NHK交響楽団京都公演


   
      
2009年10月31日(土)16:00開演
京都コンサートホール大ホール

アンドレ・プレヴィン指揮/NHK交響楽団

モーツァルト/交響曲第38番「プラハ」
モーツァルト/交響曲第39番
モーツァルト/交響曲第40番

座席:S席 3階C‐1列19番


NHK交響楽団首席客演指揮者にアンドレ・プレヴィンが就任しました。任期は2009年9月からの3年間です。音楽監督が空席のNHK交響楽団ですが、80歳のアンドレ・プレヴィンを迎えるとは意外でした。就任間もないタイミングで京都公演を行なってくれました。どうやらプレヴィンの希望で京都公演が実現したようで、2月に発表された就任時のプレヴィンのコメントでも「京都など他の都市でも演奏したい」と語っていました。本当にうれしい。
演奏曲目は、第1657回定期公演(10月27日、28日 サントリーホール)と同一プログラムで、モーツァルトの交響曲3曲です。チケットは当日券なしの全席完売。

アンドレ・プレヴィンは、足腰が悪いのか猫背でヨボヨボと登場しました。足取りが小幅でかなり弱々しい。白髪で、少しおなかが出ています。指揮台の上に置かれた黒いイスに座って指揮しました。指揮台の後ろには、柵がついていました。演奏が終わると、第2ヴァイオリン奏者に片手を持ってもらって、イスを立って、ゆっくりと指揮台を降りました。
しかし、演奏が始まると指揮棒の動きはスムーズ。指揮するうえでは体力的な問題はまったく感じませんでした。がんばってほしい楽器に、指揮棒を機敏に向けます。聴かせどころがよく分かりました。
モーツァルトの模範的な演奏と言えるでしょう。プラスアルファがあるわけではありませんが、理想的なモーツァルト演奏で、非の打ちどころがありません。ホールの音響にもよくなじみました。しびれるような感動は多くありませんでしたが、心地よくなる演奏でした。軽く繊細に演奏して、大きな音量は要求しません。全体を調和させて、何かが突出しないように調整しているようでした。強奏でも穏やかな表情ですが、ホルンを強調することが多いです。音楽は決して老けておらず、80歳が指揮していると思えないほどです。むしろ初々しささえ感じました。反復記号はスコア通り行なうことが多かったですが、行なわない部分もありました。楽章間ではあまり間を空けずに演奏しました。

NHK交響楽団の演奏もすばらしい。弦楽器は、第1ヴァイオリン10、第2ヴァイオリン10、ヴィオラ4、チェロ6、コントラバス2という中編成での演奏。弱奏でも細かな音符が安定していて、安心して聴けました。本当に乱れません。やっぱりうまいですね。演奏レベルの高さに驚きました。京都市交響楽団よりも最近がんばっていますが、NHK交響楽団はさらに上でしょう。一生懸命力いっぱい演奏している感じではなく、むしろ力を抜いて演奏しました。かと言って無表情ではなく、主体性を持って演奏しました。木管楽器の音色は気品があってすばらしい。ただし、後述するように、休憩後の第40番はレベルが落ちました。

プログラム1曲目の交響曲第38番「プラハ」は、3楽章構成。第1楽章の前半に長いアダージョがありますが、ゆっくりしたテンポで演奏しました。プレヴィンの「スーッ」という息を吐く音が聴こえました。188小節の八分音符はデクレシェンドして収めました。

プログラム2曲目の交響曲第39番はオーボエがいないのでクラリネットでチューニング。第1楽章はメロディーが優雅に流れます。ティンパニは硬い音質で歯切れがいい。演奏にいいアクセントを与えています。第2楽章は木管楽器のスタッカートの音色が最高。第3楽章は生誕250年記念(2006年)モーツァルト・ツィクルスNr.8で聴いたときはヴァイオリンがセカセカしてゴツゴツした印象を受けましたが、音量を落として力を抜いて演奏しました。

休憩後のプログラム3曲目交響曲第40番は、「クラリネットを使用しない版で演奏する」との掲示がロビーに貼ってありました。第39番ではクラリネットが使われているので奏者の手配はできたのになぜ第40番であえてクラリネットを外したのか不思議です。全体の音色からしてもやはりクラリネットがあったほうがいいですね。また、休憩前の2曲よりも完成度が落ちて、音程や縦の乱れがたまに気になりました。音色のブレンドもいまひとつ。
第1楽章はゆっくりしたテンポ。ヴァイオリンのメロディーは力を入れません。ヴィオラの八分音符もがんばらないので軽く聴こえる程度です。第2楽章はやや速いテンポ。fは弦楽器が力強いボウイング。第3楽章はTrioでホルンが盛り上がります。第4楽章は遅めのテンポ。

プレヴィンとモーツァルトがこんなによくあうとは思いませんでした。N響ともいいコンビネーションでした。他のモーツァルトの作品もぜひ聴きたいです。
NHK交響楽団は、アンドレ・プレヴィンを起用して大正解でしょう。首席客演指揮者として1ヶ月間指揮するだけでなく、もっとN響に積極的に関わって欲しいです。

(2009.11.2記)


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