第32回同志社女子大学音楽学科オペラクラス公演「フィガロの結婚」


2019年2月16日(土)14:00開演
同志社女子大学京田辺キャンパス新島記念講堂

柴愛指揮/同志社女子大学音楽学科管弦楽団
3年次生オペラクラス学生・村の若者男声合唱団、京谷政樹(チェンバロ)
青木耕平(アルマヴィーヴァ伯爵)、井原秀人(フィガロ)、雁木悟(ドン・バルトロ)、谷浩一郎(ドン・バジリオ)、孫勇太(ドン・クルツィオ)、佐藤彰宏(アントニオ)、志茂慧美凛・園田望(アルマヴィーヴァ伯爵夫人)、勝田みき・高橋果歩・山本桃子(スザンナ)、竹内茉莉・若林実沙(ケルビーノ)、佐藤茜・中西花衣(マルチェリーナ)、村上純那(バルバリーナ)

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」(イタリア語上演、字幕付き)

座席:全席自由


同志社女子大学音楽学科オペラクラスが毎年開催している「フィガロの結婚」の公演を聴きに行きました。毎年2月下旬の土曜日に開催されていますが、これまでは仕事や他の演奏会とバッティングして行けませんでした。オペラ全幕を鑑賞するのは、京都市立芸術大学第151回定期演奏会 大学院オペラ公演「カルメン」以来でした。

入場無料で、事前申し込みも不要でした。1988年の第1回公演から無料で開催されています。なお、第1回公演は、まだ駆け出しの頃の佐渡裕が指揮しました。第27回(2014年)からイタリア語で上演されていますが、それまでは日本語で上演されていたようです。

会場は京田辺キャンパス新島記念講堂。興戸駅から徒歩10分で、京田辺キャンパスの奥にあります。約900名が収容可能とのこと(今回は前方の座席を撤去して、オーケストラが演奏する場所を確保したので、少し席数が減ります)。各座席のポケットには讃美歌集と聖書が設置されていて驚きましたが、毎朝ここで礼拝が行われているとのことです。なお、新島記念講堂は、同志社女子大学だけではなく、学校法人同志社の共用施設とのこと。

開場前に100名程度の行列ができていて、開場後はすぐにほぼ満席になりました。毎年同じ演目で行われている公演で、こんなにお客さんが多いとはびっくりしました。開演15分前には後部に設置されているパイプオルガンが演奏されました。

プログラムに掲載された椎名亮輔(音楽学科主任)の挨拶文によると、この公演は音楽学科演奏専攻声楽コースの授業「オペラ」の学習成果発表が基盤になっているとのこと。32年もの長きに渡って、「フィガロの結婚」が教材として使われ続けているのはすごいことです。結婚式のシーンがあるのも女子学生が演じるにふさわしいかもしれません。井原秀人(音楽学科声楽コース責任者)は「毎年上演することで、先輩からの引き継ぎノートをもとに、先輩が後輩に公演の伝統を伝えている」と述べています。

4年次生オペラクラスの学生10名が、途中でメンバー交代しながら、アルマヴィーヴァ伯爵夫人(2名)、スザンナ(3名)、ケルビーノ(2名)、マルチェリーナ(2名)、バルバリーナ(1名)を分担して演じます。今年は例年より4年次生の人数が少ないとのこと。なお、ケルビーノは男性ですが、第2幕で女装するため、通常の上演でも女声(メゾソプラノ)が充てられるとのこと。合唱のうち「村娘」は3年次生オペラクラス学生の13名が担当しました。

また、演奏専攻管弦打楽器コースの学生は、オーケストラ(同志社女子大学音楽学科管弦楽団)で参加しています。プログラムによると、2管編成で2年生から4年生の総勢40名ですが、管楽器と打楽器は前半と後半でメンバーチェンジがあります。その他、舞台監督補佐、大道具、小道具、衣裳照明などの舞台スタッフは、音楽学科学生有志が担当しました。

