RYUKOKU Clarinet × Percussion Orchestra 2023


  2023年9月17日(日)15:00開演
龍谷大学響都ホール校友会館

児玉知郎/龍谷大学吹奏楽部クラリネットパート&パーカッションパート

第1部 Clarinet Stage
 阿部勇一/コン・モート~4本のクラリネットのための
 ヘンリー/BIRDWATCHINGから第1楽章、第2楽章、第3楽章、第5楽章
 ドュファイ/オーディションのための6つの小品からⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵ楽章
 石川健人/十二色相環~衝突、拡散、交錯する5人のクラリネット奏者のための

第2部 Percussion Stage
 スーザ(加藤大輝編)/星条旗よ永遠なれ マリンバ1台10手連弾のための
 ダビラ/STOOL PIGEON
 パウエル(アンドレイ編)/How to Train Your Dragon
 ギリングハム/ヨハネ黙示録の天使たち

第3部 Clarinet × Percussion Special Stage
 リード(渡邊一毅編)/アルメニアンダンスパートⅠ
 R.シュトラウス(中村克己編)/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら

座席:全席自由


龍谷大学吹奏楽部のクラリネットパートとパーカッションパートの演奏会「RYUKOKU Clarinet × Percussion Orchestra 2023」に行きました。例年は、クラリネットパートによる「Ryukoku Clarinet Orchestra」として開催されているようですが、今回は打楽器が加わり、略称「クラパカオケ」として開催されました。7月17日に龍谷大学吹奏楽部のX(旧Twitter)(@ryu_windmusic)に投稿されたので、知りました。本番当日に向けてのカウントダウン動画も配信されましたが、本番当日の投稿が「クラパカオケまで、あと19,800秒!」というのが笑ってしまいました。

龍谷大学吹奏楽部は、以前は龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部という長い名称でしたが、2016年頃に龍谷大学吹奏楽部に改称しました。音楽監督・常任指揮者は、若林義人(元京都市交響楽団、相愛大学非常勤講師、京都市立芸術大学非常勤講師)。若林氏もジーパン姿で来場されていました。滋賀県の瀬田キャンパスに拠点があり、今年度も全日本吹奏楽コンクールに関西代表として出場します。

入場は無料でしたが、予約フォームからの予約が必要でした。また、龍谷大学吹奏楽部のYouTubeチャンネル(@ryudaiband)で、無料でオンライン配信が行なわれました。カメラ4台で撮影されました。当日のパンフレットがYouTubeの概要蘭からダウンロード可能でした。

会場の龍谷大学響都(きょうと)校友会館には初めて行きました。京都アバンティの9階にあります。以前は「京都市アバンティホール」という名称でしたが、2010年4月に龍谷大学が京都市から1億9千万円で取得しました。卒業生が滞留できるようなスペースは特になさそうで、校友会の事務局も深草キャンパスにあります。なお、一般市民も利用できるようです。 アバンティの東エレベーターで上りますが、開場前にはエントランスホールが人でいっぱいでした。ホールの客席は357席。ステージの位置がかなり高い。客席の入りは7割程度。

プログラムのメンバー表によると、クラリネットパート30名、パーカッションパートは23名もいます。出身高校を見ると、京都両洋、安城学園、玉名女子、東海大大阪仰星、京都橘、早稲田摂陵、浜松商業、高岡商業など、吹奏楽の名門高校から進学されていますが、私の母校の名前があってうれしい。

第1部「Clarinet Stage」は、クラリネットアンサンブル。譜面台を立てて、立って演奏しました。プログラム1曲目は、阿部勇一作曲/コン・モート~4本のクラリネットのための。2008年の作品で、「コン・モート」とは「動きを持って」という意味。1回生4人での演奏。大きな音を出さなくても、じゅうぶん響きますが、リードが硬いのか音の跳躍があまりできていません。細かな音符がうにょうにょと続くのが大変です。

演奏前後のアナウンスはなく、プログラム2曲目は、ヘンリー作曲/BIRDWATCHINGから第1楽章、第2楽章、第3楽章、第5楽章。1997年の作品。4回生と3回生の四重奏で、アンサンブル力が格段に向上。アーティキュレーションがよくそろっていて、聴いていて気持ちがいい。第1楽章「飛び交うツバメたち」はあっという間。第2楽章「スズメたちの口論」、第3楽章「忍び寄るハゲワシ」に続いて、第5楽章「ロードランナーのレース」はオオシチパシリという鳥が描かれているようでしたが、息のスピードが速く、スピード感が爽快。

プログラム3曲目は、ドュファイ作曲/オーディションのための6つの小品からⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵ楽章。今年3月の「第46回全日本アンサンブルコンテスト」で金賞を受賞しました(全国の「大学の部」で金賞は3団体しかない)。4人で一人の楽器のようで、音色や音質がよくそろっています。上昇下降の速いパッセージで、細かな音符がよく揃っています。貫禄の演奏でした。

プログラム4曲目は、石川健人作曲/十二色相環~衝突、拡散、交錯する5人のクラリネット奏者のための。E♭クラリネット、B♭クラリネット×3、バスクラリネットの五重奏(バスクラリネットが中央で、その左がE♭クラリネット)。

第1部は25分で終了しました。いずれもクラリネットのために作曲されたオリジナル作品だからか、4曲とも曲想が似ています。トゥッティでの細かなスケールと弱音での音程に気を配る必要がある作品でしたが、もう少し選曲にバラエティがあったほうがよかったでしょう。

