第20回立命館大学ローム記念館コンサート Piano Recital「世界に羽ばたくピアニスト」


   
      
2008年7月11日(金)18:30開演
立命館大学ローム記念館大会議室

森麻衣子(ピアノ)

J.S.バッハ/ファンタジアハ短調
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
アイアランド/ロンドン小曲集
ショパン/スケルツォ第2番
ショパン/ノクターン第18番
ショパン/ワルツ第2番「華麗なる円舞曲」
プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第7番「戦争ソナタ」

座席:全席自由


立命館大学びわこ・くさつキャンパス内にあるローム記念館は、ローム株式会社の寄付で1999年4月に建設されました。研究室や実験室が入っていますが、5階の大会議室で2003年からクラシックコンサートが年に数回開かれています。都合がついたので、初めて行きました。
20回目の今回は、森麻衣子のピアノリサイタル。森は立命館大学慶祥高校出身で、その後イギリスの王立音楽大学を首席で卒業しています。
入場には事前に予約が必要です。ホームページから予約申し込みをして、入場料(1,500円)を当日受付で支払いました。コンサート会場の大会議室はもともと国際会議ができる施設として作られましたが、机や座席が階段状になっていて容積が大きいため、音楽を聴く場としても活用されはじめたようです。ステージが4階にあって、扇形に机と座席が設置されています。議長席のない議場と表現すればイメージしやすいでしょうか。聴衆はステージの演奏者を見下ろす形で鑑賞しますが、演奏者にとっては少し圧迫感があるかもしれません。223席ありますが、客の入りは8割程度。立命館大学の学生は無料ということもあるでしょうが、立地条件を考えればよく入りました。

ボランティアスタッフによってコンサートが運営されているようで、学生が受付対応や開演前のアナウンスを行なっていました。森麻衣子がグレーのドレスで登場。全曲楽譜なしで演奏しました。
プログラム1曲目は、J.S.バッハ作曲/ファンタジアハ短調。はっきりしたタッチで弾かれますが、会場の問題もあるかもしれませんがもっと残響が聴きたいです。
プログラム2曲目は、ベートーヴェン作曲/ピアノ・ソナタ第23番「熱情」。トリルが一定でないなど少し技術的な弱さがありました。表現としても、速く弾こうとするので、もう少し遅いテンポで弾いてもいいです。また、強弱の対比をもっと大胆につけて欲しいです。特に強奏はもっと響いて欲しいです。第2楽章は音色が硬い。もっとやわらかい響きが聴きたいです。第3楽章は線が細い。
プログラム3曲目は、アイアランド作曲/ロンドン小曲集。わずか3曲(「チェルシー・リーチ」「浮浪児」「昼前のソーホー」)ですが、今回の演奏会の中で一番楽しめました。イギリス音楽にしては和音の使い方が斬新で、ドビュッシーのように響く部分がありました。面白い作品です。イギリスを中心に活動する森が得意とする作品のようで、ピアノがよく響き、いきいきとした多彩な表情を聴かせました。

休憩後はまずショパンを3曲。スケルツォ第2番ノクターン第18番ワルツ第2番「華麗なる円舞曲」を演奏。スケルツォ第2番は、連符が少し危なっかしい。細かい音符が苦手なのでしょうか。ノクターン第18番とワルツ第2番「華麗なる円舞曲」は、もっとやわらかい音色が聴きたいです。
プログラム最後の曲は、プロコフィエフ作曲/ピアノ・ソナタ第7番「戦争ソナタ」。不協和音が鮮やかに響きました。第1楽章第1主題がリズミカル。第3楽章の7/8拍子はノッて演奏しました。

拍手に応えてアンコール。アンコール1曲目はリスト作曲/愛の夢。アンコール2曲目はラフマニノフ作曲/前奏曲 作品23-5。ラフマニノフのようなリズミカルな曲がうまいです。最後に、立命館理事長の長田豊臣氏から花束が贈呈されました。

森麻衣子は、情熱的な作品が好きなのか、そういう選曲でした。全体的に速く弾きたがる傾向があるようで、ミスタッチもいくつかありました。あわてずに、もっとゆっくり歌って欲しいです。また、緩徐楽章などゆっくりしたテンポでは、聴かせ方に工夫が必要でしょう。少し一本調子に聴こえました。あとせっかくなので話が聞きたかったですね。

立命館大学ローム記念館は、残響が少なく直接音が多く聴こえます。もともと音楽ホールとして作られた施設ではないので仕方ないですが、ピアノ独奏曲を聴くにしてももう少し広いホールで聴きたいです。

(2008.7.13記)


立命館大学ローム記念館 看板



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