◆作品紹介
レスピーギの「ローマ三部作」の最後を飾る作品。古代から現代に至るローマの祭を取り上げている。
4部からなるが、休むことなく続けて演奏される。第1部「チルチェンセス」でブッチーナ、第3部「十月祭」ではマンドリンが使われる。初演は、1929年2月21日にトスカニーニ指揮のニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団によって行なわれた。吹奏楽編曲版もよく演奏される。
第1部 チルチェンセス
第2部 五十年祭
第3部 十月祭
第4部 主顕祭
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
朝比奈隆指揮/北ドイツ放送交響楽団 | 1969 | オードクラシックス(輸) ODCL1006-2 | C |
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 | 1980 | スクリベンドゥム(輸) SC021 | B |
ムーティ指揮/フィラデルフィア管弦楽団 | 1984 | ブリリアントクラシックス(輸) 7565/1 | B |
シノーポリ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック | 1991 | グラモフォン UCCG50045 | C |
広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 | 1991 | キャニオンクラシックス PCCL00374 | C |
ガッティ指揮/ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団 | 1996 | RCA(輸) 82876 60869 2 | D |
飯森範親指揮/東京交響楽団 | 2012 | エクストン OVCL00467 | C |
朝比奈隆指揮/北ドイツ放送交響楽団 【評価C】
朝比奈同曲唯一の録音。朝比奈の指揮とは思えないほど、熱のこもった演奏である。ドイツのオーケストラだけあってシンフォニックに聴かせるが、細部はあまり明瞭でない。やや交通整理不足に思える部分がある。ティンパニはほとんど聴かせない。
「チルチェンセス」は、ブッキーナが左からよく聴こえる。「五十年祭」75小節と76小節の間にパウゼを挿入する。また、最後の小節のフェルマータを長く取る。「十月祭」は、191小節〜200小節のa tempo - Meno mossoをなぜか反復する。マンドリン独奏が入るAndante sost.toはやや速めのテンポ。「主顕祭」は、冒頭から打楽器がにぎやかに鳴る。Raganellaは拍を間違えて完全にずれたタイミングで演奏している。Tempo di SaltarelloからTavoletteの代わりに鐘が派手に鳴る。朝比奈のうなり声がたまに聴こえる。
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 【評価B】
メロディア原盤のライヴ録音。スヴェトラーノフの個性がよく現れた演奏である。ファーストチョイスとしては推せないが、他の指揮者とは聴かせどころが違うため、聴き飽きた人には楽しめる。
「チルチェンセス」冒頭から、金管楽器がバカ鳴り。強烈なパンチが炸裂する。音程とか和音のバランスとかは関係なし。音質よりも音量を重視する。音色は汚いが、パワーのすごさでは右に出る者がいないだろう。祭というより暴動に近いが、キリスト教徒が殺戮される雰囲気は出ている。
「五十年祭」は打って変わって、細部を丁寧に聴かせる。冒頭から二分音符3つで構成される内声をしっかり響かせて、メロディーを重厚に聴かせる。5小節からチェロとコントラバスの不協和音を強調する。76小節からテンポアップ、82小節のAllo festosoでテンポを戻す。
「十月祭」は153小節でホルンの不協和音をやたら強調する。237小節でスコアにない打楽器の金属音が聴こえるが、追加されたのか事故なのかは不明(後者の可能性が高い)。
「主顕祭」は、313小節からのトランペットソロが豪快に音を外す。最後は勢いでアンサンブルの乱れをごまかした。
ムーティ指揮/フィラデルフィア管弦楽団 【評価B】
EMIクラシックスの原盤。速めのテンポでカラッと仕上げている。暖かくて陽気な雰囲気が感じられる。混濁感がなく、強奏でも響きが軽くてソフトだが、ちょっと物足りなく感じる部分もある。鈴、タンブリン、鉄琴などの打楽器の色彩感がすばらしく聴きものである。「五十年祭」のAllo festosoから、ホルンの高音が聴こえるのが珍しい。
シノーポリ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック 【評価C】
残響を多く取り入れた録音。金管楽器主体のサウンドで、高音を軽々と出すなどオーケストラの精度が高い。明るい音色で開放的だが、イタリアの香りには乏しい。内声を聴かせて彫りが深く、なかでもティンパニやコントラバスなど低音が効いている。弦楽器は軽く響くが、重みが欲しい。
「チルチェンセス」冒頭はティンパニが入るタイミングが早い(食い気味に入ってくる)。Pesateはトロンボーンが音を割りながら、硬い音型で演奏する。And.teからの賛美歌はレガートで息が長い。「五十年祭」は、82小節からのAllo festosoを速いテンポで突っ走る。「十月祭」は52小節からのAllegretto vivaceを遅めのテンポで落ち着いて演奏する。90小節のホルンソロは聴こえないくらいの超弱奏。203小節からのマンドリンソロも音量を抑える。「主顕祭」は遅めのテンポで始まる。178小節からスコア通りホルンがテヌートで演奏するが、豊かな響きが聴きもの。337小節以降も遅めのテンポで装飾音を丁寧に演奏する。
広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 【評価C】
日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者就任記念演奏会(サントリーホール)のライヴ録音。広上淳一のうなり声がたまに聴こえる。縦線が乱れるなど演奏精度はいまひとつ。アンサンブルも荒削りで、勢いにまかせて演奏している部分がある。金管楽器は音圧が低く、苦しそうに演奏している。「五十年祭」ラスト5小節からのホルンは、音を短く切らず朗々と鳴らしている。マンドリンが演奏する「十月祭」Andante sost.はテンポを落としてゆっくり演奏している。「主顕祭」はテンポが不安定で少し破綻気味。
ガッティ指揮/ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団 【評価D】
興奮を抑えたスマートな演奏で、肩の力が抜けていて全体的におとなしい。強奏がパンチ不足で物足りない。響きが軽く、全力を出し切ってないように聴こえる。何を聴かせたいのかよく分からない部分がある。イタリアのオーケストラらしい明るい音色を聴かせるが、オーケストラの編成が薄手なのか響きが薄い(特にヴァイオリン)。低音もさびしい。録音も残響が多く、直接音が少ない。
「チルチェンセス」は、ブッチーナの柔らかい響きに驚く。Molto allegro以降でトランペットとブッチーナで縦線がずれるのが気になる。「五十年祭」37〜38小節は、弦楽器の厳かな響きに心が洗われる。
飯森範親指揮/東京交響楽団 【評価C】
第596回定期演奏会(2012.1.7 サントリーホール)のライヴ録音。同じコンビの演奏を「ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第17回」(2006.5.5 ミューザ川崎シンフォニーホール)で聴いているが、実演とは異なる印象を受けた。
攻撃的で暴力的な部分を排除して、美しく健康的に聴かせる。見通しもよく、きれいに整えられているが、響きの密度が薄く、量感も物足りない。多くの人数で演奏しているはずだが線が細く、大きな音量を出すことを重視していない。こんなに軽く聴かせる演奏は珍しい。音圧が低いため、自信なさげに聴こえる。響きも軽くスカスカしている。装飾音符も雑に扱わず、丁寧に演奏しているのが好感が持てる。録音はティンパニや金管が後方から響くなど、空間的な広がりを感じるが、やや分離気味に聴こえる。
「チルチェンセス」Pesateは、音の立ち上がりが遅く、フニャフニャしている。「五十年祭」の90小節で縦線が乱れる。
2007.5.13 記
2007.9.11 更新
2008.7.20 更新
2009.3.21 更新
2012.2.21 更新
2013.3.11 更新