開催されてよかったです。なお、副学長を務めた大嶋義実教授(フルート)が3月末で退官されて、4月からオーボエの加瀬孝宏准教授(元東京フィルハーモニー交響楽団首席オーボエ奏者)が着任しました。
コロナ禍中の2022年(
ウエスティ音暦 ー積年の名曲たちー)は事前申し込みが必要でしたが、昨年から予約なしで入場できるようになりました。今年も当日先着順で全席自由で400席です。13:30開場予定でしたが、50人ほどが並んだので、10分ほど早めに開場しました。9割の入りでほぼ満席でした。
第1部は、上回生のアンサンブル。プログラム1曲目は、打楽器四重奏で、ジェイリン作曲/パースペクティブより第1楽章(Paradigm)、第3楽章(Derivative)。ジェイリンはアメリカ出身で女性です。打楽器のセッティングは、前の二人は左右の木琴が向かい合って、後ろの左がドラムセット、後ろの右が大太鼓などの配置。第1楽章(Paradigm)は金属的なサウンドが斬新。第3楽章(Derivative)は楽器の配置を移動させて、4人で四角形になるように配置しました。リズミカルでノリもよく、打楽器の多彩な音色が楽しめました。前方の左の人(Player1)は振り向いて木琴(ビブラフォン)を演奏、前方の右の人(Player2)は振り向いて、吊っている薄い鉄板を叩きました。後方の右の人が黄色い鶏の人形(正式名称は「びっくりチキン」というらしい、ラーメン屋「とことんとりコトコト」にたくさん置いてある)を一瞬だけ鳴らしましたが、Player3の楽譜には「Squeaky Toy」と指定されていました。遊び心も楽しい。全部で7楽章あるとのことですが、全曲聴きたいです。曲間の司会は大学院生が順番に担当しました(第2部も同じ)。
プログラム2曲目は、サクソフォン四重奏で、
ラゴ作曲/シウダデスより第1楽章「Córdoba(Spain)」、第6楽章「Tokyo(Japan)」。プログラムには「Tokyo(Japan)」は第3楽章と記載されていましたが、おそらく第6楽章の誤りでしょう。左からソプラノ、テナー、バリトン、アルトの順。
第4回京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」での演奏のほうが、もっと音圧が強かったです。第6楽章「東京」は細かな音符を強調して躍動的な演奏。
プログラム3曲目は、ユーフォニアム・テューバ四重奏で、ヨーク作曲/PCカルテット「トラディショナル・ヴァリューズ」。左からユーフォ×2とテューバ×2。3つの楽章からなります。低音なのにはっきり発音して、モゴモゴしません。メロディーはユーフォニアムが高音で演奏しました。楽章の間でつばぬきしました。
プログラム4曲目は、木管五重奏で、ヒンデミット作曲/5つの管楽器のための小室内楽曲第2番。左からフルート、オーボエ、ホルン、ファゴット、クラリネットの順。5つの楽章からなり、第1楽章はすごく跳躍が激しいメロディー。第2楽章はフルート奏者がピッコロに持ち替えて演奏。第3楽章は葬送行進曲風。第4楽章はソロの対話。続く第5楽章は切れ目なく続けて演奏されました。ホルンがうまい。
プログラム5曲目は、金管十重奏で、ヘイゼル作曲/3匹の猫。フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルの委嘱作品で、作曲者が飼っていた3匹の猫がそのまま楽章のタイトルになっています。左からトランペット×4、ホルン、テューバ、トロンボーン×4の編成。猫の鳴き声の模倣などはなく、どこが猫なのかと思ってしまいましたが、猫のキャラクターを音楽にする発想がおもしろく、猫のイメージが変わる作品でした。第1楽章「ミスター・ジャムス」は、ピッコロ・トランペットの効果もあって、穏やかで澄み切った曲。第2楽章「ブラック・サム」に続いて、第3楽章「バーリッジ」はジャズのようなスウィングで、耳に残るメロディーです。演奏は重厚感があって貫禄がありました。
休憩後の第2部は指揮台が設置されて、吹奏楽での演奏。「京都市立芸術大学シンフォニックウィンドアンサンブル」の名称がついています。プログラムには81名のメンバーが掲載されていて、コントラバス×2もいます。クラリネットのコンサートミストレスが登場して、Gでチューニング。
指揮は京都市立芸術大学客員教授の外囿祥一郎(ほかぞのしょういちろう)。東京音楽大学教授、エリザベト音楽大学客員教授、昭和音楽大学客員教授、相愛大学音楽学部特別講師を務めています。昨年までは非常勤講師の若林義人が指揮を務めていましたが退任されたようです。また、外囿は若林が長年務めていた龍谷大学吹奏楽部音楽監督に今年度から就任しました(若林は桂冠指揮者に就任)。ユーフォニアム奏者にしては小柄な体型。54歳ですが、けっこう年輩に見えました。
プログラム6曲目は、リード作曲/パンチネロ~ロマンチック・コメディのための序曲~。土台となる和音の響きを重視して、さっぱりしたサウンドで、音色は高級感を出すよりも若々しい演奏。音量は十分すぎるほどでした。1曲ごとにメンバー入れ替えとチューニング。
プログラム7曲目は、ルディン作曲/詩のない歌。編成が減りました。バランスがいいサウンドで、ユーフォニアムのソロやクラリネットのメロディーを自然に浮かび上がらせるように聴かせます。
プログラム8曲目は、酒井格作曲/波の通り道。龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部の委嘱作品で、2006年度の吹奏楽コンクール自由曲で、若林義人が指揮して全国大会で金賞を受賞しました。伸びやかに歌いました。変わった打楽器の響きがしましたが、「4 Rins on Timpani」と指定があり、仏具の「おりん」のようです。なんと作曲者の酒井格本人が客席で聴いていて、演奏後に立ち上がってステージに拍手。
プログラム9曲目は、ホルスト作曲/吹奏楽のための第1組曲。第1楽章はやや速めで、外囿の指揮は大振りしなくても躍動感があります。第2楽章もやや速めで、第3楽章は123小節からテンポアップ。169小節のPiù mossoからさらにテンポアップ。もっと大きなホールで聴きたい演奏でした。
拍手に応えてアンコール。ビリク作曲/ブロックMを演奏。ミシガン大学の学生だった1955年に作曲されたようですが、今聴いてもまったく古さを感じません。「ブロックM」とはミシガン大学のロゴとのこと。対旋律をちゃんと聴かせます。中間部のトランペットのミュート音が楽しい。
16:12に終演。こんな演奏が無料で聴けるとは信じられないし、ありがたいことです。外囿の指揮はユーフォニアム奏者らしく、ハーモニーを重視して、メロディーはのびのび演奏できていました。今後も継続的に指導していただきたいです。
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(2024.6.27記)