配役上での最大のネックは男声キャストで、女子大学のため、男子学生がキャスティングできません。そのため、男性キャストは教員や他団体所属の歌手が担当しました。フィガロ役の井原秀人は本学教授。アルマヴィーヴァ伯爵役の青木耕平と、ドン・バジリオ役の谷浩一郎は本学講師。ドン・バルトロ役の雁木悟は関西二期会会員で、神戸山手女子高等学校音楽科教諭。ドン・クルツィオ役の孫勇太と、アントニオ役の佐藤彰宏は関西歌劇団の団員です。また、合唱のうち「村男」も男声8名が出演しました。

開演10分前に、演出・音楽指導を担当した井上敏典(演奏専攻教授)が幕前に出てきてプレトーク。「この歌劇は王侯貴族に対する風刺」と語り、主なキーワードのひとつである「ピン」の役割などについて解説しました(プログラムの演出ノートに詳しく書かれています)。

オーケストラは舞台下に配置されましたが、オーケストラピットのような柵などはありません。チューニングの後、指揮の柴愛が登場。柴は同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻(ヴァイオリン)卒業で、前回(第31回)に続いて2回目の指揮となりました。イスに座って指揮。キビキビとしたタクトで、髪も短いため、後ろ姿だと女性に見えません。

序曲は、オーケストラの人数が少ないため、音量も小さめ。序曲が終わると、第1幕「アルマヴィーヴァ伯爵邸の一室」の幕が開きました。日本語字幕は舞台左右に置かれた縦長のスクリーンに、縦書きで2行映されましたが、舞台の端に置かれてあるので、あまり見やすい位置ではありません。第1曲の二重唱「三尺、四尺、五尺」で、スザンナがフィガロのほっぺにキス。うらやましい(笑)。演技も本格的です。このオペラでは、チェンバロ伴奏の京谷政樹が重要な役割を果たします、レチタティーヴォ(セリフのような部分)ではオーケストラではなく、チェンバロが伴奏を担当します。アリア「あだを討つのは愉快だ」で、バルトロが何かをひざで折って退場しました。登場人物が多いうえに、出入りが激しく、舞台上でかくれんぼもするので、ストーリーの予備知識が必要です。三重唱「なんということだ」では、アルマヴィーヴァ伯爵の低音がよく響きました。村娘と村男が大勢入ってきて、合唱「若い娘たちよ、花をまけ」。続いて、フィガロが有名なアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」 を歌いました。

休みなく続けて第2幕「伯爵夫人ロジーナの部屋」。キャストのメンバーが交代しました。ケルビーノが衣装室に隠れますが、アルマヴィーヴァ伯爵が扉を開けた時にいたのはスザンナでした。第2幕は長く感じました。

20分休憩後、第3幕「邸内の大広間」。スザンナがメイド服でかわいい。アルマヴィーヴァ伯爵夫人がよく通る声で「スザンナはこないかしら」を歌います。舞台右から村娘がいっぱいバラを持ってきて、合唱「奥さま、このばらの花を」。結婚式はが順番に二人に一礼。

10分休憩後、 第4幕「伯爵邸の庭園」。バルバリーナのカヴァティーナ「失くしてしまった」は声がきれい。スザンナはドレス姿。最後はみんなでアルマヴィーヴァ伯爵夫妻を祝って幕。

カーテンコールでは、キャストが登場した後、学生が「井上先生(演出・音楽指導)」「岸井先生(岸井克己衣装)」「大鷲先生(大鷲良一照明)」「青木先生(青木一雄舞台指導)」「京谷先生(チェンバロ)」「スタッフさん(学生スタッフ)」をマイクで呼び出し、ステージへ。全員で、第4幕のフィナーレのAllegro assaiから歌いました(「Corriam tutti」が繰り返されました)。

17:45に終演しました。上演時間は3時間45分でしたが、少し長く感じました。女性の歌手は優劣がありましたが、スザンナ役はよい歌唱でした。
ストーリーのスケールが「カルメン」に比べると小さく、誰も死にません。登場人物が多く、人間関係や細かな設定が複雑です。一回見ただけではストーリーは理解できないでしょう。毎年見に行くほどおもしろいオペラではありませんが、ストーリーを覚えるとまた聴きに行きたくなるかもしれません。

 

(2019.5.6記)


新島記念講堂 



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