【中止】兵庫芸術文化センター管弦楽団第123回定期演奏会「井上道義 煌めきのスペイン」


  2020年4月19日(日)15:00開演
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

井上道義指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団
パブロ・サインス・ビジェガス(ギター)、ルイス・フェルナンド・ペレス(ピアノ)

ファリャ/バレエ組曲「三角帽子」第1部
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
ファリャ/交響的印象「スペインの庭の夜」
ファリャ/バレエ組曲「三角帽子」第2部

座席:A席 3階3B列37番



井上道義が兵庫芸術文化センター管弦楽団を指揮する演奏会に行く予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で、公演が中止になりました。大変残念です。
本定期演奏会は「井上道義 煌めきのスペイン」がサブタイトルにつけられているようにオール・スペイン・プログラムで、ファリャとロドリーゴが選曲されました。ファリャの「三角帽子」は、最初に第1部、最後に第2部が配置され、演奏順も凝っています。ギターとピアノのソリストもスペイン生まれでした。 井上道義は、オーケストラ・アンサンブル金沢桂冠指揮者を務めていますが、実質的にはフリーで活動しています。兵庫芸術文化センター管弦楽団の定期演奏会には、ほぼ毎年客演しています。

4月7日に、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を考慮し、本定期演奏会(4月17日(金)、18日(土)、19日(日))を含めた、兵庫芸術文化センター管弦楽団の4月の公演の中止が発表されました。「公演中止のお知らせと払戻しのご案内」というハガキも届きました。前月の第122回定期演奏会(3月13日(金)、14日(土)、15日(日))に続いて、2回連続の中止になってしまいました。チケットは、クレジットカード支払で、兵庫県立芸術文化センター窓口引取で購入したため発券していないのですが、案内されている払戻し方法が分かりにくく、現時点ではクレジットカードにまだ戻入されていません。また、4月7日に兵庫県に発令された緊急事態宣言を受けて、兵庫県立芸術文化センターも4月8日(水)から5月7日(木)まで臨時休館となり、窓口も休止となりました。6月に芸術文化センターチケットオフィス払戻し係に電話して、チケット引換番号と銀行口座を伝えると、7月中旬に入金されました。

なお、井上道義は、新型コロナウイルスについて独自の考えを持っているようで、Twitterでも積極的に発信しています。例えば、東京事変がライブを開催したことに対して、「林檎!さすが。命かけて演奏し命かけて聞きに行く。生活に必要な音楽。日常を新たにするもの。なくてはならないもの。今この日でなければならない出来事。」とコメントしていて、その後も「死は必ずいつか訪れる。恐れていては充分生きられない。」「世界恐慌を起こすほどの恐怖か?死を怖がるのはいままでよっぽど生きてこなかったのだな」とツィートしています。本公演の中止については、井上道義ブログのなかで、「2〜3年後には全く必要のない処置だったと言われることになるだろう。健康第一か・・・。」「命のために,自由を差し出すんですね。尊敬します。降伏は幸福なんだ。」と書いています。 ちなみに、井上道義は来シーズンは、第134回定期演奏会(2021年6月18日(金)〜20日(日))を指揮することが発表されています。


ちなみに、井上道義は前月の「大阪フィルハーモニー交響楽団第536回定期演奏会」(フェスティバルホール)を指揮する予定でしたが、2日公演のうち、3月19日(木)は無観客アーカイブ配信に、3月20日(祝・金)は中止となりました。3月19日(木)の公演は「慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ第229回定期演奏会」と同じく、クラシック専門ストリーミングサービス「CURTAIN CALL(カーテンコール)」(https://curtaincall.media/)を通してライブ配信され、なんと194,000人が視聴したとのことです。編集されたアーカイブを観ることができます(公開期間は約3ヶ月間)。

当日は19時開演でしたが、配信は18時30分からスタート。地下鉄肥後橋駅の出口からフェスティバルホールの外観が映され、大階段を上がり、エントランスホワイエを通って、エスカレーターに乗り、演奏会を聴きに行くときと同じルートが映されました。実際にホールに来たような演出です。
最初に、メーンホワイエでの「プレトークサロン」で、企画制作担当の福山修が本日のプログラムを説明。これは「第520回定期演奏会」と同じです。井上道義は元首席指揮者と紹介されました。途中から井上も話し出し、このプログラムについて「「春の祭典」とのコントラストが欲しかった。ハイドンもモーツァルトも短いし楽しいし分かりやすいのがいい」と話しました。また、 「2年くらい前から準備してきた。クラスターとか言わないでくださいよ。世の中間違ってるよ。人間と人間は一緒に何かやんなきゃなにもできないんだから。人間はみんな死ぬんだから。死を恐れるな」と少し興奮気味に話しました。「全然クラシックに足を踏み入れていない人を引っ張りたい。なかなかできないことを冒険してやります」と意気込みを話しました。途中で「カメラ割りがうまくないですから、温かい目で見てあげてください。まったくやったことがない初めての人たちです」とコメントしています。確かに、同じ「CURTAIN CALL」でも、「慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ第229回定期演奏会」のほうがカメラワークはよかったです。

