兵庫芸術文化センター管弦楽団特別演奏会「佐渡裕 アルプス交響曲」


2020年9月19日(土)14:00開演
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

佐渡裕指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団

R.シュトラウス/アルプス交響曲

座席:A席 3階3A列26番



兵庫芸術文化センター管弦楽団の特別演奏会「佐渡裕 アルプス交響曲」に行きました。指揮は芸術監督の佐渡裕。9月19日(土)と20日(日)の2日間開催され、プログラムはR.シュトラウス作曲/アルプス交響曲の1曲で、途中休憩はありません。

この曲はもともと第126回定期演奏会(9月18日(金)、9月19日(土)、9月20日(日))で演奏される予定で、他にもシベリウス「交響曲第7番」ほかが予定されていました。第123回定期演奏会「井上道義 煌めきのスペイン」にも少し書いたように、兵庫芸術文化センター管弦楽団は2月の第122回定期演奏会から6月の第125回定期演奏会まで、すべて中止になりました。また、2020-21シーズンの定期演奏会も、出演する指揮者等は発表されましたが、曲目はは発表されないままでしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面の間取り止めになりました。ちなみに、定期演奏会の取りやめはNHK交響楽団も同様で、9月から定期公演に代わる新たな主催演奏会「NHK交響楽団〇月公演」を開催しています。

定期演奏会の代わりに、新型コロナウイルス感染防止対策を徹底したうえで、特別演奏会が開催されることになりました。なお、翌日の20日(日)の公演は、有料(1,000円)で配信されました(イープラスの「Streaming+」(ストリーミングプラス)で27日まで何度でも視聴可能)。

左右に1席ずつ空席を設定していて、空席には「この席にはお座りいただけません TAKE DESIGNATED SEAT」と書かれた紙が貼られていました。チケットは全席完売でしたが、KOBELCO大ホールの座席数は2001席のところを、今回は約800名に抑えたようです。入場時に手指をアルコール消毒、カメラ(サーモグラフィー)で検温、チケットの半券は自分でちぎって箱に入れました。ホールのスタッフはフェイスシールドをつけていました。プログラムも机に置かれていて、自分で取りました。
3階席は視覚的にいい。ステージにはひな壇が6段もあり、反響板を後ろにずらしてステージの奥行きを広げました(詳細は後述)。

プログラムに名前が掲載されたメンバーは総勢114名。メンバー表には奏者にランクが細かく分けられています。コンサートマスターは豊嶋泰嗣。コアメンバーは最長3年契約で全世界から公募。外国人が多く、ホームページには37名の名前が掲載されていますが、プログラムには33名。コロナの影響で入国できなかったメンバーがいるようです。ゲスト・トップ・プレイヤー(他のオーケストラの首席奏者)は6名。スペシャル・プレイヤー(他のオーケストラの奏者)が4名。レジデント・プレイヤー(1年ごとにオーディションで選出)が8名。アフィリエイト・プレイヤー(芸術監督の推薦で選出)は3名、アソシエイト・プレイヤー(1年ごとにオーディションで選出)は5名、エキストラ・プレイヤーが最多の54名で全体の約半分です。楽器別ではヴァイオリンが34名と多い。
京都市交響楽団のメンバーもエキストラで出演して、ゲスト・トップ・プレイヤーで中野陽一朗(首席ファゴット奏者)、エキストラ・プレイヤーで早坂宏明(元トランペット)や武貞茂夫(元テューバ)の名前がありました。なお、9月1日からコンサートマスターに田野倉雅秋(日本フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター、大阪フィルハーモニー交響楽団前首席コンサートマスター)が就任しましたが、今回は出演していません。

演奏前に佐渡がマイクであいさつ。「オーケストラの中でソーシャルディスタンスが求められている。このホールは裏と左右にあわせて4面の舞台があり、反響板を一番奥までやって、ステージを広くした。どうせやるならデカい曲をやろうと考えた。アルプス交響曲はもともと定期演奏会で演奏する予定だった曲。貸館なら不可能だが、3日間ここで練習できるこのホールのオーケストラだからできる。ティンパニは2メートルあげていて、見た目もアルプス交響曲(笑)。こんな時期にアルペンシンフォニーをやるのは兵庫県立芸術文化センターだから可能。山登りだが、一人の人生が描かれている。大編成のオーケストラの醍醐味を味わってください」と語りました。他のオーケストラでは大曲に取り組めていないなかで、この演奏会は注目されます。反響板は約6メートル後ろにしたようですが、舞台裏の広さは兵庫県立芸術文化センター オープンデイで見学しました。
メンバーが入場。金管楽器と打楽器奏者は山登りのように雛壇を登っていきます。雛壇1段目は左からフルートとオーボエ。2段目はクラリネットとバスーン。3段目はホルンとトランペット。4段目はワーグナーチューバ、トロンボーン、テューバ。5段目は打楽器。6段目は右側だけですが、ティンパニ2セットが配置されました。オルガンはステージ右に置かれていて、天井のスピーカーから流れました。

メンバーは佐渡も含めて全員マスクなし。弦楽器の譜面台2人で1台でした。佐渡はスコアをめくりながら指揮棒を持って指揮。たまに鼻歌?が聴こえました。
冒頭の「夜」から「日の出」への高揚感がすさまじく、涙なしでは聴けないほどです。「森への立ち入り」の終わりで、1階席の通路に、ワーグナーチューバ6とトランぺット2が譜面台を持って登場。トロンボーン2も1階左のバルコニー席LA席で演奏し、それぞれ照明でライトアップされました。 スコアの「hinter der Scene(舞台裏)」「Jagdhörner von ferne(遠くから)」の指示とは逆で、本来は客席からは見えませんが、逆に目立たせる演出です。その後、ホルン1とワーグナーチューバ4はステージへ。他のメンバーの出番はこれだけでした(カーテンコールにも登場せず)。 「小川に沿っての歩み」はヴァイオリンがまとまった響き。「滝」などはもう少しオーケストラの音色に色彩感があったほうがいいでしょう。「山の牧場」のカウベルは、打楽器奏者とティンパニ奏者の6名全員で鳴らしました。やや速めのテンポ設定のためか、あっというまに「頂上にて」。ヴァイオリンがたっぷり歌いこみ。
「雷雨と嵐、下山」のウインドマシーンは雛壇5段目の左端で、サンダーマシーンも雛壇5段目で2台で豪快に鳴らされました。 コンマスの豊嶋泰嗣の弦が切れたようで、譜面台の下に置いてあった予備のバイオリンで演奏しました。ヴァイオリンのボウイングの方向やスピードがバラバラで、特に「日没」では目立ちました。15:10に終演。

日本中のオーケストラが大曲の演奏を見送るなか、100名を超えるメンバーを必要とする作品を演奏するのは、じゅうぶんインパクトがありました。この演奏会の運営に関わられた方々に拍手。エキストラ奏者が約半分を占めているせいか、音色のまとまりや繊細な表現力はいまひとつでしたが、このオーケストラの構成からすると難しいところがあるでしょうか。

奇しくもこの日から政府のガイドラインが緩和され、大声での歓声や声援がないクラシックコンサートは収容人数の100%(満席)まで入場できるようになりました。早くもザ・シンフォニーホールでは、9月17日に発売開始する公演から連続した席で予約できるようになりました。今まで通り満席の聴衆の中で演奏できるようになればいいですね。「第九」が演奏できる日も近いでしょうか。

 

ペデストリアンデッキ ステージのモニター映像 「この席にはお座りいただけません」

(2020.9.21記)


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