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2016年2月14日(日)14:30開演 京都コンサートホール大ホール 大友直人指揮/京都市交響楽団 エルガー/弦楽セレナード 座席:S席 3階 C3列13番 |
京都市交響楽団桂冠指揮者の大友直人がひさびさに京響定期に登場です。大友が得意とするイギリス音楽からエルガーが選曲されました。大友を聴くのは、京都市交響楽団第11代常任指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーとして最後の演奏会となった第510回定期演奏会(2008.3.9)以来実に8年ぶりです。
大友直人は桂冠指揮者に就任以降は、京都市交響楽団を指揮することが大きく減って、定期演奏会・特別演奏会では8年間で5回だけでした(第514回(2008年7月)、第517回(2008年10月)、第523回(2009年4月)、特別演奏会「ニューイヤーコンサート」(2011年1月)、第556回(2012年4月))。現在は、群馬交響楽団音楽監督(2013年〜)、東京交響楽団名誉客演指揮者(2014年〜)、琉球交響楽団ミュージックアドバイザー(2001年〜)を務めています。
チケットカウンターには当日券を求める大行列ができていました。客の入りは9割ほどで、空席がチラホラありましたが、オフィシャルブログ「今日、京響?」によると、全席完売したとのこと。チケット完売は第596回定期演奏会以来でしょう。
14:10からプレトーク。大友直人が登場。落ち着いたいい声です。白髪が増えてびっくり。ポディウム席など客席を見渡しながら話しました。
エルガーについては「日本でも愛好者が増えて、演奏頻度が増えた」と語りました。エルガーについてはとても詳しく、まだまだ話したかったようですが、腕時計を見て「話しすぎました」と話しました。作品の解説については後述します。プレトークの終盤では「あっという間にお客さんが一杯になって、京響はすばらしいですね。うれしいです。京響のメンバーとは久しぶりに楽しい時間を過ごした。いい音楽を作りたい」と話しました。とても親しみやすい語り口で、NHKFM「クラシックリクエスト」を思い出しました。プレトークは広上淳一が常任指揮者に就任した第511回定期演奏会「第12代常任指揮者就任披露演奏会」から始まりましたが、大友時代にもやって欲しかったです。
プログラム1曲目は、エルガー作曲/弦楽セレナード。プレトークで大友は「短い曲。結婚3周年を記念して奥さんにプレゼントした」「ほとんどの曲がそうであるように、この作品も弦の人数の指定がなく演奏者に任せられている。今日は少し大きめの編成(第1ヴァイオリン12、第2ヴァイオリン12、ヴィオラ8、チェロ6、コントラバス4)で演奏します」と話しました。
3つの楽章からなりますが、全体で12分ほどと確かに短い。アンサンブルはよく揃っていました。第3楽章があまり盛り上がらずにあっさり終わりました。もっと聴きたいです。
大友直人はいつものように指揮棒なしで指揮。大きな動きで、要所では踏み込んだ指揮を見せました。
プログラム2曲目は、エルガー作曲/チェロ協奏曲(ヴィオラ版)。ヴィオラ独奏は今井信子。プログラムに掲載された山本美紀氏の解説によると、ヴィオラ奏者のライオネル・ターティスがエルガーの許可を得て編曲したとのこと。大友は「作曲当初からヴィオラで演奏したいというヴィオラ奏者がいた。エルガーに相談して作曲者と一緒に編曲した」と紹介。「オクターヴやピツィカートなど細かな変更はある。エルガーが夫婦で健康を害していた時期なので、暗い曲調になっている」とのこと。珍しい機会で、大友直人も初めて指揮すると話しました。
なお、今井信子については、大友曰く京響初出演になるとのこと。「ヴィオラスペースのプロジェクトで、ヴィオラの希望者が増えて、レベルもアップした」と紹介しました。プレトークの最後で大友が「今朝転ばれて脚をケガされた。薬を飲まれて痛みが治まった。歩くのが大変なようで、登場されるときにゆっくり歩かれる。健康状態に問題はないが、あらかじめインフォメーションを」と話しました。
盛大な拍手のなか、今井信子がゆっくり登場。ファンが多いようです。背が低い。今年で74歳とのことですが、そこまでご高齢には見えません。ケガを考慮して、指揮台の前にイスが置かれましたが、一度も座ることなく立って演奏しました。譜面台は置かれていました。
原曲のチェロに比べると、オクターヴ上げて演奏している部分があり、低音の底力に不足しますが、違和感はありません。ただ、第4楽章冒頭などはチェロの低音で聴きたいです。第2楽章はヴィオラのほうが聴きやすいかもしれません。第2楽章は今井信子はオーケストラのテンポを上回る速さで演奏しました。
京都市交響楽団の伴奏はすばらしく言うことなし。演奏後は今井に万雷の拍手が送られました。
休憩後のプログラム3曲目は、ドヴォルザーク作曲/交響曲第8番。プレトークで大友は「明るく活力に満ちたすばらしい作品。イギリスの出版社から楽譜が出版されたので、昔は「イギリス」という副題で呼ばれていた」と紹介しました。前半がイギリスの作曲家だったが「イギリス」つながりのプログラミングになったのはたまたまとのこと。大友直人はこの曲は譜面台が撤去されて暗譜で指揮しました。
いきいきとしてのびやかでいい。強奏は開放的に鳴って、いつもの京響よりもよく響きました。大友直人はソフトな音楽作りという印象でしたが、以前よりもダイナミックになって力強さが増しました。指揮もスピード感がありました。テンポ設定はインテンポで、間を少し開けて演奏されることがある部分も休まずに演奏しました(第1楽章38小節のティンパニの後、第2楽章70小節のトランペットの後)。
第1楽章冒頭のチェロなどによる主旋律ははっきり聴かせました。255小節からのクラリネットの主旋律で、フルートの裏メロを聴かせました。第2楽章は音量が大きめ。第3楽章は速めのテンポ。遅くならずにインテンポで演奏。続けて演奏された第4楽章も速いテンポ。強奏は混濁して主旋律が埋もれがちでした。
大友直人は約4年ぶりの京響定期の指揮でしたが、熱演を聴かせました。京都市交響楽団もパワーアップしましたし、大友の指揮も進化しました。大友直人はもっと頻繁に京響を指揮してほしいです。なお、2016年度の京響自主公演では、「京都 発見!クラシック Vol.5」(2017.3.30)を指揮します。