第2部は「Percussion Stage」。プログラム5曲目は、スーザ作曲(加藤大輝編)/星条旗よ永遠なれ マリンバ1台10手連弾のための。マリンバ1台を5人で演奏。スネア、シンバル、大太鼓の3人が伴奏しました。楽譜なしで演奏。第二旋律(練習番号C)の音の跳躍が難しいようですね。トリオではポジションをクルクルと回転しながら移動。また、右端の奏者がマレットを逆にして持っているほうでマリンバの端を叩きました。スコアには「マレットの柄でフレームを叩く」と記されています。オープニングにふさわしい視覚的にも楽しい作品でした。

プログラム6曲目は、ダビラ作曲/STOOL PIGEON。客席後方の扉から歓声をあげながらメンバーが登場。黒い丸イス(stool)を持って、8人がステージに一列に並びました。もちもと木製のイスを楽器にした作品で、4人でも演奏可能とのことです。イスに座って演奏開始。最初はスティックでスティックを叩いて音を出します。その後は、立ち上がってイスを叩いたり、隣のイスを叩いたりで、マーチングのドラムソロのようなノリ。底抜けに明るいパフォーマンスでした。

プログラム7曲目は、パウエル作曲(アンドレイ編)/How to Train Your Dragon。2010年に公開されたアメリカ映画「ヒックとドラゴン」の原題で、原曲はオーケストラです。打楽器がところせましと並べられて、16人で演奏(グロッケン×2、シロフォン×2、ヴィブラフォン、マリンバ×4、チャイム、ティンパニ、スネアドラム、バスドラム、クラッシュシンバル、トムトム、サスペンデッドシンバル)。指揮者はいません。

プログラム8曲目は、ギリングハム作曲/ヨハネ黙示録の天使たち。人数が減って9人で演奏(グロッケン、シロフォン、ヴィブラフォン、マリンバ×2、ティンパニ、ブレーキドラム、バスドラム×2)。映画音楽のようなメロディーで始まりますが、中間部は衝撃的な和音で緊張感があります。グロッケンとヴィブラフォンが弓でこすって音を出す奏法もあります。最後はチャイムも鳴りました。

パーカッションパートは期待以上の演奏で、さすが日本を代表する大学バンドです。いいアンサンブルで、クラリネットより楽しめました。わざわざキャンパスから楽器を運搬してくれてありがとうございます。打楽器パートの人数が多くてびっくりしました。ちなみに、打楽器の講師は、宅間斉(京都市交響楽団副首席打楽器奏者)と、早坂雅子(打楽器奏者(フリーランス))の2名が務めています。

第3部「Clarinet × Percussion Special Stage」は、クラリネットと打楽器の合同ステージ。左右の反響板を取り外して、ステージはぎっしりです。全員が青ブレザーに着替えて、座って演奏。指揮はクラリネット奏者の児玉知郎(ともお)。龍谷大学吹奏楽部コーチを務めていて、若林義人(音楽監督・常任指揮者)に次ぐポジションです。龍谷大学吹奏楽部のОB・OGバンドである「龍谷シンフォニックバンド」を指揮して、関西吹奏楽コンクールに出場しています(今年は銀賞を受賞)。ちなみに、児玉は龍大出身ではなく、大阪音楽大学の卒業です。背が高く、指揮台がいらないと思うほどです。

プログラム9曲目は、 リード作曲(渡邊一毅編)/アルメニアンダンスパートⅠ。クラリネットは全員での演奏。3列で、E♭クラリネット3人、アルトクラリネット3人、バスクラリネットは5人。コントラバスクラリネットも登場しましたが、部の所有する楽器だったらすごい。打楽器は7人。Gでチューニング。テンポが速め。原曲と変わらない魅力があって、旋律の重なりが分かりやすい。打楽器も活躍しました。

プログラム10曲目は、R.シュトラウス作曲(中村克己編)/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら。同じ編曲を京都黒笛音楽隊第14回クラリネットコンサートで聴きましたが、本公演では打楽器3人が加わりました。ほぼ原曲通りのようで、ティンパニ、シンバル、gr.Ratsche(大ラチェット)、トライアングル、小太鼓などを演奏しました。演奏は音が多すぎて、何がメロディーか分からない部分もありましたが、クラリネット好きにはたまらないアレンジです。375小節(leichtfertig)からは楽しく聴けました。

児玉が手拍子しながら退場してアンコール。アンダーソン作曲/クラリネット・キャンディを演奏。鍵盤楽器も加わって、テンポが速い。16:55に終演。終演後は出演者がロビーに出てきていましたが、関係者が多数来場していたみたいですね。

音大生並みに演奏レベルが高く、部員も多くてすばらしい。クラリネット目当てで行きましたが、パーカッションも楽しめました。なお、YouTubeのオンライン配信はアーカイヴで視聴することができます。演奏曲が字幕で出て凝っています。終演直後は約900回再生でしたが、2週間後の本日時点で5600回も再生されています。なお、9月25日にはYouTubeチャンネルの登録者数が25,000人を突破しました。


烏丸八条交差点から望む 地下通路の看板 ホール入口

(2023.10.1記)

 
スティーヴ・ライヒ/ドラミング 湖国が生んだ打楽器奏者の協演 京都市交響楽団第682回定期演奏会