ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団来日公演


   
      
2006年11月25日(土)17:00開演
京都コンサートホール大ホール

マリス・ヤンソンス指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
ストラヴィンスキー/バレエ「春の祭典」

座席:S席 3階 C−3列9番


ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の2年ぶり13回目の日本ツアーです。前回の2004年の来日公演は、マリス・ヤンソンスがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第6代首席指揮者に就任したばかりの時期でしたが、今年はこのコンビがどう変わったかに注目です。ちなみに、前回(2004年)の来日も、京都コンサートホールで行なわれました。また、ヤンソンスは、昨年のバイエルン放送交響楽団来日公演でも京都コンサートホールに来てくれたので、3年連続で聴いています。
チケットは、土曜公演ということもあって、発売初日ですでに私が好きな3階席Cブロックの中央座席が取れませんでした。かなりの人気です。チケットは完売で、当日券はありませんでした。

16:00に開場。パンフレットを1,000円で購入。ホールがリハーサル中で長い間ロビーで待たされました。リハーサルは16:30に終了しました。
プログラム1曲目は、ドヴォルザーク作曲/交響曲第9番「新世界より」。2004年の来日公演では聴かれなかった個性的な表現が目立ちました。ヤンソンスが自分のカラーを出して演奏していて、スコアにない強弱をつけたり、ホルンを強調したり、トランペットを鳴らさなかったり、工夫が見られましたが、私には小細工に聴こえました。弦楽器の響きの柔らかさはこのオーケストラのすばらしいところだと思いましたが、全体的に響きが薄く聴こえました。本拠地のコンセルトヘボウであればホールが響きをつけてくれるのかも知れません。技術的にも前週のアーノンクールの緻密な演奏を聞いた後では、雑に聴こえてしまいました。演奏ミスも少しありました。この京都公演が日本公演の初日だったので、来日疲れがあったのかもしれません。

休憩後のプログラム2曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ「春の祭典」。前曲とは打って変わってオーソドックスな解釈でした。細部をデフォルメすることもなく、さっと流したような演奏でしたが、逆に個性や特徴に乏しく、何を聴かせたいのかよく分かりませんでした。オーケストラの総合力で一体感ある演奏を聴かせましたが、音が塊で飛んでくるので、どの楽器がどんな音符を演奏しているのか、細かく聴かせる演奏ではありませんでした。また、変拍子で構成されていることもあまり感じさせない演奏でした。演奏レベルは高いですが、あまりワクワクさせられませんでした。ホルンを強調するのは前曲と同じでした。
第2部「序奏(異教の地の神秘的な夜)」は、トランペットの最弱音がすばらしい。舞台裏で演奏しているのかと思ったほどでした。最後の「いけにえの踊り」で、ティンパニがミス。練習番号146と練習番号171で、音符を叩くのがそれぞれ1小節早い。演奏は続行しましたが、ヒヤっとしました。最後はものすごい音の洪水で、何が何だかよく分からないまま終わりました。

演奏後の拍手に応えてアンコール。ヤンソンスはこれまでの公演でもアンコールを数曲演奏しているので、ここからは「第3部」と言っていいでしょう。アンコール1曲目は、ブラームス作曲/ハンガリー舞曲第6番。昨年のバイエルン放送交響楽団来日公演でもアンコールで演奏していました。ヤンソンスはこの曲が好きなのでしょうか。続いて、2曲目は、ドヴォルザーク作曲/スラブ舞曲op.72-7。このオーケストラは、弦楽器と木管楽器がメロディーを演奏する曲が似合っています。
余談ですが、終演後のホールの掲示では、アンコール1曲目が「ドヴォルザーク作曲/スラブ舞曲op.72-7」、2曲目が「バルトーク作曲/「中国の不思議な役人」より」となっていました。直前で演奏曲が変更になったのでしょうか。

2年前の来日公演に比べると、期待はずれの演奏でした。全体的にオーケストラがあまり鳴っていないように感じましたが、本拠地のコンセルトヘボウはよく響くホールらしいので、あまり大きな音量で鳴らす必要がないのかもしれません。日本で聴くのであれば、京都コンサートホールよりも例えばミューザ川崎シンフォニーホールで聴いたほうがいいように感じました。京都コンサートホールでも今回は3階席でしたが、2004年の来日公演は1階席で聴いたので、京都コンサートホールの響き方によるのかもしれません。

この演奏会でとても気になったことがひとつ。プログラム1曲目の「新世界より」の演奏前に、ヤンソンスが拍手で迎えられて指揮台に上ったときに、カメラのフラッシュが光りました。まだ一音も演奏していない演奏者に対して、カメラ撮影をする行為に唖然としました。1曲目のカーテンコール時には四方八方からフラッシュが光る有様。こんな演奏会は初めてでした。ホール側もさすがに危機感を持ったのか、休憩中にスタッフ数人で「カメラ撮影は禁止です」と告げ回っていました。演奏会は続けられましたが、神経質なアーティストなら途中で怒って帰ったとしても文句は言えないでしょう。
ホール内でのカメラ撮影は禁止ですが、最近ルールを無視する人が増えてきたように思います。クラシックを聴く層が増えたのは喜ばしいことですが、演奏を聴きに来たのではなく、演奏会を見に来たという聴衆が増えてきたように感じます。せっかく来日してくれた指揮者とオーケストラに対してあまりにひどいマナーだと、ステージでの演奏や今後の招聘にも支障が出ます。もう少し何とかならないでしょうか。

(2006.12.4記)




ニコラウス・アーノンクールの「レクイエム」 東京フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会