ローム ミュージック フェスティバル2023 オーケストラ コンサートII「音楽物語「ペール・ギュント」×チャイコフスキー交響曲第5番」


2023年4月23日(日)17:00開演
ロームシアター京都メインホール

垣内悠希指揮/京都市交響楽団
佐々木蔵之介(語り)、朝岡聡(ナビゲーター)

グリーグ/音楽物語「ペール・ギュント」(組曲版)
 台本:新井鷗子の音楽劇台本シリーズ「おはなしクラシック①」(アルテスパブリッシング出版)より
チャイコフスキー/交響曲第5番

座席:S席 2階1列29番


「ローム ミュージック フェスティバル」に行きました。ローム ミュージック フェスティバル2019 オーケストラ コンサートII「二大コンチェルトの饗宴〜日下紗矢子・反田恭平 with 京都市交響楽団〜」に続いて、今回が2回目です。コロナ禍で2020年は中止になり、2021年は無観客でのオンラインでのライブ配信(有料)に変更され、前回の2022年は対面で開催されました。

今年は2023年4月22日(土)と23日(日)の2日間にわたって開催されました。公益財団法人ロームミュージックファンデーションが主催し、メインホールでは「オーケストラ コンサートI・II」、サウスホールでは「リレーコンサートA・B・C」と題した室内楽が、ローム・スクエアでは「ローム・スクエアコンサート」と題した中高生による吹奏楽コンサートが開催されました。なお、メインホールとサウスホールの全公演は、有料(各公演500円)で配信されました(ライブ配信+1週間のアーカイブ配信)。ロームミュージックファンデーションの各事業で関わった音楽家を「ロームミュージックフレンズ」と呼んでいて、1991年設立時から2023年3月現在で、なんと4,837名を数えます。「ローム ミュージック フェスティバル2023」には2日間で、35名のロームミュージックフレンズが出演しました。

なお、今回は、京阪バス京都三条案内所からロームシアター京都まで、無料シャトルバスが11時から18時まで30分間隔で運行されました。日本センチュリー交響楽団がザ・シンフォニーホールでの定期演奏会で、大阪駅からの送迎バスを運行して、多くの人が利用しているようですが、私が乗った13時発のバスは数人だけでした。新しい試みでしたが、ちょっと広報不足でしょうか。

 無料シャトルバス発着所 無料シャトルバス



<オーケストラ コンサートII「音楽物語「ペール・ギュント」×チャイコフスキー交響曲第5番」> 2023年4月23日(日)17:00開演 メインホール

「ペール・ギュント」の語りを佐々木蔵之介が担当するのが注目です。佐々木蔵之介は京都市出身で55歳。2021年に一般女性と結婚され、2022年度に京都府文化賞功労賞を受賞しました。日本中央競馬会(JRA)の年間プロモーションキャラクターを務めていて、前日にはグランドオープンした京都競馬場に来場しました。京響とは初共演とのこと。

指揮は田中祐子の予定でしたが、4月3日に降板と垣内悠希への変更が発表されました。田中祐子のTwitterによると「3月末頃に不調を感じ、家族付き添いのもと受診し、4週間の療養が必要であると医師の診断を受けました」とのこと。京都フィルハーモニー室内合奏団創立50周年記念第248回定期公演A「室内オーケストラで聴く大作Vol.5」でも前日のリハーサル&レクチャーを欠席しましたが、多忙で疲労が重なったでしょうか。本公演1週間後の4月30日に「4週間の療養期間を終え医師から「帯同人とその他条件付き」にてですが演奏の許可が出ましたのでご報告させて頂きます。(略)本日より徐々に活動を再開できればと思っております」と投稿されました。大事がなくてよかったです。

