第6回藝文京コンサート「ピアノの時間」


  2024年11月24日(日)14:00開演
京都芸術センター講堂

谷川俊介(ピアノ)

シューマン/アラベスク
ショパン/ノクターン Op.48-2
ショパン/ノクターン Op.62-1
スクリャービン/幻想曲
ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ

座席:全席自由


京都芸術センターで開催された第6回藝文京コンサート「ピアノの時間」に行きました。「元明倫小学校の校舎で愉しむミニコンサート」のサブタイトルがついていて、1時間のコンサートです。主催は、京都市、公益財団法人京都市芸術文化協会。京都市情報館のホームページで本公演の開催を知りました。入場無料で申込不要でした。「藝文京コンサート」は、京都市立芸術大学新キャンパス移転と文化庁移転を記念して、2023年6月から始まって今回が6回目です。「藝文京」とは、京都市芸術文化協会が発行する文化誌『藝文京』に由来するようです。

本公演では、京都芸術センターが所有するペトロフ社のピアノが演奏されます。100年以上前の1910年頃に製造されて、元明倫小学校に寄贈されました。なお、ペトロフ社はチェコのメーカーで、1864年にアントニーン・ペトロフがピアノの製造を開始して、現在も製造しています。日本でペトロフ社のピアノを見かけることはありませんね。

ピアノ演奏は、谷川俊介。2016年に京都大学大学院理学研究科で修士号を取得し、現在は一般企業に勤務しています。

会場は京都芸術センターの講堂。京都芸術センターは元明倫小学校で、講堂は2階にあります。土足で入場。入口でプログラムを受け取りました。予想を上回るお客さんだったようで、パイプイスが追加されました。お客さんは150人ほどでしょうか。ペトロフピアノの外観は普通のピアノと同じで、古さを感じません。白髪の男性がチューニングしていました。

開演前に男性スタッフが挨拶。「京都芸術センターにはピアノが2台あり、ペトロフピアノはそのうちの1台で、チェコのペトロフ社製で、明倫小学校の開校50周年を記念して、1918年に明倫学区の住民が明倫小学校に寄贈した。2008年に明倫学区の住民が修復して演奏できるようになった。「ピアノの時間」は昨年から始めた」と説明。「画家の中村大三郎に「ピアノ」という作品があり、京都市京セラ美術館に展示されている」と紹介しました。インターネットで調べたところ、1926年に描かれた屏風で、ペトロフピアノを弾く着物を着た女性が描かれています。

続いて、ピアニストの船岡陽子のレクチャー。船岡は谷川俊介が師事したピアニストで、「谷川はこのピアノを6年前に演奏したことがあり、私のスタジオに来た。昨年の第53回フランス音楽コンクールで優勝した。ピアノと対話できるピアニスト」と紹介しました。スクリャービンの幻想曲については「フレーズがクロスする、新しいフレーズが逆行したり上から下に交差する。楽譜に書かれていない倍音が聴こえる。どれだけ聴こえるか、音の宝探し」と解説しました。

谷川俊介が登場。現在は東京に住んでいることや、各曲のききどころをやや早口で説明しました。「ショパンは音は少ないが、心をひっかいてくれる」と紹介。全曲暗譜で演奏しました。
プログラム1曲目は、シューマン作曲/アラベスク。音の粒が明るく、打鍵がストレートに響きます。チューニングがやや甘いのか、弾き込んだピアノの音色がしました。主題の違いを楽しむ作品。
プログラム2曲目は、ショパン作曲/ノクターン Op.48-2。高音が少しキンキンするので、まろやかさが欲しい。古風に聴こえるのはチューニングが甘いからかでしょうか。近くの席で聴いているからか、打鍵が硬めです。
プログラム3曲目は、ショパン作曲/ノクターン Op.62-1。前曲もそうでしたが、「夜想曲」のなかでこの2曲は有名ではないので、渋い選曲です。くすんだ音色ではなく、講堂内の照明も明るいままなので、夜よりも昼の曲のイメージです。
プログラム4曲目は、スクリャービン作曲/幻想曲。谷川は「スクリャービン初期の曲で和音が重厚。暗く始まるが、輝かしい曲」と紹介。強打がシャープに響きますが、和音があまり広がらず、ごちゃごちゃしています。深みのある和音が欲しい。幻想曲(ファンタジー)とは思えない激しさで、力強くて迫力があり、一人で弾いているとは思えない熱演でした。
プログラム5曲目は、ラヴェル作曲/高雅で感傷的なワルツ。谷川は「8個のワルツからなる。1曲目の舞踏会はこの会場のような感じ」と解説。ピアノ独奏のために作曲されましたが、その後に編曲された管弦楽版を京都市交響楽団第563回定期演奏会で聴きました。こういう明るい曲がこのピアノには合っていて、色彩感があり、一番しっくりきます。第7曲「Moins vif」は拍手しそうになる盛り上がり。終曲「Épilogue: lent」はオーケストラとは違って聴こえました。

拍手に応えてアンコール。ドビュッシー作曲/「映像」第2集から「金色の魚」を演奏。谷川は「金色の魚は、金魚ではなくて錦鯉」と解説。高音がきらびやかでした。予定をオーバーして、15:20に終演。5日後の11月29日(金)に天満教会で「谷川俊介ピアノリサイタルーフランス音楽の夕べー」を開催するとの告知。ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」も演奏されます。

終演後にペトロフピアノに近寄ってみると、弦の構造が現代のピアノと違います。チューニングの方法も通常とは違うでしょう。ブランドマークは「ANT.PETROF」とマークされていますが、創業者のアントニーン・ペトロフの意味でしょう。谷川はX(@shyanigawa_pf)で、「象牙鍵盤のフィット感すごい」と投稿していて、鍵盤のタッチが異なるようです。聴きどころの解説が分かりやすく、楽しく聴けました。

なお、第7回藝文京コンサート「ピアノの時間」は、2025年3月2日(日)に開催予定ですが、演奏者は公募されることになり、応募用紙が封入されていました。参加料、演奏料、交通費の支給はなく、1組15分で8組程度が出演予定です。


京都芸術センター 2階への階段 ペトロフピアノ ペトロフピアノ 「ANT.PETROF」 ペトロフピアノ

(2024.12.16記)



京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.5「井上道義×ブルックナー交響曲第8番」 ウエスティ・パフォーマンス広場「CONTEMPORARY SOLO CONCERT」