アムステルダム・バロック管弦楽団 結成30周年記念公演


   
      
2009年3月7日(土)18:00開演
ザ・シンフォニーホール

トン・コープマン指揮/アムステルダム・バロック管弦楽団

J.S.バッハ/管弦楽組曲第3番
J.S.バッハ/管弦楽組曲第1番
J.S.バッハ/管弦楽組曲第2番
J.S.バッハ/管弦楽組曲第4番

座席:A席 2階 AA列27番


アムステルダム・バロック管弦楽団が結成30周年を記念して来日公演を行ないました。指揮はもちろん設立者のトン・コープマン。両者そろっての来日は9年ぶりとのこと。しかも曲目は、J.S.バッハ「管弦楽組曲」全曲演奏という好プログラムです。
演奏会開催前に少し事件がありました。来日公演のうち東京公演の主催者だった音楽事務所「株式会社ムジークレーベン」が、2008年12月に自己破産を申し立てました。そのため、3月9日と10日に開催される予定だった東京公演は開催中止になりました。一時は来日も危ぶまれましたが、大阪公演は朝日放送の主催だったため、予定通り無事に開催されました。結果的に、来日公演が行なわれるのは、この日の大阪公演と、翌日の茅ヶ崎公演の2回のみという残念な結果になりました。2公演のために、来日してくれたアムステルダム・バロック管弦楽団には感謝しなくてはなりません。

ザ・シンフォニーホールで演奏会を聴くのは、宇野功芳の“すごすぎる”世界以来、約4年ぶり。本当に久しぶりです。外来オーケストラの来日公演では、有料のパンフレットが販売されますが、今回はありませんでした。これも招聘事務所の破産の影響でしょうか。簡単なプロフィールを掲載したプログラムが入場時に配布されました。
開演前のステージではハープシコードの調律が行なわれていました。アムステルダム・バロック管弦楽団は「管弦楽団」と名乗っていますが、「室内管弦楽団」と呼んだ方がいいくらい小編成の演奏団体です。ステージには21個のイスが置かれていましたが、ステージの左右や奥にスペースがあるので、ステージが広く見えます。客の入りは5割程度。土曜日夜の公演にしては不入りです。一般の方には敷居が高いでしょうか。

メンバーが登場。時間をかけて、入念にチューニングをしました。古楽器なので、当然音程は低いです。コープマンが元気な足取りで颯爽と登場。客席に向かって深々と何回も礼をしました。
言うまでもなく「管弦楽組曲」は全部で4曲あり、バッハは第1番から順番に作曲したとされています。この演奏会では、第3番、第1番、第2番、第4番の順に演奏されました。1997年に録音したCDでも、同じ順番で収録されているので、この曲順には何か意味があるようです。

プログラム1曲目は、管弦楽組曲第3番。楽器配置は、ステージ中央に、客席に背を向けて、コープマンのハープシコード。コープマンを囲むように、左から、第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン4、ヴィオラ2、コントラバス1、チェロ1。ヴィオラの後方の雛壇に木管楽器(オーボエ3、バスーン1)。コントラバスとチェロの後方に、ティンパニ1とトランペット3が配置されました。スコアではオーボエ2、ファゴット1、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、通奏低音の編成となっているので、少し楽器を増やしたようです。コントラバスとトランペットは、立って演奏しました。コープマンは、譜面をめくりながら演奏して、ハープシコードの音符がないときは両腕を大きく使って指揮しました。
全曲を通して演奏の特徴は、古楽器で演奏していることをあまり強調しないこと。音色が金属的にならずキンキンしないので、聴きやすい。コープマンのハープシコードは音量があまり大きくありませんが、打鍵に強弱はっきり聴かせました。ただ、ティンパニは響きすぎるので、もう少し硬いマレットを使ったほうがよかったかもしれません。トランペットは高音が出ないなど不調でした。
「G線上のアリア」として有名な2曲目の「エア」は、音符がじわじわと体に染み込んでくるような演奏。落ち着いたテンポで、あまり感情移入せずに淡々と演奏しました。6小節単位でパウゼを置きました。

トランペットとティンパニが退場して、プログラム2曲目は管弦楽組曲第1番。第3番よりも、弦楽器と管楽器に一体感が出てきました。作品は、第3番に比べると作品の親しみやすさに欠けます。

休憩後のプログラム3曲目は、管弦楽組曲第2番。全曲の中で最も演奏頻度が高い曲です。演奏人数はこの日最少の7人のみ。ハープシコード1、トラヴェルソ(フルート)1、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、コントラバス1、チェロ1です。しかも、ハープシコードとチェロ以外は、立って演奏しました。こんなに少ない人数で演奏できるとは知りませんでした。よくまとまったアンサンブルで、7人で1つの楽器のようです。肩に力を入れず、かるがると演奏しました。有名な「ポロネーズ」も自然体の演奏で、格調が高い。ハープシコードの装飾音がよく聴こえました。終曲の「バディヌリー」も速いテンポでリズミカル。ぜひもう1回聴きたいですね。

プログラム4曲目は、管弦楽組曲第4番。1曲目の第3番と同じ編成で演奏しました。人数が多くなると、ごちゃごちゃと聴こえてしまっていまいちでした。

拍手に応えてアンコール。コープマンが曲名を話しました。ヘンデル作曲/組曲「王宮の花火の音楽」より第4曲「歓喜」を演奏。さらに、トラヴェルソ奏者1名がピッコロを持って登場。コープマンが「フィニッシュ」と言って笑わせた後、アンコール2曲目はラモー作曲/叙情悲劇「ダルダヌス」よりタンバリンを演奏。曲名の通り、ティンパニ奏者がタンバリンを演奏。軽快なリズムが楽しめました。
演奏終了後、メンバー数人がステージに戻ってきて、ステージ上で写真撮影。陽気なメンバーですね。

アムステルダム・バロック管弦楽団は、作品に敬意を払って丁寧に演奏しました。大編成のオーケストラでなくても、作品を十分堪能できました。ノリントンのように古楽器奏法を意識させて聴かせるという演奏姿勢ではなく、主観を排した客観的な演奏でした。プレーヤー個人が目立つこともなく、全員で音楽を作り上げていました。完成度はそこそこ高かったですが、アーノンクールの「メサイア」で受けた衝撃ほどではありませんでした。アーノンクールのほうが引き込まれるように聴けました。管弦楽組曲は第2番と第3番は親しみやすいですが、第1番と第4番は魅力に欠けるため、少し退屈してしまいました。演奏者の人数に比べると、ザ・シンフォニーホールの容積が大きかったのも原因のひとつかもしれません。間接音が多く響きすぎているように感じたので、いずみホールくらいの大きさの室内楽向けのホールがよかったでしょう。
コープマンは演奏前後に何回も礼をしました。演奏後はメンバー全員と握手しました。きっと明るく温厚な性格なのでしょう。

(2009.3.9記)


上福島北公園から望む ザ・シンフォニーホール



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