オーケストラ・ディスカバリー2012 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「名曲のひ・み・つ」
第2回「名曲の秘密(作品編)」


   
      
2012年8月26日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

三ツ橋敬子指揮/京都市交響楽団
泉原隆志(ヴァイオリン)
ガレッジセール(ナビゲーター)

ベートーヴェン/「エグモント」序曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
シベリウス/交響詩「フィンランディア」
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」から「カッチェイ王の魔の踊り」「子守歌」「終曲」

座席:自由席


2012年度「オーケストラ・ディスカバリー 〜こどものためのオーケストラ入門〜」の第2回です。今回のテーマは「名曲の秘密(作品編)」。
指揮は三ツ橋敬子。2008年にアルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクールに優勝して脚光を浴びました。2011年にはテレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられました。最近では日本国内のオーケストラを多く指揮しています。実は三ツ橋がまだ東京芸術大学大学院生だった頃に、ロームミュージックファンデーション音楽セミナー2004レッスン見学会で彼女の指揮を見ています。参加した受講者で最年長ということもあってか、湯浅勇治氏から厳しい指導を受けていたのが思い出されます。前回の第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」のトークで、広上淳一も指導したことがあると話していました。

今回も座席は自由席です。早めにホールに着いて、ポディウム席の中央に座りました。ポディウム席からティンパニ奏者が横に温度計と湿度計を置いているのが見えました。ティンパニは室温や湿度で音程が変わるようですね。客席は8割程度の入り。

プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲/「エグモント」序曲。三ツ橋敬子が登場。黒のパンツスーツに、ポニーテール。耳にイヤリングをつけていました。小柄と聞いていましたが、ポディウム席から見ればそんなに小さくは見えませんでした。
オーケストラは二管編成。三ツ橋の指揮は、指揮棒を持った右手よりも左手をよく使います。「情熱大陸」でも、「左手がうるさい」と自分で話していました。指揮台に手すりが付いていましたが、足はあまり動かさないので落ちることはないでしょう。ときどき息を吸いながら指揮しました。演奏は拍があまりはまらない部分がありました。三ツ橋の指揮はタイミングをつかむのが難しいのかもしれません。
演奏後に三ツ橋がマイクで挨拶。きれいな声です。続いて、ナビゲーターを務めるガレッジセールの2人がマイクを持って登場。ガレッジセールは第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」に続いての登場です。2人とも京響Tシャツを着ていました。ゴリが「指揮姿が蓮舫さんに見えた」とコメント。広上淳一のことは「小さなおじさん」と言っていました。曲目も「バーモントカレー」と言ってみたり(モントしか合っていない)、ボケも絶好調。「名曲の秘密」となるエピソードとしては、ゲーテの劇にベートーヴェンが音楽をつけましたが、作曲当時は2人はまだ会ったことがなかったというもの。聞き役のゴリの問いに、三ツ橋はまじめに答えました。

プログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/ヴァイオリン協奏曲。三ツ橋は初演のエピソードとフィギュアスケートの高橋大輔がこの曲を使っていたことを紹介。ヴァイオリン独奏は、京都市交響楽団コンサートマスターの泉原隆志。譜面台付きで演奏しました。
泉原のヴァイオリン独奏は、音が裏返るなどちょっと不本意な演奏。フルートやクラリネットなど管楽器のソロでは、後ろを振り返って、奏者とアイコンタクトを取って演奏しました。コンサートマスターとして普段おこなっていることが独奏者の演奏姿勢としても現われました。オーケストラとのアンサンブルを大切にしたいということでしょう。音量は申し分ないので、リベンジに期待したいです。
三ツ橋の指揮は、指揮棒の打点が下ではなく、上に来るように振っているように見えました。泉原もオーケストラもちょっと合わせづらそうでした。指揮棒の持ち方も、右手の手のひらでコルクを握るのではなく、コルクよりも少し上の部分を指をそえてつまむように持って振ります。指揮棒をこんな風に持つ指揮者は珍しいですね。どういう意図があるのでしょうか。オーケストラにとっては打点が分かりづらい気がします。ちなみに「情熱大陸」では指揮棒のコルクを握って指揮していたので、持ち方を変えたのでしょうか。なお、今回の聴衆はあまり協奏曲を聴いたことがないのか、第1楽章の後で拍手が起こりました。
演奏後は、ゴリが「35分です!」と叫びながら入場。「長い時間お疲れさまでした」とのこと。泉原は「気持ちよかったです。緊張しました」と感想を話しました。この日は一番乗りして、誰もいないホールでサウンドチェックをしたとのこと。勤勉ですね。三ツ橋も汗をかいたようで、ゴリは「汗をペットボトルにしたら売れる」とコメント。最後に、ゴリが泉原に「今日の演奏は何点でしたか」と質問。泉原は少し考え込んでいましたが、ゴリが「120点です!」と言ってうまくまとめました。今度は広上淳一の指揮で聴いてみたいですね。

休憩後のプログラム3曲目は、シベリウス作曲/交響詩「フィンランディア」。三管編成に増えました。三ツ橋の指揮は、左手が指揮棒を持っている右手よりも上にきます。中間部は美しく歌わせました。終盤ではガッツポーズのような指揮が出ました。最後の音符(全音符と四分音符のタイ)はフェルマータのように長く伸ばさないで、スコア通りの拍で切りました。三ツ橋はかなり汗をかいたようで、演奏後のトークの途中で川ちゃんが舞台袖からタオルと水を持ってきました。ゴリが同じタオルで汗を拭きながら退場しました。

プログラム4曲目は、ドビュッシー作曲/牧神の午後への前奏曲。演奏前のトークでは、「牧神」とは上半身が人間で、下半身が山羊であると紹介されました。三ツ橋はこういう拍に波がある作品のほうがいいですね。心地よく聴けました。演奏後にゴリは三ツ橋の指揮について「初めて優しい三ツ橋さんを見た」とコメントしました。

プログラム5曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ音楽「火の鳥」から「カッチェイ王の魔の踊り」「子守歌」「終曲」。前半とは見違えるようにいい演奏で、聴いているだけで熱くなりました。三ツ橋は近現代音楽のほうがいいですね。最後の音符(全音符+全音符+四分音符のタイ)は、あまり長く伸ばしませんでした。
演奏後は「オーケストラのみなさんが素晴らしい演奏だったので、いい時間を過ごすことができた」と話しました。ゴリが次回の予告をして終演しました。

三ツ橋敬子の指揮は、広上淳一とタイプが異なるので、京都市交響楽団のメンバーは少し戸惑いがあったのかもしれません。珍しい指揮棒の持ち方はどういう意図があるのか一度聞いてみたいです。他の近現代音楽の演奏も聴いてみたいです。ガレッジセールのトークは、ゴリがとてもいい聞き役になってリードしました。ボケは子ども向きではないですが、クラシックファンでなくても楽しめるでしょう。

なお、プログラムのメンバー表から、新井浄氏(シニアマネージャー)のお名前が消えていました。6月の第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」のプログラムには載っていたので、つい最近退任されたようです。

ところで、4月に開通した地下鉄北山駅の出口3から京都コンサートホールへ向かう新しい通路ですが、表示が新しくなっていました。6月には「エコ路地」というネーミングでしたが、その名前は消えて「屋根付き遊歩道」となっていました。夏の日差しが厳しい時には、屋根で日陰ができているので快適です。

地下鉄北山駅の表示 出口3の階段

(2012.8.30記)


五嶋みどりデビュー30周年特別プロジェクト全国ツアー2012 第16回京都の秋音楽祭開会記念コンサート