2019年4月21日(日)14:30開演 ロームシアター京都メインホール 阪哲朗指揮/京都市交響楽団 オッフェンバック/喜歌劇「天国と地獄」序曲 座席:S席 2階2列12番 |
「ローム ミュージック フェスティバル」に初めて行きました。2016年から始まって、今回で4回目です。今年は2019年4月20日(土)と21日(日)の2日間にわたって開催されました。公益財団法人ロームミュージックファンデーションが主催し、メインホールでは「オーケストラ コンサートI・II」、サウスホールでは「リレーコンサートA・B・C」と題した室内楽が、ローム・スクエアでは「ローム・スクエアコンサート」と題した中高生による吹奏楽コンサートが開催されました。
1991年の財団設立以来、ロームミュージックファンデーションが各事業で関わった「ロームミュージックフレンズ」が出演します。その内訳は、奨学生、音楽セミナー受講生、音楽在学研究生、京都-国際音楽学生フェスティバル出演者、小澤征爾音楽塾塾生で、2019年2月現在で、なんと4,420名を数えます。「ローム ミュージック フェスティバル2019」には2日間で、31名のロームミュージックフレンズが出演しました。
協奏曲が2曲演奏されるという珍しいコンサートです。しかもチャイコフスキーのピアノ協奏曲は、有名な第1番ではなく、第2番が演奏されます。指揮者の阪哲朗、ヴァイオリン独奏の日下紗矢子、ピアノ独奏の反田(そりた)恭平、京都市交響楽団コンサートマスターの泉原隆志が、ロームミュージックファンデーションから奨学援助を受けた奨学生です。
座席は2階席で雨宿り席でしたが、あまり圧迫感はなく、ステージも見やすく視覚的にもいい席でした。1階バルコニー席の前方は空席にして、カメラが数台配置されていました。全席完売だったようですが、ちらほら空席もありました。
京都市交響楽団の団員が入場。左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの対向配置でした。入場した団員は座らずに立っていて、コンサートマスターの泉原が入場すると大きな拍手。泉原が一礼すると全員で座りました。第22回京都の秋音楽祭開会記念コンサートと同じ入場スタイルでした。
プログラム1曲目は、オッフェンバック作曲/喜歌劇「天国と地獄」序曲。プログラムの解説によると、今年はオッフェンバック生誕200年とのこと。阪哲朗は今月から山形交響楽団常任指揮者に就任しました。阪の指揮は立命館大学交響楽団第100回定期演奏会以来でした。細身で細かく動きました。泉原はソロで身体を客席に向けて演奏しました。これは新機軸でしょう。
1曲目が終わると、ナビゲーターの朝岡聡が登場。原稿なしで話しました。日下の経歴も全部暗記していてすごい。
プログラム2曲目は、メンデルスゾーン作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、日下紗矢子。2008年からベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスターに就任し、2013年からは読売日本交響楽団コンサートマスター(2017年から特別客演コンサートマスター)と日独のコンサートマスターを兼務する離れ業。ベルリン在住です。朝岡の紹介によると、自分で指揮しながらヴァイオリンを弾くコンサートもあるとのこと。
日下が登場。上が黒のノースリーブス、下が深緑のロングスカートという地味な衣裳でした。ヘアスタイルもアーティスト写真のパーマと違って、黒髪のストレートでした。写真よりも美人です。本人のブログによると、結婚されて、娘さんもおられるようです。演奏はしっとりした潤いある音色。音量もあって、強奏でもオーケストラに負けません。アッチェレランドなど演奏のテンポでオーケストラをリードしました。弱奏もしなやかさがあり、ソリストとしてしっかりした主張が感じられます。この曲を演奏するソリストにふさわしい。京響の音色ともよく馴染んでいました。もっと関西で演奏してほしいです。
休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/ピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏は、反田恭平。司会の朝岡によると、反田はデビューしてまだ3年とのこと。現在はポーランドのショパン音楽大学に在学中の24歳で、CDも数枚リリースし、若手の注目株と言えるでしょう。チャイコフスキーのピアノ協奏曲と言えば第1番ですが、今回は反田の強力なリクエストで第2番が選曲されました。めったに演奏されません。朝岡が反田のTwitterの投稿を読み上げました。カデンツァにはfが9個(フォルテッシシシシシシシシモ)やpが12個(ピアニッシシシシシシシシシシシモ)も登場するようです。朝岡は「第一楽章のカデンツァを聴くだけでも今日来た甲斐がある」「末代までの語り草になる」と演奏前にハードルを上げました。プログラムの解説によると、この作品には、「原典版」と「改訂版」の2つのスコアがありますが、本日は原典版による演奏とのこと。
反田が登場。客席からの拍手が大きい。ファンが多いようです。反田は髪を後でくくって、お団子を作っていました。暗譜で演奏しました。ピアノがよく響きました。有名な第1番とは、曲想が違います。独奏ピアノの見せ場は多く、反田もアクションでも魅せました。第1番に比べて演奏されないのはメロディーがあまり魅力的ではないからでしょう。無駄に長く感じました。長調のピアノ協奏曲(ト長調)がチャイコフスキーらしくない印象を受けました。