プログラム1曲目は、ハイドン作曲/交響曲第2番。3楽章からなり、ハイドンの交響曲で演奏時間が最も短い作品のようです。チェロ以外は立奏で、オーボエとホルンもチェロの横で立って演奏しています。井上は全曲を指揮棒なしで指揮しました。指揮台もなし。
演奏が終わると、「ヨーゼフ・ハイドンでした!。次はモーツァルト!。モーツァルト10歳のときの作品!。(団員に間違いを指摘されて)9歳のときの作品!」と叫んで、続けてプログラム2曲目は、モーツァルト作曲/交響曲第5番を演奏。やはりモーツァルトは天才ですね。 演奏後は井上が舞台転換の様子を見ながらコメント。

プログラム3曲目は、ストラヴィンスキー作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、アイレン・プリッチン。ここからはいつも通りオーケストラは座って演奏しました。「春の祭典」よりも後に作曲されましたが、なかなか難解な曲ですね。演奏後は「休憩!」と叫んで休憩に入りました。休憩中に「ヒーローインタビューです」と話し、ステージ横でアイレン・プリッチンがロシア語通訳をはさみながらインタビューを受けました。

続いて、下手袖にカメラが移動し、「アトラクション」として、グラフィック・アーティストのカズ・オオモリ(大阪芸術大学客員教授)にお願いして、「春の祭典」の演奏中に絵を描いてもらうとのこと。カズ・オオモリを「なんか三谷(幸喜)さんみたいだけど」と紹介しました。「絵やアニメーションやデザインを描きたい人は興味があると思う」と話し、音楽以外に関心がある人も引き寄せようという企画です。
さらに、自分の楽屋を紹介。楽屋には写真が飾ってあり、朝比奈隆を「創立指揮者で55年間大フィルを指揮した」、カラヤンを「彼の練習をたくさん見たが、練習がとてもうまかった。人間の心理がよく分かっているから」とコメント。 また、楽屋前の廊下に写真がずらーっと飾ってあります。これらの写真は出演者じゃないと見られないので貴重です。ストラヴィンスキーがN響を指揮してる写真や、カラヤン(彼の周りをいつもうろうろしていた)、岩城宏之、マルセル・マルソー(パントマイムで素敵な人)、ジュリーニ(彼にも教えてもらったことがある)、チェリビダッケ(とってもお世話になった。本当に頭がいい人)、バーンスタイン(彼が作曲した「ミサ」を演出と指揮をした)、ドゥダメル(すごく才能がある)、ゲルギエフ(すばらしい指揮者)、山下洋輔(おもしろい人)、佐渡裕、内田光子、ベジャール(ダンサーになってたらこういうところで踊りたかった)、パーヴォ・ヤルヴィ(ちょっと僕に似ている)などの写真を紹介しました。なお、この楽屋紹介の映像は、事前に収録されたようです。

休憩後のプログラム4曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ音楽「春の祭典」。井上によると、105人での演奏とのこと。ゆっくりしたテンポではじまります。井上は指揮台で踊るような指揮。両手両足を大きく使って、このバレエの振り付けかと思うほどです。あまり拍を細かく振りません。演奏は響きが重く野性的。ホルンが強力ですが、トランペットの入りが遅れるなど、後半でミスが多いです。
演奏が終わると、井上は客席に向かって「お祭りは終わった」と話しました。カズ・オオモリが描いた絵(大きなキャンバス)がステージに運ばれ、団員から「おお」という歓声があがりました。 ちなみに、カズ・オオモリが一人で絵を描く様子を固定カメラで撮影した動画もあります。下書きのような紙を片手に持って描いているので、即興性は薄そうです。下手袖に近いので、ホルンがよく聴こえます。 また、カズ・オオモリが、別アングルの動画「ライブペイント with マエストロ:井上道義&大阪フィルハーモニー交響楽団」(約2時間)をYouTubeにアップしています。本番中の舞台袖でのスタッフの動きが分かって、別の意味で興味深い動画です。

今回のアーカイブ配信は、通常の演奏会にはない付加価値があって、ただの生放送で終わらせないところが井上道義らしいです。73歳ですが、感性が若い。エンターテイナーとしてすばらしい活躍です。

また、大阪フィルとのライブ配信後の4月に、YouTubeで「のんちゃんとコロナ」という動画(約37分)がアップされました。井上道義の質問に、小学校の同級生の岡部信彦(のんちゃん、政府の新型コロナウイルス対策専門家会議メンバー)が答えています。井上は「世の中で起こっていることが絶対おかしいと思っている」と話し、「普通のインフルエンザと同じじゃないですか?」「世の中に本当に新しいものなんてあるんですか?」「スマホのせいで世界中が騒ぎすぎてるほうが問題だと思うんだけど違いますか?」「こんなに世界中が鎖国しあうことが正しいと思いますか?」「医療崩壊って本当に起きるの?」「パニクることを煽る人たちは何なの?」「可能性を膨らませて人を怯えさせることのほうが大きいと思ってるんだけど違う?」「キャパシティが大きいコンサートホールで誰も音楽会ができないのは行きすぎじゃない?」などの質問に答えています。

今回は、兵庫芸術文化センター管弦楽団定期演奏会よりも、ほとんどが大フィル定期のレポートになってしまいました(汗)。井上道義は京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」(2021.1.10)を指揮します。その頃には状況が終息していることを祈っています。

(2020.4.26記)
(2020.8.5更新)


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