京都市交響楽団スプリング・コンサート


   
      
<京都市交響楽団練習風景公開>

2013年4月6日(土)10:30開演
京都市交響楽団練習場

広上淳一指揮/京都市交響楽団

ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
アンダーソン/プリンク・プレンク・プランク

座席:自由


<京都市交響楽団スプリング・コンサート>

2013年4月7日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
ゲスト:KAN(シンガーソングライター)

キリギリス(作詞・作曲:KAN)
愛は勝つ(作詞・作曲:KAN)
オー・ルヴォワール・パリ(作詞・作曲:KAN)
世界でいちばん好きな人(作詞・作曲:KAN)
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」

座席:1階 13列16番


京都市交響楽団の2013年度自主公演は、すっかりおなじみとなった「スプリング・コンサート」からスタートです。広上淳一は常任指揮者6年目のシーズンを迎えました。今年のスプリング・コンサートは、前半と後半の2部構成。前半ではゲストとしてシンガーソングライターのKANとの共演という一風変わったプログラムです。KANの曲は「愛は勝つ」しか知りませんが、興味本位で聴きに行きました。チケットは全席完売。



<京都市交響楽団練習風景公開> 2013年4月6日(土)

本番前日に京都市交響楽団練習場で、毎月定例の「練習風景公開」が行なわれました。往復ハガキで申し込んだところ、めでたく参加票のハガキが届きました。いつものように2階のギャラリーから聴きます。10時頃に着きましたが、もう10人ほど来られていました。10:30開始なのに早いですね。団員も早くも音出しを始めていました。
10:30になって音が鳴り止み、コンサートマスターの泉原隆志が立ち上がってチューニング。広上淳一がコンサートマスターと握手して指揮台に登場。「おはようございます」と挨拶しました。広上は緑色の半袖Tシャツで、背中には白字で「京響」と縦書きされていました。このTシャツは3年前の京都市交響楽団練習風景公開でも着ていました。指揮台に置いてあったイスを降ろして、立って指揮しました。メガネをかけていました。

ベートーヴェン作曲/交響曲第5番「運命」を楽章順に練習しました。広上にとっても京響にとっても何度も演奏している曲だからか、ほとんど途中で止めることなく、楽章単位で通して練習しました。また、各楽器への指示は指揮しながら大きな声で指示しました。反復記号はすべてスコア通り演奏しました。
第1楽章では広上淳一は「うん」といううなり声で拍を刻んでしっかりテンポをキープしました。広上の少しの動きでオーケストラは反応して、阿吽の呼吸を感じました。通し終わると「たくましい音、ブラーボ」とコメント。ホルンに対して「最初の二分音符(60小節)は焦らないようなメンタリティーを持って、杭を打たれるようでいい。微妙にstayするといい」と話しました。
続けて第2楽章。94小節付近のクレシェンドでヴァイオリンに向かって「のってきます、のってきます」と盛り上げました。「ここで3拍目、4拍目を感じてるとダメなんですよ」と話し、しばらくして「ダメってことはないか」と訂正。通し終わると「とてもいいと思います」とコメント。「高級なリクエスト」と断ったうえで、235小節からのヴィオラ、チェロ、コントラバスについて「エネルギー」と「入る瞬間」という言葉を使って表情を統一するように指示しました。「いずちゃん」とコンサートマスターの泉原に向かって、「179小節のブリッジはどうやったらイメージできるか考えて。きれいだけど薄い。シュークリーム買ったらクリーム入ってなかった」とコメント。広上は譜面台の横に置かれたピアニカで当該箇所を演奏しました。
続いて第3楽章。141小節からのTrioは、広上が指揮台の上で踊りました。後半のヴァイオリンのピツィカートに「遅くならないほうがいいですよ」とコメント。324小節からのティンパニに「ここおもしろい」「ここもおもしろい」と話しました。リズム音型が3種類あることを意識させたかったようです。そのまま第4楽章へ行ったところで、一度止めて第3楽章を戻って練習。228小節のクラリネットとファゴットに「2個目(229小節)のほうを1個目(228小節)よりも長くならないほうがいい。ちょっとだけ短く」。また、161小節からのコントラバスに対して「(同じ音型が)3回あるけど、リズム崩れないように」とコメント。182小節から繰り返して練習。ラストのティンパニがやはり気になるようで、何回か練習しましたが「ごめん、こだわりすぎかな」と話して、最後は断念したようです。
第4楽章へ。広上は途中でメガネを外して、アーティキュレーションを一緒に歌いながら指揮しました。指示は大声で叫びました。演奏後は、419小節の管楽器の入るタイミングについてコメントしました。

これで午前中の練習は終わりかと思いましたが、思い出したように「アンコールやりましょう」と話して、アンコール(アンダーソン作曲/プリンク・プレンク・プランク)を練習。弦楽器のみの演奏で、ピツィカートで演奏されます。コントラバスが弦を弾いてバチっという音を出したり、楽器を一回転させたり見た目にも楽しい。また表板を擦る奏法もありました。広上も楽しんでいて「小道具用意しといてください」と泉原に頼んでいました。一度通しただけで「すばらしい。どうもありがとうございます」と話し、11:25に休憩に入りました。

広上の練習は、音符単位で指示することが多く、ずいぶん要求が細かくなってきました。微妙な調整で、表情作りを進めました。また、この季節に半袖を着ているのがうなづけるほど、指揮台の上をよく動きました。なお、某首席奏者が体調不良で遅刻しました。しばらくの間、第2奏者が首席の席に座って演奏しました。休憩後に広上に詫びていました。気温の変化が激しい季節ですが、身体が資本の職業は大変ですね。