指揮者の垣内悠希も京都市交響楽団コンサートマスターの泉原隆志も、ロームミュージックフレンズです。客は8割の入り。ビュッフェカウンターは営業していました。

プログラム1曲目は、グリーグ作曲/音楽物語「ペール・ギュント」(組曲版)。ナビゲーターの朝岡聡が登場。メガネをかけていました。簡単にストーリーを紹介した後、指揮の垣内と語りの佐々木蔵之介が登場。佐々木は指揮台の左後ろ(コンサートマスターの前)で立って読みました。台本は、新井鷗子の音楽劇台本シリーズ『おはなしクラシック①』(2015年、アルテスパブリッシング)ですが、佐々木蔵之介が持っていたのは印刷された台本のようでした。佐々木蔵之介は口元にマイクをつけて話しました。声がとても聴きとりやすい。読む速さを工夫していて、間の空け方もうまい。さすが一流俳優で、すばらしいナレーションでした。

垣内悠希の指揮は初めて聴きました。45歳で、アーティスト写真よりもふっくらしていました。上半身の恰幅がよく、指揮棒の振りが大きい。演奏解釈はスタンダードで、細部のデフォルメはありません。小澤征爾に師事し、2011年のブザンソン国際指揮者コンクールに優勝して、2016年から2019年まで札幌交響楽団指揮者を務めましたが、同じコンクールで優勝した沖澤のどかに比べると、最近の活躍はいまひとつでしょうか。

演奏したのは「第1組曲」と「第2組曲」と同じ8曲でしたが、ストーリーに沿っているので、組曲とは演奏順が違います。いきなり「ソルヴェイグの歌」からスタート。演奏中にも佐々木の語りが重なり、「私の名はソルヴェイグ。私が愛したペールギュントの物語です」と紹介しました。24小節まで演奏して、続く「花嫁の略奪とイングリッドの嘆き」はいつもの京響より濃厚。佐々木は椅子に座って読みました。「山の魔王の宮殿にて」は遅いテンポから開始。「オーゼの死」に続く、「朝の気分」は佐々木が「モロッコの朝」と紹介。アフリカの朝だったんですね。左右に歩きながら読みました。「アラビアの踊り」はリズミカルでいい。「アニトラの踊り」に続いて、「ペール・ギュントの帰郷」は、激しい嵐。最後はふたたび「ソルヴェイグの歌」を最後まで演奏。ペール・ギュントが亡くなる佐々木のナレーションに最後はウルッと来ました。

演奏終了後の朝岡のインタビューで、佐々木は「いつもの何百倍ドキドキした」と話しました。今回のオファーは「大覚寺で9月に撮影をナビゲートしたが、帰りのタクシーを待ってる間に話がものすごく大きくなった」と明かしました。朝岡が「ぜひ続編を」とリクエストされて、客席から大きな拍手。ぜひまた来て欲しいです。なお、大覚寺での撮影とは、チラシが封入されていた「ロームミュージックチャンネル」(https://curtaincall.media/rmf)で無料で配信されている「Kyoto × Classics Vol.5 大覚寺~平安より受け継がれし寺院に華やぐピアノ三重奏の響き~」のことで、2022年9月6日に小林美樹(ヴァイオリン)、上村文乃(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)が演奏。佐々木蔵之介はナビゲーターで出演して、執行長や出演者にインタビューしています。大覚寺には撮影でよく来たことがあるとのこと。

休憩後のプログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第5番。京都コンサートホールよりもステージが近いのでよく鳴ります。垣内は立ち位置を変えてよく動きます。若くてエネルギッシュで、弦楽器はめいっぱい鳴らして、強奏はあおり気味の指揮。この作品の荒々しいところをよく表現していると言えますが、オーケストラも体力を消耗したことでしょう。第2楽章の95小節からなど大振りでかなり煽りました。第3楽章のワルツはややせせこましい。続けて第4楽章へ。471小節のフェルマータで拍手した客が一人いました。

19:15に終演。残念ながら帰りは無料シャトルバスはありませんでした。


 <ローム・スクエアコンサート> 2023年4月23日(日)13:15開演 ローム・スクエア 宇治市立宇治東中学校吹奏楽部

ローム・スクエアの野外特設ステージで、中高の吹奏楽部による「ローム・スクエアコンサート」が行なわれました。各30分間で、申し込み不要で入場無料です。前日の22日(土)には、2校(京都両洋高等学校吹奏楽部、滝川第二高等学校吹奏楽部)が出演。2日目の23日(日)にも2校が登場しました。ステージ前に椅子が並べられましたが満席で、多くの立ち見が出ました。

