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2005年11月13日(日)14:00開演 兵庫県立芸術文化センター大ホール クリスチャン・オロサヌ指揮/兵庫県立芸術文化センター管弦楽団 「白鳥の湖」より第2幕(チャイコフスキー) 座席:A席 1階 K列30番 |
10月22日にオープンした兵庫県立芸術文化センターに行きました。阪神・淡路大震災10周年にあたる今年、文化復興のシンボルとしてオープンしました。佐渡裕が芸術文化センター芸術監督に就任し、専属のオーケストラである兵庫県立芸術文化センター管弦楽団のオーディションが行なわれ、演奏活動を始めました。
オープンから始まった「芸術文化センターオープニングシリーズ」のなかから「オープニング・バレエ・ガラ よみがえるニジンスキー版「春の祭典」」に行きました。ストラヴィンスキーの春の祭典をバレエで一度見てみたいと思っていました。バレエを見るのは今回が初めてでした。2日公演の2日目で、チケットは完売。
兵庫県立芸術文化センターは阪急神戸線の西宮北口駅が最寄り駅。梅田から特急に乗れば意外に早く着きました。西宮北口駅から芸術文化センターまで直通のペデストリアンデッキがあります。ホールに入る前に、共通ロビー内のポッケで春の祭典の関連展示が行われていたので鑑賞。共通ロビーやホワイエが、ホールの座席数に比べてあまり広くないのが難点ですね。大ホールの座席に木で使われているのが特徴ですが、全体的な雰囲気はちょっと暗め。オーケストラピットはステージの前に一段低いところにありました。1階席からはオーケストラ団員の姿は見えません。
公演は3部構成でした。第1部チャイコフスキー/「白鳥の湖」より第2幕がスタート。白鳥の湖は、3幕4場で構成されていますが、第1幕第2場を第2幕として上演する慣行があるとのこと。指揮者のオロサヌが登場。顔だけ見えました。幕が開くと、林のなかという舞台セット。枝や葉が精巧に作られていました。はじめに緑色の衣装を着たロートバルト(川村康二)が登場。その後、ジークフリート王子(デヴィッド・アーシー)、オデット(ヤンヤン・タン)が登場し、客席から大きな拍手。ジークフリート王子とオデットのデュエットは、フィギュアスケートのように体を軽く持ち上げたりしました。ヤンヤン・タンの足はすごく細いですが、しっかりとつま先立ちをしていました。ちなみに、靴(トゥ・シューズ)の先端は木でできていてけっこう痛いらしいです。他には「白鳥たち」(兵庫県洋舞家協会)が30人ほど登場。ちょっと足音が大きいのが気になりました。有名な「四羽の白鳥の踊り」があり、ラストはジークフリート王子がオデットと別れて一人になったところで幕。オーケストラはなかなか豪快な鳴らし方で、金管楽器がバリバリ音を立てていました。指揮者は腕や指揮棒がたまに見えました。終演後は文字通りのカーテンコール。出演者が次々にステージに現れて礼。
休憩後の第2部は4曲。まず、チャイコフスキー/「眠れる森の美女」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。出演は、ディアナ・ヴィシニョーワとアンドリアン・ファジェーエフの2人。幕が開くとセットが何もなくて殺風景。安心して見られる演技で、存在感がありました。連続ジャンプでは大きな拍手が起こりました。
続いて、ポンキエッリ/歌劇「ラ・ジョコンダ」より「時の踊り」。出演は上村未香(夜の女王)、貞松正一郎(三日月)。幕が開くと、星空と時計と三日月がステージ後方のスクリーンに映し出されました。三日月の衣装がちょっと意味不明。「朝」「昼」「夕」「夜」役の兵庫県洋舞家協会のメンバーはバタバタとせわしなく余裕がありませんでした。上村と貞松に比べると、安定感が違います。
続いて、「コンティヌウム」よりパ・ド・ドゥ。この公演が日本初演でした。出演はヤンヤン・タンとデヴィッド・アーシー。幕が開くと、ステージは真っ暗。ステージ後方から赤い光が差し込んでいて異様な雰囲気。中央に当てられたスポットライトの中で2人が演技。これまでの作品とは明らかに性格が異なり、バレエというよりはダンスに近かったです。緑色のタキシードを着た2人が体を絡み合わせてなまめかしい動きを披露。音楽は録音で流され、ピアノが神秘的で妖しい響きを奏でました。なかなか刺激的な演目。
