第24回京都の秋音楽祭開会記念コンサート(昼の部)


   
   
2020年9月20日(日)13:00開演
京都コンサートホール大ホール

高関健指揮/京都市交響楽団
福本茉莉(オルガン)

ジョンゲン/大オルガンとオーケストラのための協奏交響曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」

座席:S席 3階C1列19番



今年も「京都の秋音楽祭」が京都コンサートホールで開催されます。第24回となる今年は、京都コンサートホール開館25周年記念事業だった「ロンドン交響楽団来日公演」や「佐渡裕指揮 バーンスタイン《交響曲第3番「カディッシュ」》」などの目玉公演が、新型コロナウイルスの影響で公演中止となってしまい、少しさみしいラインナップですが、地下鉄北山駅や屋根付き遊歩道などがきれいに装飾されました。

今年の開会記念コンサートの指揮は、高関健。2019年度まで京都市交響楽団の常任首席客演指揮者を6年間務めました。現在は、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者、仙台フィルハーモニー管弦楽団レジデント・コンダクター、群馬交響楽団名誉指揮者、静岡交響楽団ミュージック・アドヴァイザー、東京藝術大学音楽学部指揮科教授、藝大フィルハーモニア管弦楽団首席指揮者を務めています。

本公演は、当初は9月20日(日)14:00開演の1回公演でしたが、新型コロナウイルスの影響で前後左右に空席を作って、座席数が減ったため、昼の部(13:00開演)と夕方の部(16:00開演)の1日2回公演になりました。 その影響で、京都コンサートホールClub会員を対象とした「ゲネプロ公開」が、当日の20日(日)10:30〜から前日の19日(土)14:15〜に変更になりました。兵庫芸術文化センター管弦楽団特別演奏会「佐渡裕 アルプス交響曲」と重なってしまったため、行けませんでした。残念。

プログラムも休憩なしの約60分間に短縮され、当初は、すぎやまこういち作曲/序奏MIYAKO、ジョンゲン作曲/大オルガンとオーケストラのための協奏交響曲、サン=サーンス作曲/交響曲第3番「オルガン付き」の3曲でしたが、ジョンゲンとレスピーギ作曲/交響詩「ローマの松」の2曲に変更されました。

第648回定期演奏会と違って、本公演では当日券が発売されました。また、抽選で京都市民(370名)が無料で招待されました。入場方法は第648回定期演奏会と同じで、手指の消毒、固定カメラによる検温、チケットの半券は自分で切り取り、机に置かれたプログラムを取る流れです。今回は時差入場を案内するスタッフがいませんでした。入場時にはあまり混雑しないということでしょう。なお、ホワイエで「京都コンサートホール開館25周年記念グッズ」が販売されました。京扇子や清水焼など、なかなか高価です。 また、ホワイエの奥に金屏風とテレビカメラがセッティングされていました。何があったか分かりませんでしたが、門川大作京都市長のFacebookによると、「京都の秋音楽祭」の絵画ポスターを描いた画家の清水信行が、協賛のローム株式会社に絵画「洛東清秋(黒谷)」を寄贈したという写真が掲載されていました。

開演前に門川大作京都市長(京都市交響楽団楽団長)がマイクであいさつ。コロナ対策中はスーツを着ていましたが、今日は着物姿でマスクでした。「9月を京都市コロナ感染防止徹底月間としているが、心の健康である文化も大事」と語り、京都市交響楽団を運営する公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団の理事長に堀場厚(堀場製作所代表取締役会長)が就任したことを報告しました。門川市長も1階席で演奏会を聴きました。客の入りは4割程度。ポディウム席には客を入れず、たたまれていました。

拍手に迎えられて団員が入場。3管編成で、第648回定期演奏会に比べると、だいぶ通常配置に近づきました。最後列(トランペット3とトロンボーン3)のみ低い雛壇で、ティンパニを含めて打楽器は左に固めて配置しました。管楽器奏者は左右に間隔が取られていて、管楽器の前には透明のアクリル板が設置されていました。弦楽器の譜面台は1人で1台でした。ヴァイオリンは5列で、少し間隔を空けていましたが、第648回定期演奏会に比べると間隔がだいぶ縮まりました。ソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積がひさびさに出演しました。弦楽器奏者はマスクをしてたりしてなかったり。最後に第648回定期演奏会で就任した特別客演コンサートマスターの石田泰尚が入場。コンサートマスターの泉原隆志は出演しませんでした。

プログラム1曲目は、ジョンゲン作曲/大オルガンとオーケストラのための協奏交響曲。オルガン独奏は福本茉莉。ドイツのフランツ・リスト ヴァイマール音楽大学で常勤講師を務めています。福本が大学院生だったころに、高関が指揮する藝大フィルハーモニア管弦楽団の演奏会で、この曲で共演したことがあるとのこと。ジョンゲンはベルギー生まれ。1926年に作曲され、4つの楽章からなります。めったに演奏されない曲ですが、「オーケストラ・ディスカバリー2016 「オーケストラ・ミステリー」第4回「大作曲家の秘密」〜音楽家の真実〜」(2017.3.12)でも、同じく高関の指揮と福本のオルガンで、第3楽章と第4楽章が演奏されました。こんなマイナーな作品を取り上げるとはさすが高関健ですが、6日後の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第336回定期演奏会(2020.9.26 東京オペラシティコンサートホール)でも、高関と福本が共演します。

福本茉莉が赤と黒がまじったドレス(アー写と同じ)で登場。高関健はマスクなしで指揮。パイプオルガンの音量が控えめで、オーケストラの中でなじんでいました。オルガンがオーケストラの一部となっていて、「協奏交響曲」と呼ぶにふさわしい。第1楽章が終わると、福本の隣に座っていた譜めくりの女性がホールの外へ出ました。違う女性が入ってきて、パイプオルガンの左にある特別演奏者席の下の扉を開けて中に入っていきました。高関が指揮台の上で後ろを振り向いて、「ちょっとオルガンの調子が悪く直してます。申し訳ないです」と状況を説明。珍しいハプニングですが、第1楽章を聴くかぎりではどこに問題があったのか分かりませんでした。ちなみに、福本のTwitterには「オルガンの調子に関してはお客様にもご心配おかけしました!」と書かれています。第2楽章はオルガンソロから始まりました。すごく小さな音で演奏される部分がありましたが、パイプオルガンでこんなに小さな音が出せるんですね。第3楽章はフルートソロから始まり、神妙なメロディー が金管楽器も入って盛り上がります。第4楽章のラストはしつこいほど盛り上げます。福本は座っていますが、頭や上半身を揺らして弾きました。

プログラム2曲目は、レスピーギ作曲/交響詩「ローマの松」。内声を効かせて立体的に聴かせます。低音を響かせて構築力があります。何回も聴いたことがある曲ですが、新しい発見がありました。第1楽章「ボルゲーゼ荘の松」がみずみずしい。第2楽章「カタコンベ脇の松」では、黒い服に着替えた福本が登場し、オルガンの演奏に加わりました。Piu mossoからのトランペットソロは、スコアには「interna(舞台裏)」と指定されていますが、ポディウム席の左で立って演奏。演奏が終わると退場しました。練習番号11の3小節と練習番号12の1小節でドラを聴かせました。確かにスコアではfの指示です。練習番号11の4小節から、コントラバスの四分音符を聴かせて、一歩ずつ着実に歩みを進めました。第3楽章「ジャニコロの松」は、スコア通り鳥の鳴き声の録音が天井のスピーカーから流れました。
第4楽章「アッピア街道の松」が始まると、ポディウム席の左にトランペット4、右にトロンボーン2が入場。ポディウム席を有効に活用した演出です。やや速めのテンポ設定で、ラストはティンパニ、大太鼓、ドラが炸裂で、すさまじい盛り上がり。ここまで打楽器を強調した演奏も珍しいでしょう。カーテンコールでは、石田と高関が握手の代わりに、何回かひじでタッチ。高関がメガネをかけていないことに気づきました。珍しい。14:15に終演しました。
退場は、アナウンスにしたがっての分散退場で、1階席後方、1階席前方、3階席、2階席の順に退場しました。

開会記念コンサートにふさわしい盛り上げ方で、華々しいオープニングを飾りました。オーケストラも通常配置に近づいてきて、少し安心しました。

北山駅出口3の階段 屋根付き遊歩道 ホワイエに置かれた金屏風

(2020.9.26記)


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