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2008年7月6日(日)14:00開演 京都コンサートホール大ホール 増井信貴指揮/京都市立芸術大学音楽学部管弦楽団 シューベルト/交響曲第7番(旧第8番)「未完成」(G.エイブラハム版)<日本初演> 座席:全席自由 |
京都市立芸術大学音楽学部管弦楽団の定期演奏会に初めて行きました。京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター平成20年度第1回公開講座「祇園祭り 鶏鉾の囃子」でビラを配布していて目に留まりました。入場料は全席自由で1200円。ちょっと高いですか。注目は、シューベルト作曲「未完成」の第3楽章の演奏。京都新聞にも「幻の第三楽章」演奏について記事が掲載されていました。
京都市立芸術大学音楽学部管弦楽団はクラブ等の課外活動団体ではなく、正課のオーケストラ授業のために編成されたようです。定期演奏会は、正課授業の最終成果発表会のような位置づけでしょうか。パンフレットはメンバーの紹介ページはなく、いたってまじめな内容でした。
13:00に開場。13:10頃にホールに着きました。すでに客席に多くの客が座っていました。客の入りは8割程度。よく入りました。1階席中央の18列23番に座りました。開演に先立って、13:15からホワイエでプレコンサートとプレコンサート。今回が初めての試みとのことです。京都市立芸術大学音楽学部音楽学専攻教授である柿沼敏江の司会で進行。
プレコンサートの1曲目は、ハイドン作曲/オラトリオ「天地創造」から「大いなる偉業が成し遂げられた」をトロンボーン四重奏(ドナルド・ミラー編曲)で演奏。メロディーは聴いたことがありました。2曲目は、スザート作曲/「ルネサンス舞曲集」から3曲(ムーア人の踊り、羊飼いのバスダンス、戦いのパヴァーヌ)。トランペット4、ホルン1、トロンボーン4、テューバ1、打楽器1の編成で演奏されました。アンサンブルの完成度が高く、表情もあります。プレコンサートは、選曲もよく楽しめました。ホワイエで聴くのにはもったいないです。ホールで落ち着いて聴きたいです。客席からわざわざホワイエに移動するのも少し面倒でした。
プレトークで柿沼氏は、「「未完成」の第3楽章は、12年前にも本学が演奏している。今日の演奏会は同じエイブラハム版の新版で演奏します」と解説しました。12年前に演奏されたのは、G.エイブラハム版の旧版(1971年版)でしょうか。
開演。団員が入場。男性よりも圧倒的に女性が多くてびっくり。また、プログラムに掲載されたメンバー表を見ると、弦楽器奏者よりも管楽器・打楽器奏者が多いです。ヴィオラよりもフルートが多いオーケストラなんてなかなかないでしょう。指揮は、京都市立芸術大学音楽学部指揮専攻教授を務める増井信貴。
プログラム1曲目は、シューベルト作曲/交響曲第7番(旧第8番)「未完成」(G.エイブラハム版)。上述した京都新聞の記事によれば、増井信貴が復元譜の一つを所有するイギリスのオックスフォード大学と交渉して楽譜を借り受けたとのこと。G.エイブラハム版での演奏は日本初演です。
注目の第3楽章は、3拍子でテンポが速い。冒頭に現れた主題がユニゾンで何回も繰り返されます。主題は少し陰気な感じです。主題の合間に演奏されるオーボエソロのメロディーが印象に残りました。シューベルトの構想を知ることができるので、資料的には大変貴重でしょう。ただし、美しい第2楽章の後にこの第3楽章を聴きたいかと言われればそうは思いません。第1楽章・第2楽章と第3楽章が同じ交響曲としてくくられることに違和感を覚えるほど、第3楽章の曲想は意外でした。第3楽章は第1楽章・第2楽章の延長線上として捉えるよりも、別の作品と考えたほうがいいかもしれません。
演奏は「未完成」にしては、大人数での演奏でした。弦楽器は弱奏はもっと音量を抑えて、強奏ではもっと量感が欲しいです。期待以上の演奏でしたが、音程、バランス、音色など、いろいろ注文をつけたい部分もありました。小さなミスもいくつかあって残念。
プログラム2曲目は、尾高尚忠作曲/フルート協奏曲(林光補筆完成版)。1948年に作曲された小編成用の「フルート小協奏曲」を、大編成用に改訂した作品とのこと。尾高尚忠は最後の1ページの改訂を残して亡くなったため、弟子の林光が補筆して完成させたとのことです。ピアノとハープが使われるのも面白い。
フルート独奏は中村淳二。京都市立芸術大学音楽学部器楽科に所属する現役学生のようです。気品のある音色でよく通ります。プロとしてもじゅうぶん通用するでしょう。第2楽章は弦楽器のピツィカートに乗せて、フルート独奏がエキゾチックな旋律を歌います。オーケストラは、人数が減って中編成での演奏。第1楽章と第3楽章は速いテンポで爽快感がありました。テンポが遅い作品よりも、スピード感がある作品のほうが得意なようです。
休憩後のプログラム3曲目は、ブラームス作曲/交響曲第4番。各楽器の音色が融合された立派なアンサンブルを聴かせました。濃厚に鳴って、表情も豊か。ちゃんとブラームスの響きがしました。学生オーケストラとしては相当のレベルでしょう。どのパートも平均的に上手でした。ただし、型にはまってしまった感があり、ちょっと堅苦しく感じてしまった部分がありました。演奏にもう少し余裕が感じられればなおいいでしょう。
増井信貴は全身を使ったパワフルな指揮。ただ、拍通りに振らないこともあるので、少し分かりにくいでしょうか。
京都市立芸術大学音楽学部管弦楽団は期待以上の演奏でした。芸大生だけあって基礎力はしっかりしています。奏者の周りに合わせる意識や能力はすごく高いです。その反面、少し一本調子で、面白みに欠ける部分もありました。技術力に加えて、表現力も増してくれればすばらしいですね。さらなるレベルアップに期待したいです。細かいことですが、演奏中に奏者が譜面をめくる音が少し大きいのが気になりました。
なお、京都市立芸術大学音楽学部では「響/都プロジェクト 京芸ルネッサンス2008・コンサートシリーズ」が進行中です。学内外でいろいろな取り組みが行われます。定期演奏会以外は入場料無料なので、機会があれば聴きに行きたいと思います。
(2008.7.8記)