生誕250年記念(2006年)モーツァルト・ツィクルスNr.8


2005年9月23日(祝・金)14:00開演
京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ

大友直人指揮/京都市交響楽団
小谷口直子(クラリネット)

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト/クラリネット協奏曲
モーツァルト/「劇場支配人」序曲
モーツァルト/交響曲第39番

座席:9列20番


2006年に生誕250年を迎えるモーツァルト連続演奏会の8回目です。京都コンサートホールアンサンブルホールムラタで去年から行なわれています。だいぶ気が早い企画です。今回はこのツィクルスの監修を務める大友直人が指揮する演奏会です。大友直人は京都市交響楽団の第11代常任指揮者で同団アーティスティック・アドヴァイザーも務めています。京都市交響楽団の演奏会は今まで何度か聴きましたが、大友の指揮で聴くのは今回が初めてでした。

京都コンサートホールで演奏会を聴くのも半年ぶりでしたが、知らないうちにホールに進むスロープに、京都コンサートホールで演奏した音楽家のサイン入りパネルがずらっと掲示されていました(小澤征爾、朝比奈隆、フルネ、ベルティーニ、バルシャイ、ゲルギエフ、レヴァイン、キーシンなど多数)。これはなかなかおもしろい。今までどこかに保存していたのでしょうか。アンサンブルホールムラタは500席ほどですが、ほぼ満席。

プログラム1曲目は、歌劇「フィガロの結婚」序曲。オーケストラは40名程度の編成で、クラリネットとファゴットが最後列。大友が笑顔で登場。意外に背が高かったです。少し速めのテンポでキビキビと演奏。大友は全曲指揮棒なしで指揮しました。
演奏終了後に大友がマイクを持って指揮台の上から挨拶。かつてNHK−FMで放送されていた「クラシック・リクエスト」を思い出しました。今日の演奏会はモーツァルトが30代以降に作曲した作品を集めたとのこと。

プログラム2曲目は、クラリネット協奏曲。クラリネット独奏は京都市交響楽団クラリネット奏者の小谷口直子。京都市交響楽団に入団して3年目とのこと。最近ヤマハの雑誌広告などでよく見かけます。うすい黄色のドレスで登場。小谷口のクラリネットは内にこもった音色でした。オーケストラに溶け込みやすく、それほど音量も大きくありません。リードが厚そうで、スタッカートやアタックもソフトな感触。あまり若々しさは感じませんでした。屈伸しながら演奏。オーケストラは響きがやや重く感じられたのが残念。演奏終了後に、大友と小谷口が対談インタビュー。大友は「すばらしい演奏」と小谷口を絶賛。小谷口はかわいらしい声でテレていました。大友がどんな楽器を使っているのか質問したところ、小谷口は「ないしょです」と即答。「ちょっとドイツ風」などと答えていましたが、あまり話題にしたくないようです。オーケストラの中で演奏するのと独奏者として演奏するのは違いますかという質問には、「後ろで吹くよりも前のほうが気分的にすごく楽」とのこと。この作品については、コンクールやオーディションなどの戦いの場ではなく、初めて楽しく吹けましたとコメントしました。カーテンコールでも申し訳なさそうに出入りしていたのが印象的でした。これからファンが増えるでしょう。

休憩後のプログラム3曲目は、「劇場支配人」序曲。大友の解説では、オペラではなく演劇のために作曲されたため、今では日常的に演奏されることはないが、よくできた序曲であるとのこと。

プログラム4曲目は、交響曲第39番。クラリネットが活躍する作品でオーボエがないのが特徴と解説。大友は左手のこぶしを突き上げてオーケストラをよく鳴らしていました。自然に流した演奏でしたが、残念なのはヴァイオリンの音程が悪いこと。また、このホールが室内楽用に設計されているせいか、残響による間接音が少なくデッドな響きがするのがもったいない。

演奏終了後は拍手に応えてアンコール。「しつこいかもしれませんが有名なので」ということで、交響曲第39番第3楽章をもう一度演奏。

大友直人は、オーソドックスな演奏解釈でした。イギリス音楽を得意としているので、今度は大編成の作品で演奏を聴いてみたいと思います。また、「京響こどものためのコンサート」などクラシック音楽ファンを増やす企画を実施しているのも好感が持てます。このツィクルスも大ホールではなく、あえて小ホールで行なっているのも、オーケストラを身近に見て欲しいという思いがあるからのように感じました。今後の活躍に期待です。

(2005.9.24記)




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