第2部最後はプロコフィエフ/「ロメオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ(バルコニーシーン)。有名な曲ですが、この曲がバレエ音楽であるという認識が私にあまりなかったためか、バレエがなくても音楽だけでじゅうぶんです。ディアナ・ヴィシニョーワとアンドリアン・ファジェーエフの2人が出演しましたが、ちょっと地味。
休憩後の第3部はストラヴィンスキー/春の祭典。「よみがえるニジンスキー版」とあるように、初演時に近いかたちで上演しようという意欲的な試みです。1913年の初演でシャンゼリゼ劇場が大混乱を引き起こした話は有名ですが、この初演で上演されたニジンスキーの振り付けは、初演後10回程度上演されただけで忘れ去られていたとのこと。今回はホドソンがニジンスキーの振り付けを再構成して上演しました。ホドソンはニジンスキーの振り付けについて手がかりを得るために、ストラヴィンスキーのピアノスコアや、初演時の批評、残されたスケッチを研究したことが、プログラムに記載されています。アーチャーが衣装復元を担当。
初演で大騒ぎになったバレエなので、どれほど過激なバレエなのか期待しましたが、そんなにショッキングな内容ではありませんでした。振り付けそのものはとてもシンプルで分かりやすい。以前テレビで「選ばれし乙女」が上半身裸で踊っていたのを見たことがありますが、そういう先入観があったせいか今回の公演は意外にまともに見えました。これで大騒ぎになったとは、当時の聴衆にとってよっぽど新鮮なバレエだったのでしょう。衣装は強烈なインパクトがありました。帽子の形や赤の原色で彩られた衣装など日本人が踊っているとは思えません。時代感があるというか原始的で異様な雰囲気を与えました。
幕が上ると、30人くらいが4つほどのグループに分かれて円になってしゃがんでいます。「春のきざしと乙女たちの踊り」から、グループごとに立ったり足を踏み鳴らしたりしゃがんだりの繰り返し。リズムにあわせて機械的に動きました。次第に全員で大きなひとつの円を作りました。聖人がゆっくりとした足取りで円の中心に現れ、「大地の踊り」では円の周りの人々があたかも感電したかのような激しい動きで踊り狂いました。
第2部に入ると、すぐに幕が下りました。幕には狩猟をしているような絵が描かれていました。しばらくして幕が上ると、女たちがひとつの円を作って回り、「乙女たちの神秘的な舞い」練習番号100の5小節と101の5小節の金管楽器のフェルマータで、女たちの1人(=選ばれし乙女(平山素子))が円の外に倒れます。それを他の女がじろっと見ることで、いけにえが選ばれたことを表現していました。「祖先の儀式」からは、円の中心に選ばれし乙女が座り、その回りを女たちが回ります。最後の「いけにえの踊り、選ばれし乙女」で、選ばれし乙女が立ち上がり踊ります。円の外に出たいが、出してもらえないといった動きを見せました。最後は黒い衣装の「熊の皮をかぶった六人の祖先」が選ばれし乙女を持ち上げて幕。あっという間に終わりました。
カーテンコールでは出演者とスタッフがステージに登場。客席の拍手を何度も受けていました。オロサヌが兵庫県立芸術文化センター管弦楽団員を起立させて、拍手を受けていました。
初めてバレエを観ましたが、意外に楽しめました。音楽だけでなく視覚が加わるので、おもしろいですね。客席から曲間でも拍手が起こったり、出演者も拍手に応えるためにわざわざステージに再登場したりするのがクラシックの演奏会と違うなと感じました。クラシックコンサートほど上演回数は多くありませんが、また機会があれば見に行きたいです。
兵庫県立芸術文化センター管弦楽団は結成されたばかりでしたが、危なげない演奏でした。来年からは定期演奏会もスタートするので、これからも聴く機会があるでしょう。
兵庫県立芸術文化センター大ホールの音響ですが、今回はオーケストラがピットに入って演奏していたのでよく分かりません。4階席までありますが、上の階ほど座席の傾斜がきつくてステージをのぞきこむ感じが恐いのと、天井も低いので少し圧迫感があります。1階席がいいのではないでしょうか。1階席もあまり奥行きがないのが残念ですが。3階席に屋上庭園があるのがユニークです。
(2005.11.27記)