まず、宇治市立宇治東中学校吹奏楽部。『響け! ユーフォニアム』著者の武田綾乃の母校で、昨年の全日本マーチングコンテストで初めて金賞を受賞しました。青色のマーチングコスチュームの衣装で演奏。指揮は山崎拓郎。司会は生徒が担当。音色は洗練されていませんが、合奏力は中学生以上です。
前半は立奏で、1曲目はかけっことびっこ。平和堂のテーマソングで、私は初めて聴きました。平和堂は滋賀のスーパーマーケットなのになぜ?と思いましたが、宇治市にもいくつか店舗があるようですね。西川貴教が歌って有名になったとのこと。2曲目は、マーチングフェスティバルメドレー。2月の関西ステージマーチングフェスティバルで演奏した曲で、ステージのスペースの関係で、動きはなく足踏みのみでしたが、生徒がドラムメジャーを担当したり、カラーフラッグを持って踊ったり、雰囲気を味わえました。3曲目は、マリナンジェリ作曲/ジャンボリミッキー!。京都橘高校のようにステップを踏みながら演奏。
ここまでは立奏でしたが、パイプ椅子がセットされて座奏に。4曲目は、天野正道作曲/レトロ。今年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲Ⅲで、ひさびさにポップス調の課題曲で、ドラムセットが活躍します。「昭和の雰囲気が出せるように演奏する」と紹介しましたが、後半は演奏が難しいですね。5曲目は、八幡映美作曲/夜明けを合唱と合奏で演奏。北海道旭川商業高校吹奏楽部の3年生全員が作詞して、作曲も部員が担当。卒部式で顧問の先生の前で披露したとのこと。高校生の曲とは思えません。最後の6曲目は、馬飼野康二作曲/勇気100%。1993年リリースの光GENJIの曲ですが、今聞いても古く感じませんね。

 宇治市立宇治東中学校吹奏楽部(ローム・スクエアコンサート)


 <ローム・スクエアコンサート> 2023年4月23日(日)16:10開演 ローム・スクエア 箕面自由学園高等学校吹奏楽部 GOLDEN BEARS

箕面自由学園高等学校は、チアリーディング部が有名ですが、吹奏楽部も全日本マーチングコンテストに9回出場し、昨年度は6回目の金賞を受賞したとのこと。校名に箕面と付いていますが、校舎は豊中市にあるようです。本番前のリハーサルからすでに多くの人が集まっていましたが、むちゃくちゃうまい。上が赤色で、下が黒ズボンのマーチングの衣装で、曲目紹介などはなくマーチングショーを続けて演奏しました。ステージに加えて、客席前方のスペースも使って、左右の階段を使って移動。マーチングの動きはステージのサイズに合わせて、この日のためにいろいろ練習で修正したかと思うのですが、動きがとてもスムーズで、ミスはなく、演奏も完成度が高すぎる。動画を撮影している人が多いのも納得です。

イン・ザ・ストーンスパーク作曲/ザ・バンドワゴンに続いて、チャップリン作曲/スマイルでは、電子ピアノの伴奏で、客席の辺りで指揮をしていた顧問の福里大輔がステージでマイクを持って歌いました。目立ちたがりですね。続く、長いドラムラインもビートが効いていて、パフォーマンスも含めてすばらしい。続く、中島みゆき作曲/糸はピアノ伴奏で、1年生が白いブレザーの衣装で手話を付けて合唱しました。意表を突くアコーディオンソロで、ジロー作曲/パリの空の下。続く、真島俊夫編/シャンソンメドレー ~モンマルトルの小径~では、パリのアメリカ人や枯葉が演奏されました。チェイス作曲/ゲット・イット・オンで終わったかと思ったら、最後にトゥモローを合唱と合奏しました。このパフォーマンスが無料で見れるとはすごいイベントです。あっという間の30分でした。

箕面自由学園高等学校吹奏楽部 GOLDEN BEARS(ローム・スクエアコンサート)

(2023.5.6記)

 

京都市交響楽団第677回定期演奏会「常任指揮者就任披露演奏会」 石田組2023/2024アルバム発売記念ツアー