都響スペシャル「第九」


   
      
2007年12月24日(祝・月)14:00開演
東京芸術劇場大ホール

エリアフ・インバル指揮/東京都交響楽団
澤畑恵美(ソプラノ)、竹本節子(メゾソプラノ)、福井敬(テノール)、福島明也(バリトン)
二期会合唱団

ベートーヴェン/序曲「レオノーレ」第3番
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」

座席:S席 2階B列18番


東京都交響楽団の第九演奏会に行きました。指揮は、2008年4月から東京都交響楽団プリンシパル・コンダクターに就任するエリアフ・インバル。
東京芸術劇場大ホールで演奏会を聴くのは3回目ですが、今までは3階席で聴いていましたが響きすぎる印象があったので、今回は初めて2階席にしました。視覚的にも音響的にもとてもよかったです。
チケットは、都響メールニュース読者限定の先行発売で購入しました。やはり注目を集めたようで、全席完売でした。チケットの半券を切るときに、スタッフがこの演奏会は休憩がないことを伝えました。

プログラム1曲目はベートーヴェン作曲/序曲「レオノーレ」第3番。オーケストラが入場した後、インバルがゆっくり登場。意外に背が高いです。
弦楽器がつややかな音色で演奏しました。 東京都交響楽団の弦楽器はこんなによかったのかと驚きました。舞台裏のトランペットは、下手の舞台袖で演奏しました。
インバルは譜面台なしで指揮。大きく分かりやすい指揮で、強弱をはっきりコントロールしました。弦楽器の間から随所で、木管楽器や金管楽器が顔を出すのもおもしろい。たまに、インバルのものと思われる歌声やうなり声が聴こえました。

休憩なしでプログラム2曲目はベートーヴェン作曲/交響曲第9番「合唱付」。二期会合唱団が入場。ステージ後方に5列で並びました。インバルが登場。自分で指揮台を動かして、オーケストラ寄りに少し近づけました。指揮者が指揮台を移動させる光景はなかなか見られないので、客席から笑いが起こりました。
全体的にやや速めのテンポで演奏しましたが、テンポは一定ではなく、場面によって自在に緩急をつけていました。また、随所でホルンを強調していたのが印象に残りました。インバルはホルンが好きなのでしょうか。
インバルの指揮は、この作品でも大変分かりやすい。インバルの指揮を見れば、音価(重さやエネルギー)、音量、方向性をどうしたいのかよく分かりました。腰をかがめて指揮することが多かったです。
第1楽章301小節からインバルは左手を高く上げてホルンを強奏させました。535小節からもホルンが強奏。
第2楽章は、9小節以降の弦楽器(第2ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→第1ヴァイオリン→コントラバス)のそれぞれの楽器の入りをアクセント気味にはっきり演奏しました。楽器が増えたことを印象づけたいようです。177小節からの木管楽器(ファゴット→オーボエ・クラリネット→フルート)の入りも同じようにはっきり演奏しました。
第3楽章はスコアはp指定ですが、fくらいの大きな音量でしっかり響かせました。25小節のAndante moderatoからもあまりテンポを上げずに演奏しました。
休みなしに第4楽章に突入。91小節の四分音符2つは長めに大きく演奏。92小節からの主題は楽器が増えるにつれて徐々にテンポを速めて、188小節には快速テンポに持って行きました。164小節頃に、独唱者4人が下手から登場。オーケストラと合唱団の間に置かれたイスに座りました。269小節からの独唱者4人による重唱は、伴奏の木管楽器を聴かせました。普段は埋もれがちなのでおもしろく聴けました。テノール独唱が終わる直前の428小節付近で、スコア指定にないスビト・ピアノ。いきなり音がなくなったので間違えたのかと思ってびっくりしました。インバルは合唱をめいっぱい歌わせました。合唱は力強く、独唱が小さく聴こえるほどでした。歌詞のうち、570小節のBruder(兄弟)はインバルにとって大切に扱いたいようで、指揮棒に表われていました。831小節からの独唱者4人による重唱は、伴奏のオーケストラの音量を落としました。928小節からはシンバルの金属音を大きく聴かせました。
演奏終了後は、客席からインバルに大きな拍手が送られました。

これまでに「第九」は何十回と聴いていますが、今回の演奏会では新しい発見がたくさんありました。聴き慣れた作品をこれだけ新鮮に聴かせるとは、インバルの手腕は見事です。東京都交響楽団はひさびさに聴きましたが、技術レベルも向上していることが分かりました。特に弦楽器が豊かな響きを聴かせました。コントラバスもしっかり響かせました。CDにしてもう一度聴きたいです。
インバルは、1995年〜2000年に東京都交響楽団特別客演指揮者に就任し、2006年には7年ぶりに都響を指揮しました。今回の演奏会は「第九」演奏会の初日でしたが、インバルの棒にオーケストラがしっかりついてきていたので、すでにオーケストラとの一定の意思疎通も図られているように感じました。2008年4月からプリンシパル・コンダクターに就任しますが、東京都交響楽団との演奏に大いに期待が持てます。今から楽しみです。ただし、残念なのは、インバルが指揮する東京都交響楽団の演奏会がかなり少ないこと。次回は2008年4月にマーラー/交響曲第8番「千人の交響曲」を指揮する後は、2009年3月まで指揮することがありません。出番が少なすぎです。プリンシパル・コンダクターの任期は3年間なので、できるだけ多くの演奏会に聴きに行こうと思います。

(2007.12.29記)


池袋西口公園から望む 大ホール入口 大ホール喫煙所から池袋駅方面を望む



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