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2006年12月17日(日)19:15開演 サントリーホール大ホール 小澤征爾指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団 プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第2番 座席:S席 2階C 7列28番 |
東京フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会に続いて、サントリーホールで1日2公演です。今年夏の小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅦで演奏活動を再開した小澤征爾が、桂冠名誉指揮者を務める新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を指揮しました。
この公演は、大きな変更が2点ありました。まず、公演日時が、小澤征爾の健康状態を配慮して、12月16日(土)14:00開演から12月17日(日)19:15開演に変更されました。続いて、11月になって、今度は演奏曲目が変更されました。プログラム1曲目に予定されていた「ルトスワフスキ作曲/管弦楽のための協奏曲」が「プロコフィエフ作曲/ピアノ協奏曲第2番」に変更され、ピアノ独奏で急遽ユンディ・リが出演することになりました。小澤征爾とユンディ・リの共演は、2005年夏以来になるとのこと。
チケットは、@電子チケットぴあのプレリザーブでS席が当選しましたが、1階席の端の席でいまいちだったので、一般発売にも参戦。一般発売の電話攻撃で2階席Cブロックの席を取れたので、こちらを残して1階席はネットで売却しました。
プログラム1曲目は、プロコフィエフ作曲/ピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏はユンディ・リ。
プロコフィエフが亡命する前に作曲された作品なので、前衛的であまり親しみやすくありません。プロコフィエフのピアノで初演されていて、ピアノ独奏は超絶技巧を必要とする作品です。初めて聴きましたが、必要以上に音が多くて難解に感じました。
演奏は、何よりもユンディ・リのピアノ独奏がすばらしい。作品の再評価に迫る名演でした。みずみずしく透明感のある音色で、音が多くても濁って聴こえません。また、各パッセージで表情を弾き分けていて、ユンディ・リの意志が感じられました。インスピレーションに富んでいて、即興的な鋭い瞬発力もありました。暗譜で演奏しているのもすごい。第1楽章の音域の広いカデンツァも、明確なタッチで鮮やかに弾きました。第4楽章は、ピアノが速いテンポで大暴れ。最後までスタミナが切れませんでした。
オーケストラもユンディ・リのピアノに感化されたようで、すばらしい伴奏を聴かせました。ただ、ユンディ・リの熱演に比べると少し控えめで、もっと鳴らして欲しいと感じた部分がありました。小澤征爾の指揮台は、あらかじめずらして置いてありました。ユンディ・リとアイコンタクトを取るためでしょう。小澤征爾の譜面台はありませんでした。小澤征爾はいつものように指揮棒なしで指揮しました。
第4楽章の最後の音を弾くと、ユンディ・リが立ち上がり小澤征爾と抱き合いました。演奏終了後は、拍手にこたえてユンディ・リがアンコール。「ショパン ノクターン」と自分で客席に紹介して、ショパン作曲/ノクターン op.9-2を演奏。ユンディ・リの音色には、ノクターンがぴったりですね。この曲を聴くのに最もふさわしいピアニストの一人でしょう。聴いているだけで健康になりそうな演奏でした。小澤征爾はアンコールの間、指揮台に座って聴いていました。
ユンディ・リは、イケメンの美貌で人気があるのかと思っていましたが、実力を伴ったピアニストであることが分かりました。将来が楽しみなピアニストです。曲目が変更にならなければ聴くことができなかったので、聴けて本当にラッキーでした。
休憩後のプログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第1番「冬の日の幻想」。小澤征爾は2007年5月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会で、6月にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でもこの曲を指揮する予定です。
2年前に聴いた新日本フィルハーモニー交響楽団第379回定期演奏会「小澤征爾のショスタコーヴィチ」に比べて、新日本フィルハーモニー交響楽団が見違えるようにレベルアップしていました。これは2003年9月に音楽監督に就任したクリスティアン・アルミンクの功績でしょう。特に木管楽器の色彩感がすばらしい。何度か聴いたことのある作品でしたが、こんなに聴きどころが多い作品だったとは今まで気づきませんでした。欲を言えば、強奏で全員ががんばりすぎて、主旋律が埋もれてしまうのが惜しい。
第1楽章はホルンが後鳴りして聴こえるなど響きが重かったですが、尻上がりに調子を上げました。第2楽章がフルート、オーボエ、ファゴットの木管アンサンブルが美しい。表情豊かで音程も狂いがありません。第3楽章の弦楽器のピツィカートもいきいきとした表情。クリアーな響きで上品。こんなに内容の充実した楽章だったとは、目から鱗です。第4楽章はヴァイオリンのメロディーをたっぷり歌いこみました。途中で同じメロディーがチェロに登場しますが、実になめらかに流れました。開放的な鳴り方で、一気に聴かせました。
小澤征爾は譜面台は置いてありましたが、譜面は置いてありませんでした。指揮棒なしで指揮しましたが、最後までバテずに指揮しました。意気込みが伝わる指揮で、疲れた様子はまったく見せませんでした。
演奏終了後のカーテンコールでも、小澤征爾はまだパワーがありあまっているようで、小走りで出入りして、団員と握手していました。
マイナーな選曲の演奏会でしたが、大満足の演奏で心が満たされました。小澤征爾は、休養から完全に復活したと言えるでしょう。見るからに元気そうでした。チャイコフスキーは、前述したようにベルリンとウィーンでも指揮する予定ですが、この演奏内容なら絶賛されること間違いないでしょう。
新日本フィルハーモニー交響楽団の充実ぶりには驚きました。まだ、小沢征爾の指揮で2回聴いただけですが、音楽監督クリスティアン・アルミンクが指揮する演奏会をぜひ聴きに行きたいと思います。
21:10に終演。翌日は朝から京都で仕事です。東京発の最終の新幹線には間に合わないので、23:00東京発の寝台急行「銀河」に乗って帰りました。
(2006.12.28記)