京都新聞トマト倶楽部「京響コンサート」


   
      
2004年9月29日(水)18:30開演
京都コンサートホール大ホール

ユベール・スダーン指揮/京都市交響楽団
三舩優子(ピアノ)

ベートーベン/交響曲第7番
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
オッフェンバック/オペレッタ「パリの喜び」より

座席:1階 19列19番


先週川崎で東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第1回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」 を指揮したユベール・スダーンが、京都市交響楽団と初共演です。

京都新聞トマト倶楽部がどのような組織なのかはよく知りません。少なくとも京都新聞を取っていなくてもチケットは買えます。うれしいのは、チケット代の安さ。全席2,000円(ポディウム席は1,000円)という価格は、他のコンサートではめったにありません。台風が接近しているにもかかわらず、聴衆は7割以上は来ていました。定期演奏会と変わらないほどの人気です。

プログラム1曲目は、ベートーベン作曲/交響曲第7番。スダーンのアプローチは先週の東京交響楽団との「第九」と同じです。「第九」ほどテンポ設定は速くありませんでしたが、古楽器奏法を取り入れたアクセントやスピード感を求めていました。ただ、オーケストラの反応がいまひとつ。初共演なので慣れていないこともあるのでしょう。個人の演奏で必死といった感じで、周囲の音を聴く余裕がないようでまとまりに欠けました。音符が響きませんでしたし、パートごとで分離してしまってうまく聴こえません。また、持続力が弱く音が飛びません。ピッチの乱れやミスもやや目立ちました。パート別では、管楽器がさっぱり鳴りません。これは東響の「第九」でもそうだったので、スダーンが音量を抑えているのでしょう。弦楽器のヴィオラ以下もあまり鳴りません。特にヴィオラとチェロは何を演奏しているのかモゴモゴしていて聴き取れませんでした。東響の「第九」に比べると、響きは重たく感じられました。第4楽章になってようやくエンジンがかかり始めたような演奏でした。

休憩後のプログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/ピアノ協奏曲第1番。ピアノ独奏は三舩優子。黒のドレスで登場。
最後までピアノ独奏と指揮者に協調性が感じられない演奏でした。独奏と指揮者が対決しているような演奏を聴くのは久しぶりで、ある意味スリリングな演奏でした。とにかくテンポが合いません。三舩がスダーンよりも早く弾きたいようですが、お互いテンポを譲りません。二人の音楽観が異なっているためでしょうが、相性が合わないのならどうしようもありません。三舩のピアノは、ややキャンキャンした音で薄っぺらい音色でした。打鍵音が明確すぎるため、音色が硬く感じられます。もう少しソフトな音色を求めたいです。テクニックや音量に不足はありませんでした。オーケストラ伴奏は、前曲よりもまとまっていてスリムな演奏。いつもの京響とは明らかに違う音色が聴かれました。
演奏終了後、三舩がカーテンコールで何度かステージに現れましたが、スダーンは一度も姿を見せませんでした。

プログラム3曲目は、オッフェンバック/オペレッタ「パリの喜び」より。前曲で使用したピアノを移動せずに、ピアノのふただけを閉めました。演奏時間が短いためにピアノを動かさなかったと思いますが、変な感じがしました。
スダーンも礼をせずにすぐに指揮。5曲を演奏しました。実に軽快で清潔感のある繊細な演奏で、強奏でもうるさくなりません。音量を絞ってもいきいきとした表情が生み出されました。まるでウィーンフィルのニューイヤーコンサートを聴いているような気分がしました。2曲目では、客席に手拍子を要求して客席に向かって指揮しました。5曲目は有名な「天国と地獄」でした。運動会のBGMのようなイケイケの演奏と違って、謹み深いクリーンな演奏になるのは不思議で魔法のようです。
演奏終了後は、拍手に応えてアンコール。5曲目をもう一度演奏。それでも鳴り止まない拍手に応えて、今度は2曲演奏(何曲目かは分かりませんでした)。アンコールは予定外だったらしく、最後はコンサートマスターが客席に一礼して、やれやれといった表情で引き上げていきました。

ユベール・スダーン東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第1回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」 での演奏と合わせると、あまり音量を重視する指揮者ではないことが分かりました。管楽器はあまり鳴らしませんし、弱音で繊細な表情を作るのに長けている指揮者だと感じました。大規模な交響曲では物足りなく感じるかもしれませんが、軽快な作品を指揮すると得意とする古楽器奏法とあいまって面白い演奏が聴けそうです。アンコールをやってくれるなどサービス精神旺盛なのもうれしいです。

京都市交響楽団は、第467回定期演奏会に比べると、ミスが目立ちました。スダーンのような古楽器奏法を取り入れる指揮者とあまり共演していないことが原因でしょう。少し残念な演奏でした。

(2004.10.4記)




東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第1回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」 NHK交響楽団ウラディーミル・アシュケナージ音楽監督就任記念演奏会