イ・ムジチ合奏団来日公演


   
      
2009年10月12日(祝・月)14:00開演
ザ・シンフォニーホール

イ・ムジチ合奏団

<セレナータ・イタリアーナ>
レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
プッチーニ/菊の花
ロータ/弦楽のための協奏曲
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」

座席:A席 2階AA列25番


イタリアのイ・ムジチ合奏団が来日しました。私もクラシックファンになる前から、イ・ムジチ合奏団の名前は知っていたほどなので、日本での知名度はかなり高いでしょう。イ・ムジチ合奏団はかなり頻繁に来日しています。パンフレットやビラに記載はありませんが、インターネットで調べたところ今回が通算23回目の来日とのこと。ここ最近は、2年に1回のペースで来日しています。

パンフレットを500円で購入。来日公演は全部で3種類のプログラムがありましたが、今回の大阪公演は「セレナータ・イタリアーナ」と題したイタリア音楽を集めたプログラムです。ヴィヴァルディの「四季」を含むベストの選曲でした。
ステージにイスが10個並べられていました。左右と後方にはかなりスペースがあります。アムステルダム・バロック管弦楽団 結成30周年記念公演よりもさらに少ないです。こんなに少人数のアンサンブルだったとは意外でした。
客の入りは8割ほど。ステージ後方のポディウム席には客を入れていませんでしたが、演奏者の意向でしょうか。

拍手に迎えられて、メンバーが登場。左から、第1ヴァイオリン3、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ2と座り、コントラバス1はチェロの後ろで立って演奏しました。プログラム前半はハープシコードなしの11名での演奏です。
プログラム1曲目は、レスピーギ作曲/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲。チューニングなしで演奏を始めました。第1楽章冒頭からやわらかい音色で、いきなり別世界に連れて行かれました。全員で呼吸していて、流れるように演奏します。アーティキュレーションの細部やテンポの移り目など、表現もよく揃っています。東京都交響楽団東京芸術劇場シリーズ「作曲家の肖像」Vol.67「レスピーギ」で弦楽アンサンブルによる演奏を聴きましたが、それより少ない人数でもじゅうぶん楽しめました。特に第4楽章が美しく聴けました。
イ・ムジチ合奏団は指揮者を置いていないので、一番左に座っているコンサートマスターのアントニオ・サルヴァトーレがアンサンブルをリードしますが、頭やヴァイオリンを上下に揺らす程度で、あまり大きく動きません。少ない動きでも合わせられて、まさに阿吽の呼吸が成立している合奏団です。楽器別では、ヴァイオリンの音圧が強めなのに対して、ヴィオラ、チェロ、コントラバスはあまり弓を使いません。そのため、ヴァイオリンが主役の演奏バランスでした。中低音はもう少しがんばって欲しいです。また、チューニングをしなかったためか、ヴァイオリンは音程が少し悪いのも気になりました。

演奏終了後は退場することなく、そのまま次の曲へ。プログラム2曲目は、プッチーニ作曲/菊の花。もともとは弦楽四重奏のために作曲されたようです。映画のBGMのような短調の切ないメロディーです。

ヴァイオリンだけ個別にチューニングした後、プログラム3曲目は、ロータ作曲/弦楽のための協奏曲。1964年から翌年にかけて作曲され、1977年に改訂されイ・ムジチ合奏団に献呈されました。4つの楽章からなります。協奏曲と名付けられているように、各パートがソロイスティックに扱われます。弦楽器の性能がフルに発揮できるように技巧的に書かれています。メロディーラインは起伏があり、あまり親しみやすくありません。第3楽章はシンフォニックに響きます。第4楽章は速いテンポで各楽器が聴かせどころを見せ合います。

休憩後のプログラム4曲目は、ヴィヴァルディ作曲/ヴァイオリン協奏曲集「四季」。ヴァイオリン独奏は、コンサートマスターのアントニオ・サルヴァトーレ。独奏者ですが立つことなく前半と同じ場所で座って演奏。当初はヴァイオリン独奏はサルヴァトーレの隣に座っているアントニオ・アンセルミと発表されていましたが、都合により変更されました。ヴィオラの後ろにハープシコードが加わって、12名での演奏です。
やはり「イ・ムジチ合奏団=四季」と言われるだけあって、完成度が高い。よくまとまっています。各奏者のボウイングの幅まで揃っている感じです。同じ釜の飯を食べている一体感や連帯感がありました。響きが締まっていて、格調が高い。響きも古風で、伝統や格式を感じさせます。明るい音色も魅力的。ハープシコードは音量も小さく、あまり主張しません。
演奏解釈も自然体。古楽器奏法とは対極にある演奏で、装飾音の扱いがどうのこうのとか難しいことを考えずに楽しめました。意外にもテンポに緩急をつけました。テンポを揺らして歌いこむなど、現代的な感覚も取り入れています。結成以来ずっと同じ演奏方法に固執しているわけではないことを示しました。ただし、この作品でも音程が甘いのが気になりました。普段からこんなものなのでしょうか。
「春」「夏」「秋」「冬」の4曲を続けて演奏しました。「春」は第1楽章で拍がずれるミス。15小節からソロヴァイオリン、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンの3名でアンサンブルしますが、第1ヴァイオリンが拍感を見失ってしまったようで、28小節で1拍ほど字余りになってしまいました。この作品はもう何回も演奏していると思うので、少しびっくりしました。第2楽章のソロヴァイオリンのメロディーは装飾音をつけたような弾き方でした。これはサルヴァトーレのオリジナルの解釈でしょう。「冬」は第1楽章の盛り上げ方がうまい。トゥッティもよくそろっています。

演奏終了後はステージ前方に一列に並んで拍手を受けました。隣の奏者と話すなど和やかな表情でした。拍手に応えてアンコール。一番右端のチェロ奏者(ヴィト・パテルノステル)が立ち上がって、「ありがとうございます。とても楽しい曲です」と日本語で紹介して、ヴィヴァルディ作曲/シンフォニアト長調よりアレグロを演奏。さらにカーテンコールが続いて、アンコール2曲目。「幸せな子供の思い出。赤とんぼ!」と紹介して、山田耕筰作曲/赤とんぼを演奏。日本の作品を演奏するとは意外でした。日本人でありながら、あまり聴く機会はありませんが、ひさびさに聴くといいですね。さらに3曲目。「ボレロ!」と紹介して、ロッシーニ作曲/ボレロ。「ちょっと」(「もうちょっと」の意味?)と話して、まさかの4曲目は、ヴィヴァルディ作曲/弦楽のための協奏曲「コンカ」より第3楽章。この曲は短くすぐに終わりました。こんなにアンコールをたくさん演奏してくれるとは思いませんでした。ハープシコード奏者がコントラバスを持って登場するなど、笑わせてくれました。

(2009.10.14記)


読売日響第114回東京芸術劇場マチネーシリーズ 京都市交響楽団第529回定期演奏会