<京都市交響楽団スプリング・コンサート> 2013年4月7日(日)

特別演奏会ですが、13:45からプレトークが行われるとロビーに掲示されていました。京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響?」によると、KANの強い希望で急遽行なわれたとのことです。早めにホールに着いておいてよかったです。
KANと広上淳一が登場。まず、広上がスプリング・コンサートについて「老若男女に楽しんでいただくコンサート」と紹介しました。KANが燕尾服を着ていたので、広上が「燕尾ですごいですね」と話すと、KANは「端はボロボロです」と答えました。今日演奏する曲の編曲はKANがやっているとのことですが、KANは「オーケストラのこと分からないまま書いてる。広上先生とオーケストラのみなさんに助けていただいた」と話しました。広上は「先生」と呼ばれるのに違和感があるとのことでしたが、KANは「「先生」と呼んでほしい」と話しました。広上が「KANというのは本名ですか」と聞くと、KANは「木村和が本名です。和と書いてカンと読みます。なんでかは分からない。父が酔っ払ってたか、ふざけたか」と話しましたが、広上は「平和という意味が込められているのでしょう」とコメント。逆にKANが「広上さんはヒロカミさんですか、ヒロガミさんですか」と聞くと、広上は「戸籍上はヒロカミだが、ヒロガミと呼ばれても自分で訂正しなくなった」と話しました。KANは「きゃりーぱみゅぱみゅが心から好き」とのこと。広上は「Berryz工房が好き」とのことですが、KANは「Berryz工房よりも℃-uteが好き」とのこと。広上は高崎のヤマダ電機でBerryz工房のイベントに行ったが、おじさんが大盛り上がりで日本の将来が心配になったとのこと。最後に、KANが「これまでにKANのコンサートに来たことがある人」と聞くと、1/3くらいの客から手が挙がりました。「だいたい分かりました」と話して、プレトークは終了しました。年齢層は意外に幅広く、私のように京響の演奏を聴きに来た人もいたようです。

前半は「KAN&京響のステージ」。プログラムには「シンガーソングライターKANをゲストに迎え、KANのヒット曲をKAN自身の編曲でお贈りする、KAN&京響のコラボレーションののステージ」と書かれているだけで、曲目は挙げられていません。
ステージにはピアノが置かれていて、その右横にピアノと直角の角度で指揮台が置かれていました。ステージの左右にはスピーカーが置かれていて、ピアノの下にはKAN用のスピーカー(PA)もありました。また、マイクスタンドが立てられていて、オーケストラの音もマイクで拾っていました。さらに、1階席の中央には客席数列を使ってミキサーが置かれていて、音響を調整するスタッフがいました。
KANと広上淳一が登場。なんと2人も背中に白い「天使の羽根」を付けていました。KANは付けることがあるのかもしれませんが、広上も付けていたので場内が少しざわつきました。
1曲目はキリギリス。KANはピアノを弾きながらマイクで歌います。演奏中はメガネをかけます。アルバムに収録されているのもオーケストラが伴奏しているようで、今回の演奏もそれをベースにしていたようです。ステージ右奥のドラムセットが大きくて、弦楽器が聴こえなくて残念。
KANのMC。MCのときはメガネを外すのが律儀です。「すごいうれしいです」とコメント。ステージ右の最後列で演奏しているバンド(ドラムス、ベース、ギター)のメンバー紹介。
2曲目は愛は勝つ。MCで「史上もっとも壮大なスケールで演奏します」と紹介。ひさびさに聴きましたが、やはり名曲ですね。広上淳一も指揮台の上でジャンプ。ノリノリで楽しそう。
3曲目は「シャンソンを1曲」ということで、オー・ルヴォワール・パリ。「この曲はハンドマイクで歌いたい。実際ピアノを弾きながら歌うのは難しい」ということで、この曲はピアノ奏者(矢代さん)が演奏。また「オーケストラが盛り上がって拍手したくなるけど、まだ歌がありますので、私がお辞儀してから拍手してください。よかったら「先生」と叫んでください」とコメント。立って歌いました。歌詞は日本語。オーケストラは徐々に盛り上がりました。広上も曲線的な指揮。
KANは「願ってもない機会です」と感無量の様子でした。「最後の曲」ということで、4曲目の世界でいちばん好きな人を紹介。4曲だけだったのが意外でしたが、「アレンジするのに大変」とのこと。広上も「今のこの世の中にこの歌沁みますよね」とコメント。バラードで、歌詞に「戦争」と「平和」が出てきます。
前半は4曲で終了。40分で終わったので、短かったです。もっと聴けましたね。知っている曲が少なくて残念でしたが、知っている人にはとても印象深く残ったことでしょう。

後半は、ベートーヴェン作曲/交響曲第5番「運命」。前日のリハーサルのほうがいい出来でした。やはり本番は緊張するのでしょうか。第1楽章は速めのテンポでしたが、有名な「運命の動機」の縦線に結構ばらつきがありました。テンポが一定でない箇所もあり、京響ならもっとやれるはずなのに残念。この曲は細かなズレが目立って聴こえますね。全体的にティンパニがよく効いていました。第4楽章はエンジンがかかって、盛り上がりました。弦楽器も力いっぱい弾きました。

アンコールは、アンダーソン作曲/プリンク・プレンク・プランク。広上は指揮台を降りて身体を左右に揺らしました。また、すーっという表板を擦れる音を楽器まで近づいて聴きました。最後はppからクレシェンドして終了。前日のリハーサルではなかったので、本番午前中のゲネプロで表情がつけられてようです。

(2013.4.14記)




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