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2002年10月16日(水)19:00開演 京都コンサートホール大ホール 小林研一郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲 座席:A席 1階30列24番 |
学生オケや無料で聴ける京響の巡回コンサートなどを除くと、今回が記念すべきクラシックコンサート初体験となりました。A席で鑑賞。1階席の後部でした。聴衆はやはり年輩の方が多かったです(どんな演奏会でもそうですか?)。
指揮者の小林研一郎が登場。聴衆に向かって一礼、今度はオケの団員に一礼、最後に指揮台に一礼。それから指揮台に上がりました。体格は、細身でとても小柄といった印象です。
プログラム1曲目は、モーツァルト作曲/歌劇「フィガロの結婚」序曲。勢いがあるものの熱っぽさはなく、むしろ涼しささえ感じさせる演奏でした。弱奏を重視した演奏でしたが、アンサンブルがくずれなかったのはさすがです。ただ、管楽器が無表情というよりは聞こえないくらい存在感がなかったのが残念です。指揮も小振りで、熱演を期待していたので、意外な演奏でした。
2曲目は、ベートーヴェン作曲/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」。ピアノは小山実稚恵。 第1楽章は、小山実稚恵のピアノの音色がベートーヴェンの作品にしては明るすぎて、少し違和感を感じました。テクニックや音量では非の打ち所がない演奏だったのですが、ショパン的な音色の明るさが少し気になりました。
オケはピアノの伴奏に徹している印象でしたが、小林が手を突き上げると、ffのとても引き締まった音が出てくるのには驚きました。弦楽器、特に第2ヴァイオリンが厚く、振動がホールの床を伝って私の足にも伝わりました。ただし、管楽器は相対的に危なっかしく、特にホルンは不調でした。ティンパニももうすこし固さが欲しいですね。
第2楽章は、オケは穏やかに演奏していましたが、小山のピアノが大きすぎたように感じました。
第3楽章は、小山のピアノが絶好調。華麗な楽想が、小山の音色によく合いました。まさに水を得た魚のように鍵盤を操っていました。迫力のある圧倒的演奏にひきこまれました。ブラボー!。オケは、弦楽器の反応がすばらしい。小林の指揮も第3楽章になるとノッてきて、指揮台を強く踏みしめる音が聞こえました。
プログラム最後の曲は、サン=サーンス作曲/交響曲第3番「オルガン・シンフォニー」。オルガンは松居直美。プログラム前半の演奏では、熱演を特徴とする小林にしてはおとなしい演奏だったので、どうしたのだろう?と心配しましたが、そんな心配は無用でした。
メインプロでは、まるで別人、別のオケかのような激しい演奏が聴けました。第1楽章から、最後列のトランペットとトロンボーンが大爆発。小林もうなり声「イーン」を発しながら、指揮台を激しく動き回りました(ちなみに小林は全プログラムで譜面台なしで演奏)。ホルンもベルアップをやったりで、とても情熱的な演奏を聴かせました。
つづく第2部は、弦楽器の濃厚な美しさの中にもヴァイタイリティがあふれる演奏でした。
第2楽章は、冒頭から弦がすりきれるかのように弦楽器奏者が激しく弦をこする音が聞こえました。オケの強奏の中から、小林のうなり声も頻繁に聞こえました。中間部は、一転して美しい表情を聴かせました。
オルガンが登場する第2部は、パイプオルガンの音量に対抗するかのように、金管が爆音を聴かせました。音色は汚かったですが、小林の激しいタクトと、そこから出される強奏に圧倒されました。打楽器も強打で演奏し、ラストはサン=サーンスというよりは、マーラーに似た響きがしました。京都コンサートホールのパイプオルガンは初めて聞きましたが、いい音でした。
鳴りやまぬ拍手に応えて、トロンボーン奏者(おそらく京都出身と思われる)がマイクであいさつ。つづいて、小林が短くあいさつをしました。指揮者にしては珍しくいい声でした。
アンコール1曲目は、「ダニーボーイ」(アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」)。弦楽器のみによる演奏でしたが、あいさつで触れた感謝の意がよく伝わる演奏でした。
小林が「このままではみなさんとお別れしにくい」としてアンコール2曲目は、メインプロの「オルガン・シンフォニー」の第2楽章第2部のラスト1分程度を再び演奏。小林と楽団員全員で聴衆に一礼した後、一斉に退場しました。
小林研一郎は、とても温厚な人物で、人間味あふれる指揮者だと感じました。他の聴衆から聞いた話では、他の演奏会でも、メインプロのためにプログラム前半は抑えて演奏するとのこと。演出上手ですね。彼の演奏は、あまり聴いたことがありませんが、なかなか個性的な指揮者だと感じました。CDを聴くより、コンサートで実演を聴いたほうがおもしろい指揮者でしょう。また関西に来るようでしたら、ぜひ聴きに行こうと思います。
日本フィルに対する印象は、弦楽器、特にヴァイオリンの音量的な厚さがすばらしいと感じました。ただし、弦楽器に比べると、管楽器と打楽器は技術的に弱さを感じました。
(2002.10.19記)