演奏終了後は、客席でスタンディングオベーションが多数。カーテンコールではチェロの中西が起立しましたが、1階席前方の客に見えないので、反田が自分でピアノのフタを閉めました。
ものすごく意欲的な選曲でいい演奏でしたが、せっかくこのメンバーで演奏するなら、やはり第1番を聴きたかったという思いは拭えませんでした。むしろ日下紗矢子のヴァイオリンのほうが心に残りました。
ローム・スクエアの野外特設ステージで、中高の吹奏楽部による「ローム・スクエアコンサート」が行なわれました。申し込み不要で入場無料です。前日の20日(土)には、3校(長岡京市立長岡中学校吹奏楽部、京都府立京都すばる高等学校吹奏楽部、箕面自由学園高等学校吹奏楽部ゴールデンベアーズ)が登場。2日目の21日(日)は2校が登場しました。ステージ前に椅子が並べられましたが、満席でした。
洛南高校吹奏楽部は、京都府吹奏楽コンクールで金賞を受賞し、毎年のように関西大会に出場しています。女子部員がいたのでびっくりしましたが、2006年から男女共学になったとのこと。知りませんでした。指揮は池内毅彦。譜面台なしで指揮しました。
1曲目は、ショスタコーヴィチ作曲(ハンスバーガー編)/祝典序曲。細かな連符がよく揃っていて、伸びやかな歌もあります。トランペットのファンファーレも輝かしい。フルート、オーボエ、ファゴットを雛壇の一列目に配置するのが珍しい。曲間の司会は「MC係」の三年生の男子生徒でした。原稿なしで話すのがすごい。
2曲目は、三浦秀秋編/平成大ヒットメドレー。あと数日で終わる平成を振り返るにはぴったりの選曲です。ZARD「負けないで」、スピッツ「空も飛べるはず」などがワンフレーズでメドレーされました。最近の曲では、米津玄師「Lemon」もありました。槇原敬之「世界に一つだけの花」は全員が起立して無伴奏合唱で歌われましたが、原曲では普通に吹奏楽で演奏されるので、洛南オリジナルでしょう。冒頭のドラムは電子音になっていました。ソロは前のスタンドマイクまで出てきて演奏しました。アンサンブルもあったり、ステージ前でフラッグのアトラクションもありました。
演奏終了後に、池内が「入部したばかりの1年生16名も演奏している」と紹介し起立させました。池内の紹介で、アンコールは、マクグラナハン作曲/いざ起(た)て戦人(いくさびと)よ。全員が起立して、無伴奏合唱でした。吹奏楽部ですが、合唱も重視しているようです。
続いて、アンコール2曲目は、カーマイケル作曲/ジョージア・オン・マイ・マインド(我が心のジョージア)。洛南高校の演奏会で最後によく演奏される曲のようです。マーチングバンドのようなアレンジで、最後は立ち上がってステップしながら演奏しました。演奏の途中で指揮の池内は退場しました。
京都両洋高校吹奏楽部は、2011年に葛城武周(かつらぎたけし)が顧問に着任して、関西大会常連校に急成長しました。今年2月には、第6回全日本ポップス&ジャズバンドグランプリ大会〜ALL JAPAN SWING BRASS SUPER LIVE 2019〜で、文部科学大臣賞を受賞しました。なお、「HERZ(ヘルツ)」とは、ドイツ語で「心」の意味とのこと。
120名を超える部員数を誇っているということで、人数が多く、ステージはぎっしりでしたが、おそらく2〜3年生だけでしょう。指揮の葛城武周はまじめそうな先生。司会は男性生徒が務めました。
1曲目は、バート作曲(三塚知貴編)/ロシアより愛を込めて。007シリーズ「ロシアより愛を込めて」の主題歌のジャズアレンジです。自分が吹いていないときは首を左右に揺らしたり、トロンボーンのソロをみんなで指差したり、見た目にも楽しそうな演奏。
2曲目は、星出尚志編/ジャパニーズ・グラフィティXVII「美空ひばりメドレー」。「リンゴ追分」のゆったりとしたテンポ感がいい。
3曲目は、久石譲(後藤洋編)作曲/吹奏楽のための交響的ファンタジー「ハウルの動く城」。先月の吹奏楽部ヨーロッパ演奏旅行(ドヴォルザーク・ホール)で演奏したとのこと。シンフォニックで緊張感のある演奏で、舞台下にウィンドマシーンが置かれ、ハープもわざわざ持ってきました。ハイレベルな演奏でした。
4曲目は、アニーよりトゥモロー。中盤では、制服を着た合唱隊がステージ下に登場しましたが、1年生とのこと。大人数です。
続けて、5曲目はチェイス作曲/Get It On〜黒い炎〜。ステージでウェーブが起こるなど楽しそうですが、葛城は淡々と指揮していました。司会によると、「トゥモロー」とこの曲は「HERZの十八番(おはこ)」とのこと。
少人数の洛南高校吹奏楽部とは好対照で、大人数による豊かな響きを堪能できました。
プログラム1曲目は、モーツァルト作曲/ピアノ協奏曲第20番。ピアノ独奏は、小林愛実。小林のすぐ左横から映るカメラがあり、字幕もつけられていて、映像のクオリティーが高い。小林愛実のアンコール(ショパン作曲/ノクターン第20番(遺作))もきちんと収録されています。
プログラム2曲目は、R.シュトラウス作曲/交響詩「英雄の生涯」。奏者をドアップでクローズアップした映像があり、カメラワークもいい。
過去の映像が丁寧にアーカイブされていて、すばらしい。ここで上映されるだけではもったいないので、ぜひDVD化を希望したいです。
<全体の感想>
「オーケストラコンサートII」の前後に、「ローム・スクエアコンサート」が設定されていて、移動時間が少ないので、ややあわただしいスケジュールでした。ロームミュージックフレンズが出演するコンサートなので、高水準の演奏が期待できます。次回以降も楽しみです。
(2019.5.29記)