第5回京都市ジュニアオーケストラコンサート


   
      
2010年1月31日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市ジュニアオーケストラ

スッペ/喜歌劇「軽騎兵」より序曲
チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」
シベリウス/交響曲第2番

座席:全席自由


昨年の第4回に続いて、今年も京都市ジュニアオーケストラコンサートを聴きに行きました。京都市ジュニアオーケストラの演奏を聴くのは、昨年夏の京都市交響楽団みんなのコンサート「サウンド・オブ・ドリーム」以来です。このときは希望者のみの選抜メンバーでしたが、今回の「コンサート」は年1回の定期演奏会でメンバー全員が出演します。指揮はスーパーヴァイザーを務める広上淳一。
プログラムによると、今回の出演者は111名。11歳から23歳で構成されています。男女比は、約3:8で女子が多い。楽器別ではヴァイオリンが26名で最多。応募資格にどの楽器も「楽器を経験していること」という条件がありますが、ヴァイオリンのみ「楽器経験が3年以上」とハードルが高い。それでもこれだけ集まるとは、やはり人気ですね。逆にヴィオラは7名と少ない。第4回は5名だったのでこれでも増えました。前回は京都市交響楽団のメンバーがエキストラで出演しましたが、今回はいないようでした。オーケストラの配置では、左半分(ヴァイオリン)の人数が多く、右半分(ヴィオラ・チェロ)は少ないです。
京都コンサートホールのホームページによると、練習は6月から始まり、4日間のパート練習、6日間の広上による合奏を経て、本番を迎えました。京都市ジュニアオーケストラにかける広上淳一の力の入れようが分かります。

チケットは、京都コンサートホールのホームページからオンライン購入しました。オンライン購入は2009年9月から始まったサービスで、クレジットカードでの決済が可能で、演奏会当日にチケットカウンターで会員証を見せれば、チケットを渡してもらえます。チケットを持ってくるのを忘れる人(=私)には、とても便利なサービスです。
全席自由なので、3階席Cブロック中央で聴きました。客の入りは8〜9割。昨年の第4回よりも増えました。関係者だけではここまで集まらないので、音楽ファンが多数入場しているようです。

客席からの拍手に迎えられて、団員が登場。上が白、下が黒の衣装でした。プログラム1曲目は、スッペ作曲/喜歌劇「軽騎兵」より序曲。必要以上に音量を出さずに、楽に響かせます。広上も落ち着いて指揮。音程や音色がさらに合えば、すばらしいでしょう。

プログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/バレエ組曲「くるみ割り人形」。前曲よりも完成度がアップ。期待していた以上の演奏でした。広上の指揮棒にもよくついていって、表情があります。第1曲「小序曲」の透明感に驚きました。ヴァイオリンがよくそろっています。第3曲「金平糖の精の踊り」のチェレスタの少年(友情出演)もうまい。第8曲「花のワルツ」のハープは姉妹が演奏するということで、京都新聞の記事に掲載されました。中学生とは思えない堂々とした演奏でした。ただし、続くワルツはややワンパターンに聴こえました。木管楽器がもう少しがんばれば華やかに聴こえるでしょう。打楽器も上手でした。

休憩後のプログラム3曲目は、シベリウス作曲/交響曲第2番。さらに完成度がアップ。ただ、強奏はもう一段大きな音量がほしいです。f以上は頭打ちの感じでした。また、ホルンは遠慮気味に聴こえるので、もっとがんばってほしい。木管楽器の音色ももう少し魅力的であってほしいです。
第1楽章は、ヴァイオリンが驚くほどうまい。ただ、管楽器がやや重く、テンポに乗り切れていないのが残念。第2楽章は広上淳一が激しい指揮。指揮台の上でラジオ体操をしているような動きで、「ウッ」とか「キッ」とかの声を拍ごとに発しながら指揮しました。京響との演奏では見られない気合いが入った渾身の指揮でした。第4楽章は反復が多いせいか、少し退屈してしまいました。

カーテンコールの後に、広上が挨拶。「足元がお悪い中(=雨が降っていた)、これだけいっぱいのお客様に集まっていただいてありがとうございます」と話した後、「シベリウスの2番はプロのオーケストラでも大曲で難曲とされている。京都市ジュニアオーケストラは音楽を専門に勉強していない人もいるが、これだけ高い水準で演奏できるのは稀有な存在。京都市交響楽団のメンバーが指導しているが、若い人たちの可能性とエネルギーに勇気づけられる。新しい発見がある」と話しました。演奏の出来については「本番は完璧。今までで一番いい演奏だった。ある意味、ふてぶてしさと頼もしさがある。今後も盛り上げていきたい」と話しました。「完璧」はさすがに言いすぎですが、広上はほめるのがうまいですね。
アンコールは、アンダーソン作曲/そりすべり。シベリウスで降り番だったメンバーも入場して全員で演奏。管楽器と打楽器は立奏しました。肩の力が抜けた演奏で楽しめました。打楽器奏者がサンタとトナカイの帽子(?)を頭につけていました。
終演後には、広上淳一も参加して懇親会が開催されたようです。京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響?」にその様子が掲載されています。

昨年の第4回よりも演奏がレベルアップしたと言えるでしょう。広上も楽しんで指揮していました。楽器編成のアンバランスも前回ほどは感じませんでしたが、同じ楽器でもうまい人とそうでもない人の演奏レベルの差が聴き取れて、個人単位でアドバイスしたくなってしまいました。

(2010.2.2記)


「兵士の物語」言葉と音楽のシリーズによる三重奏版 清水靖晃&サキソフォネッツ「J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲」