京都フィルハーモニー室内合奏団第185回定期公演「ドビュッシー生誕150年とフランス音楽」


   
      
2012年10月21日(日)14:30開演
京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ

矢崎彦太郎指揮/京都フィルハーモニー室内合奏団
越川雅之(打楽器)

グノー/9つの管楽器のための小交響曲
ミヨー/打楽器と小管弦楽のための協奏曲
ドビュッシー(A.シェーンベルク編)/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー(ジュリアン・ユー編)/管弦楽のための3つの交響的素描「海」<委嘱世界初演>

座席:S席 1階10列28番


京都フィルハーモニー室内合奏団の定期公演に初めて行きました。1972年に結成され、今年で創立40年を迎えます。オーケストラ連盟準会員のプロ合奏団で、「京フィル」の愛称で呼ばれています。ホームページを見たところでは、正団員は17名。ヴァイオリン以外の楽器は1名しか団員がいません。第21回京都賞記念ワークショップ 思想・芸術部門シンポジウム「アーノンクール イン 京都」では40名程度の編成だったので、エキストラが多く含まれているということでしょう。今回の演奏会もエキストラで増強されています。指揮は、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団首席客演指揮者の矢崎彦太郎。
チケットは、京都フィルハーモニー室内合奏団のホームページの申し込みフォームから申し込みました。指定席は、メールのやりとりで座席が指定できます。客の入りは510席がほぼ満席でした。

プログラム1曲目は、グノー作曲/9つの管楽器のための小交響曲。管楽器奏者9名と一緒に矢崎彦太郎も入場。向かって左から、フルート1、オーボエ2、ホルン2、ファゴット2、クラリネット2の順に、半円状に座りました。矢崎の譜面台はありますが、指揮台はなし。矢崎は写真では眼鏡をかけていましたが、この日はかけていませんでした。
4楽章からなる作品。演奏者が9名なので、指揮者はいなくてもいいでしょう。指揮者はテンポをキープする役割でしょうか。指揮者がいることで、フレーズがあまり生きてこないのが残念。オーケストラはかなり健闘していますが、京都市交響楽団の木管セクションに比べると音色の洗練さは劣ります。楽器別では、クラリネットとファゴットが前向きな演奏姿勢で頑張りました。

次の曲のセッティング時間を利用して、矢崎がマイクを持ってトーク。パリ在住の矢崎にとって、日本はまだ暑いとのこと。パリでは暖房をつけているようです。「グノーの小交響曲は晩年の作品」「グノーのオペラ「ファウスト」は、フランスではカルメンと並んで人気がある」と語りました。

プログラム2曲目は、ミヨー作曲/打楽器と小管弦楽のための協奏曲。打楽器独奏は、京都フィルハーモニー室内合奏団打楽器奏者の越川雅之。矢崎は「ミヨーが亡くなったのは1974年なので、ついこないだ」「グノーの次の次の世代にあたる」と紹介しました。楽器配置は、向かって左に打楽器。伴奏は、1列目にヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。2列目に、フルート2、クラリネット2、コントラバス1。3列目に、コルネット1、トロンボーン1。
打楽器独奏は1人で多くの楽器を演奏します。ティンパニ、小太鼓などが半円形に並べられ、ドラとトライアングルが吊られています。それ以外にも、足でバスドラムを鳴らしたり、タンバリン、ムチ、カスタネット、シンバルなど、楽器の持ち替えが激しい。前半はほとんど休みがありません。メロディーもリズムカルで、視覚的にも楽しめます。後半は静かになったと思ったら、あっという間に終わり。こんなに短い作品とは思わなかったので(約8分)、もっと聴きたいですね。せっかくセッティングしたのに、もったいない気がしました。

休憩後のプログラム3曲目は、ドビュッシー作曲(A.シェーンベルク編)/牧神の午後への前奏曲。楽器配置は、前列にヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。後列にピアノ、サンバルアンティーク、オルガン、フルート、オーボエ、クラリネット、コントラバスが各1。原曲よりも人数が少ないので響きが薄くなるのは当然ですが、原曲の雰囲気を損なわないいい編曲です。原曲に比べるとホルンやハープを欠きますが、ピアノがうまくカバーしているので、じゅうぶん聴けます。107小節のホルンはハルモニウムで演奏されますが、今回はオルガンで代用していました。

プログラム最後の4曲目は、ドビュッシー作曲(ジュリアン・ユー編)/管弦楽のための3つの交響的素描「海」。京都フィルハーモニー室内合奏団の委嘱作で、今回が世界初演となります。ジュリアン・ユーは、中国生まれでオーストラリア在住。楽器編成は、1列目に、ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ1。2列目に、ハープ1、フルート1、オーボエ1、クラリネット1、ファゴット1、打楽器1。3列目に、ホルン1、トランペット1、トロンボーン1。矢崎はこの曲では指揮棒を持って指揮しました。
この編曲の大きな特徴は、スコアにないメロディーが追加されていること。そのため、編曲というよりは作曲に近い。鉄琴を多く使うなど響きもかなり違って、フランス音楽らしさはありません。原曲で演奏される楽器と同じ楽器で演奏されない部分があったり、原曲が強奏の部分であえて多くの楽器を使わなかったり、いきなり楽器が薄くなったり、原曲に忠実な編曲ではありませんが、意外性も楽しめます。テクニック的にかなりの難曲ですが、演奏効果はあります。弦楽器(ヴァイオリン〜コントラバス)の上昇下降音型で、波の動きを表現します。第1楽章137小節のティンパニをあえてカットしていて驚きました。第3楽章258小節からのクライマックスでは金管楽器のコラールは演奏されずに、代わりにリムスキー=コルサコフ「シェエラザード」第1楽章に登場する「海の主題」が挿入されました。あまりにも突然だったので、何が演奏されているのか分からないほどでした。まったく別の曲からの引用があるとは驚き。

演奏後に矢崎が「いかがお聞きいただきましたでしょうか」と聞くと、客席から拍手。「ユーさんが特別に編曲してくれた。ユーさんは「展覧会の絵」を編曲したが、原曲はピアノ曲だった。今回の「海」は原曲がオーケストラ。聴こえるはずのものが聴こえなかったり、聴こえないものが聴こえたりするのに彼の特徴がある。ただオーケストラを小さくするのではなく、ユーさんの趣味が加味されている。シェエラザードが出てきたのは、シェエラザードが「海とシンドバッドの物語」だからという彼の考えではないか。そういう意味でスパイスが効いている。ときどきニンニクを入れすぎたと思うところもあるが」と語りました。「スコアを読んでいて疑問点があり、意図を知っておきたかったので、12枚くらいにまとめてユーさんに送ったが、ユーさんが病気になってしまって、「君のいいようにしてくれ」という返事が来た」と裏話を披露。その後もユーとはコンタクトがとれていない模様です。「ここはわざとなのかと思う部分がある」とのことで、「スコアを読んでいるとユーが優勢だったが、オーケストラと練習してるとドビュッシーが優勢になってくる」と話しました。

「編曲ついでにもう1曲」ということで、アンコール。管楽器を追加して、ドビュッシー作曲(アンリ・ビュッセル編)/「小組曲」第3楽章「メヌエット」を演奏しました。原曲はピアノ連弾曲で、ビュッセルはドビュッシーの友人とのこと。

委嘱世界初演というこんなにもチャレンジングなプログラムを組んでくれるとは、京都人としてうれしいです。京都フィルハーモニー室内合奏団の今後に注目したいです。

(2012.10.25記)


第16回京都の秋音楽祭開会記念コンサート 京都市交響楽団第562回定期演奏会