クロックタワーコンサート〜京都大学と京都市立芸術大学による交流の午後〜
レクチャー&コンサート「続・オーケストラってなんだ?!〜オーケストラの魅力10倍教えます〜」


   
      
2014年5月11日(日)15:00開演
京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール

指揮・トーク:増井信貴
指揮:橋詰智博
演奏:京都市立芸術大学アカデミーオーケストラ(大学院管弦楽団)

J.S.バッハ/「管弦楽組曲第3番」より「G線上のアリア」
ハイドン/交響曲第9番
ヘンデル/合奏協奏曲集Op.6-12
モーツァルト/交響曲第1番
モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク

座席:全席自由


京都大学と京都市立芸術大学の大学間交流事業として、クロックタワーコンサートが京都大学百周年時計台記念館で開催されました。2011年に開催されたクロックタワーコンサート「オーケストラってなんだ?!」の続編とのこと。演奏は京都市立芸術大学アカデミーオーケストラ。指揮は京都市立芸術大学教授の増井信貴。交流事業と言っても京都大学は会場を貸しているだけで、京都大学関係者は出演しません。入場は無料ですが、当日先着500名まででした。

京大正門前のバス停が最寄りで、正門まで歩きます。京都大学百周年時計台記念館は正門から正面に見える建物です。2003年に改修されて、内部はとてもきれいです。京大ショップや歴史展示室もあり、一般人でも京都大学のファンになりそうです。早く着いたので、百周年記念ホールの横にあるレストラン「ラ・トゥール」でフレンチランチ。日曜日も営業しているなんてすごい。
14:30開場でしたが、13:00頃からすでに入場待ちの行列ができていました。最後尾が建物の外まで続いたので、少し早めて開場。14:30頃に早くも500名の座席が満員になりました。客層は年輩の方が多かったです。無料とは言え、こんなにたくさんの人が集まるとは予想外でした。入場できなかった人が多くおられたようです。

百周年記念ホールはステージの後ろがガラス張りで明るく開放感があります。演奏会だけではなく講演会でも使われているようです。反響板はないので、残響や余韻はあまりありません。京都市立芸術大学アカデミーオーケストラは比較的少人数で、第1ヴァイオリン5、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ5、チェロ4、コントラバス3の編成。ヴァイオリンを指揮台の左右に配置する対向配置でした。

プログラム1曲目は、J.S.バッハ作曲/「管弦楽組曲第3番」より「G線上のアリア」。増井信貴が登場。指揮棒なしで指揮。強弱をつけた演奏でした。演奏後は、増井がマイクでトーク。演奏している京都市立芸術大学アカデミーオーケストラは、大学院生主体ですが、学部の上回生も含まれていると紹介。音楽について「バッハの音楽でも絵画に比べればあまり歴史がないのが特徴」と話しました。また、タイトルの「オーケストラの魅力10倍教えます」は、「当初は100倍とついていたが無理なので、10倍に変えてもらった」と話しました。

プログラム2曲目は、ハイドン作曲/交響曲第9番。めったに演奏されない作品です。交響曲第9番を選んだ理由について、増井は「それまでのハイドンの交響曲は組曲のような作品ばかりだったが、ちゃんと4楽章にして作曲した」と語りましたが、この作品は3つの楽章からなります…?。フルート2、オーボエ2、バスーン1、ホルン2が加わります。増井はチェンバロを弾きながら指揮。上着のポケットからおもむろにメガネを取り出してかけました。演奏後は「昔は指揮者のスコア(総譜)はなく、指揮者はチェンバロの楽譜だけ見て指揮していた」と話しました。また、オーケストラが対向配置で演奏しているのも「当時はこういう並べ方」と解説しました。

プログラム3曲目は、ヘンデル作曲/合奏協奏曲集Op.6-12。12曲ある合奏協奏曲集の最後の曲とのこと。増井はこの曲は指揮棒を使って指揮。ちなみに「タクト」は和製英語で、指揮棒は英語で「バトン」と言うと解説。弦楽器のみでの演奏。大きめの指揮でした。ところどころで第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラがソロを演奏します。2曲目の「Allegro」はスピード感があっていい。ヘンデルはあまり聴いたことがありませんでしたが、興味が出てきました。ちなみに、増井が18歳で初めてオーケストラを指揮した曲がこの作品とのこと。桐朋学園で齋藤秀雄先生にダメ出しされた思い出を語りました。

休憩後のプログラム4曲目は、モーツァルト作曲/交響曲第1番。モーツァルトが8歳で作曲した作品ですが、増井は「モーツァルトがチェンバロで弾いて、父が編曲したと言われている」と解説。この作品のみ橋詰智博が指揮。橋詰は京都市立芸術大学音楽学部指揮科の2年生。指揮科の学生は橋詰の1人だけとのこと。増井は「指揮科のある大学は関西では京都芸大だけ」と説明しました。なお、橋詰はすでに立命館大学経済学部を卒業しています。立命館大学交響楽団で学生指揮者を務めていたようです。
橋詰は指揮棒なしで指揮。あまり手を動かしません。背も高いのでスマートに見えます。技術的にやさしいからかも知れませんが、演奏もよくまとまっていました。反復記号を実行したので長く感じました。この曲を8歳のモーツァルトが作曲したのなら本当に天才ですが、少し無理ではないでしょうか。

プログラム最後の5曲目は、モーツァルト作曲/アイネ・クライネ・ナハトムジーク。まず冒頭を一般的な配置と対向配置で聴きくらべ。第2ヴァイオリンとチェロが移動しました。メロディーの強弱が違って聴こえました。増井が指揮棒を持って指揮。繰り返しなしで、全体的に速めのテンポでした。

17:00に終演。終演予定は16:45頃と書かれていたので、15分ほど延びたようです。増井がよくしゃべったからでしょうか。京都市立芸術大学音楽学部第129回定期演奏会で聴いたときは、こんなによく話す指揮者だとは思いませんでした。ヴィオラは楽器の大きさが違うとか、コントラバスは弦が4本の楽器と5本の楽器があるとか、豆知識が得られました。音楽をあまり知らない方でも楽しめるでしょう。次の企画も楽しみです。
京都市立芸術大学アカデミーオーケストラは演奏精度がいまひとつ。音程やアインザッツが粗い。奏者によって音量も差がありました。チューニングにも結構時間がかかりました。大学院生は自らの演奏技術を高めるために練習しているので、周囲と合わせる意識がそれほど高くないのかもしれません。

(2014.5.12記)


京都大学正門から百周年時計台記念館を望む 京都大学百周年時計台記念館入口 「定員を超えたため、ご入場いただけません。」



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