いずみシンフォニエッタ大阪第15回定期演奏会「管楽器とパーカッションの魅力」


   
      
2007年2月3日(土)16:00開演
いずみホール

飯森範親指揮/いずみシンフォニエッタ大阪
碇山典子(ピアノ)、安藤史子(フルート)

川島素晴/10管楽器のための協奏曲
ストラヴィンスキー/八重奏曲
メシアン/異国の鳥たち
西村朗/フルートと管楽と打楽器のための協奏曲“オーレル・ニコレのために”
グノー/小交響曲

座席:指定席 1階J列23番


ニコラウス・アーノンクールの「レクイエム」のチケットを確保するために「いずみホールフレンズ」に入会しましたが、それだけではもったいないので、いずみホールのレジデント・オーケストラであるいずみシンフォニエッタの定期演奏会のチケットを購入しました。第15回のプログラムは、「管楽器とパーカッションの魅力」と題して、管楽器と打楽器のみで演奏する作品を集めた珍しいプログラムでした。いずみシンフォニエッタの演奏は、リハーサル見学会を聴いたことがありましたが、演奏会本番を聴くのは今回が初めてです。
チケットは、一般発売日の1週間前にいずみホールフレンズを対象に優先発売がありました。フレンズ特別価格は5%割引でした。

15:15開場、16:00開演でしたが、15:30からロビー・コンサートが行なわれました。前回の定期演奏会から始まったとのこと。今回は金管五重奏(トランペット2、ホルン1、トロンボーン1、バストロンボーン1)の編成で、シャイト作曲/戦いの組曲より2曲を演奏しました。
続いて、15:45からはホールでプレ・トーク。いずみシンフォニエッタ音楽監督の西村朗、常任指揮者の飯森範親、プログラム・アドバイザーの川島素晴の3人でトーク。川島素晴は1972年生まれ。まだ若かったです。「音楽の息づかい」というテーマでトークがスタート。飯森は管楽器以外の楽器でも演奏するメンバーは呼吸していると語りました。客席は約8割の入りでした。

プログラム1曲目は、川島素晴作曲/10管楽器のための協奏曲。1997年の作品で、初演以来の再演(関西初演)とのこと。まず楽器配置に特徴があります。指揮者の正面にイスが5脚まっすぐ2列並べられていて、前列に各楽器の1番奏者が、後列に2番奏者が座りました。楽器は向かって左から、フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットの順で、全員で10人です。飯森範親が登場。指揮台はありませんでした。また、指揮棒なしで指揮しました。
プレ・トークでいくつか種明かしされましたが、まず飯森が叩く鞭の一撃で始まります。指揮者に鞭を叩かせて演奏に参加させる発想がおもしろい。その後も節目で鞭が叩かれました。飯森は指揮しながら、鞭を演奏するので忙しそうでした。音楽は、一回聴いただけではなかなか分かりません。「協奏曲」と題されているように、高度な演奏技術を要求する作品でした。また、特殊奏法も多く使われています。プレ・トークで川島素晴は「特殊ではない」と語っていましたが、ホルンには音域を越える低音を出させたり、楽器を演奏する代わりに「ハー」「スー」「フー」というため息のような声を出させたり、実験的な要素が多く含まれています。各楽器がうごめきますが、それに相応する演奏効果が生まれているわけではなく、作品全体としては内向的な音楽です。演奏終了後は、客席に座っていた川島素晴がステージに呼ばれました。

プログラム2曲目は、ストラヴィンスキー作曲/八重奏曲。1923年の作品。楽器配置は、向かって左から、フルート、クラリネット、ファゴット2、トランペット2、トロンボーン2の順。3楽章からなります。第1楽章は、真面目な表情とおどけた表情が交錯。第3楽章の最後で、木管楽器によってきれいな旋律が現われたかと思ったら、いきなり終わりました。全体的にダラダラと続く印象はぬぐえませんでした。やはり打楽器なしで管楽器だけで演奏する作品は厳しいですね。どうしても単調になってしまいます。

プログラム3曲目は、メシアン作曲/異国の鳥たち。1956年の作品。楽器配置は、指揮者の左隣にピアノ独奏の碇山典子。管楽器は、向かって左から、1列目は、ピッコロ、オーボエ2、ホルン2、トランペット、クラリネット2、フルート。2列目は、ファゴット、バスクラリネット、打楽器7人です。打楽器は京都市立芸術大学打楽器アンサンブルの5名が出演していました。
今回の演奏会で演奏された作品の中で一番楽しめました。メシアンが収集したという世界各国の鳥の鳴き声が登場します。スコアには鳥の名前が書いてあるとのこと。メシアンがほぼ同時期に作曲したピアノ独奏曲「鳥のカタログ」に、オーケストラが加わった作品と言えるでしょう。オーケストラに呼応してピアノが長いソロを演奏する部分もあれば、オーケストラとピアノが一緒に演奏する(鳴き続ける)部分もあります。冒頭からフルート、クラリネット、鉄琴の色彩感がすばらしい。また、「トゥーランガリラ交響曲」に似た鮮やかな和音も聴かれました。ドラや木魚など多彩な打楽器が活躍し、異国らしさが表現されました。ピアノの碇山典子も難しいパートを熱演。最後は、同音を連発して終わり。和音の美しさにハマりました。もう一回聴きたいですね。

休憩後のプログラム4曲目は、西村朗作曲/フルートと管楽と打楽器のための協奏曲“オーレル・ニコレのために”。1997年の作品。オーレル・ニコレのフルート独奏、作曲者の指揮で初演されています。楽器配置は、指揮者の左横にフルート独奏の安藤史子。バックは向かって左から、オーボエ2、ホルン2、ファゴット2、クラリネット2。管楽器の後列に、打楽器が左右両側に1名ずつ配置されています。飯森範親はこの作品は指揮棒を持って指揮しました。冒頭からチャイムとドラの激しい打ち込みを聴かせました。フルート独奏は思い悩んでいるような旋律を演奏。バックの管楽器は濃密な不協和音のロングトーンで緊張感を演出。打楽器の使い方が効果的で、「鳥のヘテロフォニー」でも登場した鍵盤打楽器を弦楽器の弓でこする奏法が見られました。ただし、少し打楽器を使いすぎているように感じました。演奏終了後は、客席に座っていた西村朗がステージに呼ばれました。

プログラム5曲目は、グノー作曲/小交響曲。1885年の作品。楽器配置は、向かって左から、フルート、オーボエ2、ホルン2、ファゴット2、クラリネット2。飯森範親は再び指揮棒なしで指揮しました。4楽章からなります。ロマン派の作品で柔らかい響きが聴けました。飯森範親はキビキビ指揮しましたが、その反面、演奏にいきいきとした躍動感が乏しい。この作品は指揮者なしで演奏したほうがいいのではないでしょうか。奏者同士がアイコンタクトを取りながら演奏したほうがいいでしょう。

いずみシンフォニエッタ大阪は、もう少し完成度が高い演奏を期待していましたが、ちょっと期待外れでした。初めて演奏する作品がほとんどだったせいか、譜面にかじりつきすぎているように思いました。もう少し個々人の演奏レベルアップを求めたいです。ただし、今回のような意欲的なプログラムを組んだことは評価していいでしょう。
飯森範親は、いつものように明確な指揮でしたが、編成が小さすぎていくぶん力をもてあましているようにも感じました。

(2007.2.5記)


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