東京都交響楽団京都公演


   
      
2003年11月8日(土)17:00開演
京都コンサートホール大ホール

ガリー・ベルティーニ指揮/東京都交響楽団
河野克典(バリトン)

マーラー/歌曲集「さすらう若人の歌」
マーラー/交響曲第1番「巨人」

座席:A席 1階 29列17番


東京都交響楽団が第4代音楽監督のガリー・ベルティーニとともに京都にやってきてくれました。演奏会とCDでマーラーシリーズを進行中のコンビがマーラーを聴かせてくれるということで、期待を持って聴きました。客の入りは7割程度でした。

プログラム1曲目は、歌曲集「さすらう若人の歌」。バリトン独唱の河野克典が楽譜を持って登場。ベルティーニは上下黒で統一していました。ベルティーニはしばらく間をおいて、思いを込めてからタクトを構えました。
演奏は独唱もオーケストラも不完全燃焼で中途半端に感じました。オーケストラは大編成でしたがあまり鳴らさないためか、人数の割には響きの薄さが気になりました。マーラーらしさを感じさせることもなく、平板な演奏になってしまったのが惜しまれます。ベルティーニは柔らかい指揮法で作品を作っていましたが、若人らしい活力を聞き取ることもできませんでした。河野の独唱も「ぼくの胸には灼熱の刃が」は激しい口調で歌っていましたが、独唱がオーケストラに埋もれがちでした。もっと大きな声量で歌って欲しいです。
声楽曲を演奏会で聴いたのは今回が初めてでしたが、ホールの音響や座席によって印象が異なるように感じました。演奏者が意図したバランスで演奏を聴きたいのであれば、やはりCDにはかないませんね。

休憩後のプログラム2曲目は、交響曲第1番「巨人」(作曲の経緯からすれば「巨人」という標題を付けるべきではないと考えていますが、ここではプログラム記載通りとします)。残念ながら期待外れの演奏でした。各パートとも繊細に演奏しているのですが、全体像が見えにくい演奏でした。ヴァイオリンやトランペット、ホルンなどオーケストラの左半分に配置されている楽器は一生懸命演奏していてよく聞こえてくるのですが、右半分の低弦の音が飛んでこないのでバランスの悪さが気になりました。ヴァイオリン主体でやや高音偏重の演奏になってしまったように感じます。また、金管楽器が加わると表情豊かになりますが、弦楽器だけのサウンドがいまひとつ貧弱で平凡に感じました。金管楽器もたまに音を外すのが惜しい。ベルティーニはソロの入りを明確に指示するなど全身を使って指揮していました。
第1楽章は、弦楽器はよくそろっていましたが、ホルンにかき消されるなど少しボリューム感に欠けました。352小節で金管が一気に爆発しテンポが速くなると、演奏に流れが出てきました。
第2楽章は、管楽器の細部が強調されて華やかな演奏。ホルンのゲシュトップ奏法も冴え渡りました。
第3楽章冒頭のコントラバスソロの音程が不安定。テンポキープが甘く、八分音符でテンポが前に行ってしまうのが気になりました。全体的に弱奏では危なっかしい部分がありました。139小節からの中間部の舞曲はかなり速いテンポで演奏。ここはもう少し遅いほうが好きなのですが。
第4楽章は、弦楽器があまり聞こえないので、全体的な盛り上がりに欠けました。スコア指定通りホルン奏者が起立しましたが、音量的にあまり変化が見られなかったのはホールの影響でしょうか?
演奏終了後、ベルティーニが数回ステージに呼び出されました。アンコールはありませんでした。

ガリー・ベルティーニは、マーラーのスペシャリストですが、残念ながら今回の演奏ではどういうマーラーを作りたいのかがよく分かりませんでした。さらに完成度の高い演奏を求めたいです。

東京都交響楽団の演奏を聴いたのは、今年7月のプロムナードコンサートNo.305以来でしたが、そのときのレーガーとストラヴィンスキーに比べると、いささか生気に欠ける演奏になりました。金管楽器のアンサンブルはすばらしいと思いましたが、弱音での技術力と表現力が課題と言えます。

ちなみに、この演奏会はライヴ収録されたようです。CD化されたらぜひ聴いてみたいです。

(2003.11.11記)


京都コンサートホール



ベルリン・ドイツ交響楽団来日公演 日本フィルハーモニー交響楽団第193回横浜定期演奏会