ベルリン・ドイツ交響楽団来日公演


   
      
2003年11月3日(祝・月)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

ケント・ナガノ指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団
ヴィヴィアン・ハグナー(ヴァイオリン)

〔プログラムA〕
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲
R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

座席:A席 2階 AA列46番


ベルリン・ドイツ交響楽団が首席指揮者・芸術監督のケント・ナガノとともに来日です。1999年に続いての来日公演となりました。プログラムを1000円で購入。ホールに入ろうとしましたが、まだリハーサル中。開場は結局開演30分前になりました。この大阪公演が日本での最後の公演でしたが、入念なリハーサルを行っているようでした。客の入りは7割程度でした。チケット代が少し高かったので、入りが悪かったのかもしれません。

プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、ヴィヴィアン・ハグナー。深緑色のドレスで登場しました。ナガノは長髪で長身でした。オーケストラの演奏は、全体として方向性が統一されていました。必要以上に鳴らさないため、予想していたよりも軽く明るい潤いのある響きで、表情豊かに演奏していました。とても整理されたバランスよい聴きやすい演奏でした。弦楽器を中心にした曲作りでしたが、低弦はもっと鳴ってもよいと思いました。第1ヴァイオリンの音色が美しく聴けました。木管楽器の澄んだ音色も印象的。ナガノは、拍通りに振らず、細かくタクトを動かしていました。
ハグナーのヴァイオリン独奏は、やや線が細い印象を与えましたが、品のよい格調のある演奏を聴かせました。オーケストラと音色がよく溶け合っていて一体感のある演奏でしたが、見方によっては独奏者としての存在感がやや薄いと感じる向きもあるかも知れません。
第1楽章のカデンツァは、美しい音色を聴かせました。
第2楽章は、オーケストラはかなり弱音で演奏。高度な技術を要求されると思いますが、難なく演奏していました。木管楽器の美しいブレンドもさすがドイツのオーケストラと思わせました。
つづく第3楽章になると、ハグナーもオーケストラもノッてきました。オーケストラの伴奏は最後まで安定していて、安心して聴くことができました。私はこのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をあまり得意にしていなかったのですが、この演奏は作品の再評価させる名演でした。
演奏終了後、ハグナーがアンコール。エルンスト作曲/無伴奏ヴァイオリンの6つの練習曲よりシューベルトの「魔王」による大奇想曲。つまり、「魔王」のヴァイオリン編曲版です。技術的にかなりの難曲でした。原曲に比べると一人で二役をこなさないといけないので、多彩な表現力を要求する作品です。ハグナーは健闘していましたが、主旋律が埋もれたりするなど少し苦しい部分もありました。しかし、この作品を紹介してくれたことに感謝したいです。
ヴィヴィアン・ハグナーは、技術的にはまだ不安定な部分もありましたが、作品に対するアプローチはとても気に入りました。今後の活躍に期待しましょう。

休憩後のプログラム2曲目は、R.シュトラウス作曲/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。まさに大編成のオーケストラで演奏されました。速めのテンポで意外にあっさりした演奏でした。
「序奏」は、金管がパワー全開。ベルリンフィルにも匹敵するようなすばらしい鳴りでした。特にトランペットがすばらしい。ラストのオルガンの伸ばしもあっさり切り上げて次の曲へ。
「背後の世界の人々について」と「大いなる憧れについて」は、弦楽器のいきいきとしたアンサンブルがすばらしい。
「歓喜と情熱について」のホルンはそれほど大きな音量では演奏されず、速めのテンポでまさに荒野を突き進むような印象を受けました。
「埋葬の歌」は、興奮さめやらぬ感じでしたので、もう少し音量を落としてもよいと思いました。
「科学について」は、低弦にもう少し張りと存在感が欲しいです。
「病から回復へ向かう者」は、金管の強奏が華やか。
「舞踏の歌」は、管楽器ソロ、特にトランペットとクラリネットがすばらしい。ヴァイオリンソロも完璧。終盤は盛り上がりを見せ、厚みのある演奏を聴かせました。
「夢遊病者の歌」は、ニーチェが浮かび上がるかのような演奏。強奏に打ちのめされました。ラストの弱奏も手を抜くことなく演奏しました。非常に完成度の高い演奏で、CDにしてもう一度聴いてみたい名演でした。

演奏終了後、拍手に応えてアンコール。ナガノが日本語で「どうもありがとうございます」とあいさつ。「ベートーヴェン エグモント」と紹介し、ベートーヴェン作曲/エグモント序曲が演奏されました。管楽器は人数を減らして演奏していましたが、弦楽器は奏者全員が演奏していました。こんな弦が多い演奏はなかなか聴けないでしょう。アンコール曲とは思えないほど丁寧な演奏で、楽団員のスタミナには驚かされました。

ベルリン・ドイツ交響楽団は、極めて演奏水準が高いオーケストラででした。どの楽器も優れた演奏技術でしたが、一つの楽器が浮いて聞こえることもなく、非常にバランスの取れた演奏を聴かせました。強いて欲を言うと、低弦が少し物足りない印象を受けました。これは私にドイツのオーケストラに対する先入観があるからかもしれません。次回の来日にもおおいに期待したいです。

ケント・ナガノは、このオーケストラを手中に収めており、大変息のあった演奏を聴かせました。ベルリン・ドイツ交響楽団とは、2006年まで契約を延長したということで、ますます磨かれた演奏を聴くことができそうです。しかし、ナガノらしい演奏の特徴をもう少し明確に聴いてみたいと感じました。ナガノの個性をさらに前面に出して演奏作りをして欲しいです。

(2003.11.8記)


ザ・シンフォニーホール



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