京都市交響楽団第497回定期演奏会


   
      
2007年2月18日(日)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

井上道義指揮/京都市交響楽団
諏訪内晶子(ヴァイオリン)

シベリウス/組曲「カレリア」
シベリウス/交響曲第7番
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
シベリウス/交響詩「フィンランディア」

座席:S席 3階 C−4列10番


京都市交響楽団第9代音楽監督を務めた井上道義が指揮する京都市交響楽団の定期演奏会を聴きに行きました。井上道義が指揮する定期演奏会のプログラムは個性的なので注目していましたが、やっと都合が合いました。今回の演奏会は、没後50年を迎えたオール・シベリウス・プログラムでした。井上道義は今年1月から岩城宏之の後を受けて、オーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督に就任しました。
チケットは、当日券なしの全席完売。諏訪内晶子が出演することと、日曜日公演ということで人気を集めたようです。

開演に先立って13:50から、京都市交響楽団創立50周年を記念して行なわれているロビー・コンサートが行なわれました。今回は第1ヴァイオリンセクション12名が出演。まず、1曲目は、ロッシーニ作曲/歌劇「ウィリアム・テル」序曲よりスイス軍の行進。原曲通りではなく、ヴァイオリンアンサンブル用に編曲されていました。原曲では管楽器や打楽器にかき消されてヴァイオリンがあまり聴こえないので、おもしろく聴けました。コンサートマスターのグレブ・ニキティンが日本語で挨拶。メンバー紹介のあと、2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/ロマンス。映画音楽「馬あぶ」の中の1曲のようです。ニキティンが「私はピアノがうまくないので、今回はゲストをお呼びします」という紹介の後、ピアノ奏者としてなんと井上道義が登場。びっくり。井上道義が「ニキティンは札幌に来たときは日本語がまったく話せなかったが、今ではここまで話せるようになった」と称賛。ショスタコーヴィチについては、「11月に日比谷公会堂でショスタコーヴィチ交響曲の全曲演奏会をやるので、東京観光がてらに来てください」と宣伝していました。ゆっくりした曲でショスタコーヴィチの作品とは思えない優しい曲でした。井上道義は中央に置かれた電子ピアノを演奏。技術的には簡単そうでした。井上は弾いていない手を使って、背後に立っているヴァイオリン奏者を指揮していました。

いよいよ開演。オーケストラの配置は、木管楽器の後ろにコントラバスを並べました。また、向かって左に打楽器とホルン、右の前列にトランペット、後列にトロンボーンとテューバを配置していました。 プログラム1曲目は、組曲「カレリア」。第1楽章「間奏曲」は、意外にもスリムな鳴らし方。弦楽器の伴奏音型を抑えて、必要な音符だけ鳴らすという演奏姿勢でした。第2楽章「バラード」は、中間部の弦楽器のアンサンブルの豊かな響きがすばらしい。第3楽章「行進曲風に」では、冒頭の弦楽器のメロディーが美しい。井上道義は指揮棒なしで指揮。2拍子の拍感を強調しないで、大きく構えて指揮しました。優雅ですらありました。

プログラム2曲目は、交響曲第7番。単一楽章のつかみどころがない作品ですが、井上道義はうまく性格づけして演奏しました。冒頭から和音をひとつづつ確認するように丁寧に始まりました。その後もダラダラしないで、メリハリのついた演奏を聴かせました。目頭が熱くなりました。京都市交響楽団の演奏も楽器間の掛け合いなども問題なく、非の打ちどころがないと言っていいレベルでした。

休憩後のプログラム3曲目は、ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は諏訪内晶子。紫色のドレスで登場。指揮台から少し離れた場所で演奏しました。諏訪内の演奏は、緩急を自在につけて息苦しくありません。洗練された潤いのある音色で格調が高く、オーケストラとは別格でした。ただ、あまり線が太くないので、もう少し音量が欲しいところがありました。特に重音を演奏すると、音量が小さくなりました。技術的にもパーフェクトとは言えない演奏で、少しミスがありました。やはりこの作品は難曲ですね。オーケストラも少し控えめで、いささか表面的な伴奏でした。この作品を演奏会で聴くのは今回で5回目ですが、ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第17回での滝千春&飯森範親/東京交響楽団の演奏には及びませんでした。井上道義はこの作品のみ指揮棒を持って指揮しました。
演奏終了後は、拍手に応えて諏訪内がアンコールJ.S.バッハ作曲/ラルゴを演奏。諏訪内の音色はゆったりした曲がいいです。シベリウスのような攻撃的な作品は似合わないですね。

プログラム最後の4曲目は、交響詩「フィンランディア」。演奏時間が一番短い作品を最後に持ってくるなんて変わったプログラムです。オーケストラのチューニングが終わらないうちに、井上が登場して客席に向かって挨拶。諏訪内のアンコール曲を紹介して、今日が諏訪内晶子との初共演だったことを明かしました。「今日は本当は雪が降って欲しかった。シベリウスだから。(雨なので)ちょっと努力が足りなかった。」と話して、客席の笑いを誘っていました。その後、「力強い気持ちで帰ってもらおうと思って、このプログラムを作りました。」と話して、指揮をはじめました。
冒頭から金管楽器がよく鳴って威圧感十分。京響の金管がこんなに鳴るとは驚きです。中盤の弦楽器のメロディーは流麗な響きでした。
演奏終了後は、井上道義は何度もカーテンコールを受けていました。聴衆の期待の大きさとオーケストラ団員からの信頼の厚さを感じました。

井上道義は、派手な指揮アクションがイメージされますが、今回の演奏で外面的なイメージを払拭させられました。とても充実した演奏を聴かせました。井上道義の演奏をもっと聴くべきですね。音楽監督に就任するオーケストラ・アンサンブル金沢との演奏活動にも期待大です。ちなみに、上述したショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会(「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」)は、日比谷公会堂で11月から12月にかけて行なわれる予定です。

(2007.3.5記)


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