名古屋フィルハーモニー交響楽団コバケン・スペシャルVol.16「マイ・フェイヴァリット・マスターピーシーズ4」


   
      
2009年6月21日(日)16:00開演
愛知芸術文化センター愛知県芸術劇場コンサートホール

小林研一郎指揮/名古屋フィルハーモニー交響楽団
岩下晶子(ソプラノ)、栗林朋子(メゾ・ソプラノ)、高橋淳(テノール)、福島明也(バリトン)
岡崎混声合唱団、愛知県立岡崎高等学校コーラス部

モーツァルト/交響曲第40番
モーツァルト/レクイエム

座席:S席 2階 12列50番


小林研一郎が珍しくモーツァルトを指揮しました。オーケストラは桂冠指揮者を務める名古屋フィルハーモニー交響楽団。名古屋フィルの演奏は初めて聴きます。東京は年に何回も行っていますが、名古屋で降りるのは実に6年ぶりでした。
愛知芸術文化センターは、名古屋市営地下鉄東山線の栄駅下車すぐです。交通の便はものすごくいいです。地上12階・地下5階の巨大な建物で、愛知県美術館や愛知県文化情報センターなどの施設が同居しています。愛知県芸術劇場コンサートホールは4階に位置します。1800席のホールですが、1階席が少なく、2階席と3階席が多いのが特徴です。初めてのホールでどの席がいいのかよく分からなかったので、2階席右側のS席を購入しました。視覚的にも音響的にもいい席でした。ちなみに、S席が最高ランクの席種ではなく、その上に、セレクト・プラチナ席とプラチナ席があります。チケットは全席完売でした。

プログラム1曲目は、モーツァルト作曲/交響曲第40番。客席からの拍手に迎えられて、オーケストラ団員が入場。団員の入場時に客席から拍手が起こるのは、国内オーケストラでは珍しいでしょう。続いて、小林研一郎が入場。入ってきただけで盛大な拍手。名古屋人は温かいですね。
全体的に遅めのテンポで、アーティキュレーションをしっかり聴かせます。コバケン節と言っていいほど、メロディーの歌わせ方に粘り気があります。これだけヘヴィーなモーツァルトも珍しいでしょう。小林研一郎のうなり声もよく聴こえました。小林研一郎は楽章の初めに、団員に一礼してから指揮を始めます。譜面台なしで指揮しました。
第1楽章は弱奏ではヴァイオリンがしっとりした音色を聴かせますが、強奏では厚い響きを求めました。第1楽章は210小節と211小節の間でパウゼを挿入。最後の小節の二分音符もデクレシェンド気味に長めに延ばしました。第2楽章も力を抜かずにしっかり鳴らします。緩徐楽章とは思えないほどで、小林研一郎のうなり声も炸裂しました。ヴァイオリンの三十二音符の縦線がたまに乱れるのが残念。第3楽章も遅めのテンポで、四分音符に力を込めます。第4楽章もやや遅めのテンポですが、スコアに書かれたAllegro assaiのテンポ設定からすると、さすがにかったるい。がんばりすぎている感があるので、もっと力を抜いてほしいです。ラスト8小節で小林研一郎は手足を動かして激しく指揮しました。

休憩後のプログラム2曲目は、モーツァルト作曲/レクイエム。合唱団約150名がステージ後方に4列で並びました。左から、ソプラノ、アルト、テノール、バスの順で、岡崎混声合唱団が後列2列、愛知県立岡崎高等学校コーラス部が前列2列です。衣装が違うので一目で分かりました。岡崎高等学校の衣装は制服なのかとてもかわいい服装です。女声が男声よりも3:2くらいの割合で人数が多かったです。岡崎混声合唱団は主に愛知県立岡崎高等学校コーラス部の卒業生で構成されているとのこと。白髪の方もおられたので、年齢層は幅広いのかもしれません。合唱団は楽譜を持たずに歌いました。途中で座ることなく最後までずっと立ったままで歌いました。独唱4名は指揮者の前に座りました。パイプオルガンはステージ右から遠隔操作で演奏しました。
1曲目「イントロイトゥス」から合唱のレベルの高さにびっくり。人数の多さを感じさせない澄んだ歌声です。シビれるくらいにうまい。アマチュア離れした実力で、まさに芸術的。表情のつけ方もすばらしい。この作品を聴いてこんなに胸を熱くしたのは初めてでした。小林研一郎の指揮にもよく応えていました。強唱は豊かな響きで迫力があります。「レクス・トレメンダエ」での「Rex」の呼びかけもすごい。ただし、弱唱ではさすがにアインザッツと音程がちょっと不安定になりました。
小林研一郎もオーケストラも、前曲とは異なり力んで演奏しません。合唱の伴奏扱いでした。合唱がこれだけうまいと楽に演奏できるからでしょう。「イントロイトゥス」は、最後3小節でpになる前の八分休符を延ばしてパウゼを取りました。「ラクリモサ」は弱音からはじまって次第に盛り上げていくのがうまい。最後の「コンムニオ」も穏やな表情で終わりました。
独唱は楽譜を持って歌いました。ソプラノとテノールがたまに音程が外れて不安定。テノールは子音の発音がきつい。メゾ・ソプラノは声量が弱くほとんど聴こえません。

演奏終了後は熱狂的な拍手。合唱団はパート別に礼をしました。合唱指揮の近藤惠子が登場したときに、この日最大ボリュームの拍手が送られました。小林研一郎が挨拶。「お客様に大きな力を与えていただきました。岡崎高校コーラス部は日本一どころか、世界一の栄冠を勝ち取りました。名古屋にあることを誇りに思います」と話しました。モーツァルトは「ラクリモサ」の8小節までで絶筆したことを話し、「趣向を変えてアンコールで演奏します」と言って、ラクリモサを演奏。独唱4名と近藤惠子は出番がないのでステージの壁に寄りましたが、小林が「先生方もよろしければお歌いください」と言って笑わせました。最後は、小林研一郎、オーケストラ、合唱団の全員で礼をして終わりました。

岡崎混声合唱団と愛知県立岡崎高等学校コーラス部の歌声にすっかり魅了されてしまいました。ファンになりそうです。名古屋フィルとは年に1回程度共演しているようですが、出演する演奏会は追っかけするくらいに注目したいです。。「第九」を歌ってくれたらうれしいです。
名古屋フィルハーモニー管弦楽団は、技術的には少し落ちるようです。もう少し演奏の精度を上げてほしいです。

(2009.6.26記)


愛知芸術文化センター(オアシス21から望む) 愛知芸術文化センター 愛知県芸術劇場コンサートホール 愛知県芸術劇場コンサートホール 名古屋テレビ塔から望む



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