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2003年9月23日(祝・火)15:00開演 ザ・シンフォニーホール 岩城宏之指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢 ベートーヴェン/交響曲第7番 座席:A席 1階J列33番 |
CDリリースなど精力的に活動しているオーケストラ・アンサンブル金沢が、音楽監督の岩城宏之とともに大阪にやってきました。チケットは全席完売で、立ち見も出ていました。座席は1階席通路のすぐ後ろの席でした。オーケストラや指揮者はよく見えましたが、音響的にはステージに近すぎまる気がしました。
オーケストラは40名程度で、外国人も多く含まれていました。指揮者の岩城宏之がゆっくりとステージに登場。人柄の良さそうな指揮者でした。
プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲「交響曲第7番」。この作品は、京都市交響楽団定期演奏会でも聴きました。人数が少なくても中身の詰まった音色で十分まとまった演奏を聴かせました。弦楽器は厚みがあってサウンドの中核を担っていました。木管楽器は音程が怪しく、特にフルートは音を外すなど不調でした。岩城の指揮は振りは小さいながらも明確なタクトさばきでしたが、タテのズレが少し気になりました。全楽章で繰り返しは行いませんでした。
第1楽章は、冒頭のトランペットが強めに出されました。これは先日リリースされた金聖響の影響がありそうです。
第1楽章から間髪入れずに第2楽章に突入。個人的には、第2楽章の前には一呼吸入れたいところです。そこそこ速めのテンポで、少人数を感じさせない一体感あるサウンドでした。ただ、テンポが一定せず、また創意工夫もあまり感じませんでした。強奏はスマートすぎて物足りなさを感じました。
第3楽章は、少し遅めのテンポで、あまりスピード感を感じませんでした。聞こえてくる楽器は、トランペット>弦楽器>その他管楽器という順番で、トランペットがさすがにうるさく感じました。木管楽器があまり聞こえないのも残念。
第4楽章は、余分な音がしないクリアーな演奏。オーソドックスな解釈でしたが、鳴る楽器と鳴らない楽器があったのが残念。弦楽器は第1ヴァイオリン以外は弱いのが惜しい。
休憩後のプログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲「ヴァイオリン協奏曲」。ヴァイオリン独奏はミラ・ゲオルギエヴァ。ブルガリア生まれの女性です。黒のドレスで登場。背が高い。
ゲオルギエヴァのヴァイオリンは、耳にくるキンキンとした金属的な音色で、オーケストラとは正反対の音色でした。聴いていて少し疲れました。もっとやさしいソフトな音色がこの作品には必要でしょう。一音一音大切に弾いていましたが、メロディーとしてつながりに欠けるのが残念。また指揮者とのアイコンタクトも少なく、協奏曲としてのおもしろみに欠けました。よくも悪くも標準的な演奏でした。オーケストラはベートーヴェンでは聴けなかった引き締まった演奏を聴かせました。
プログラム3曲目は、西村朗作曲「鳥のヘテロフォニー」。1993年度のオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱作品です。この作品をメインプロに持ってくるところに、岩城の思い入れを感じさせます。自由自在の表現力で、すでに手の内に入った演奏を聴かせました。視覚的にも楽しめる演奏で、特殊奏法も冴えわたりました。CDよりも速めのテンポでしたが、終盤でティンパニがうるさすぎ、他の楽器がかき消されてしまったのが残念。
拍手に応えてのアンコールは、鈴木行一編曲「六甲おろし」。客席から手拍子が盛大に巻き起こりました。トランペット奏者が阪神タイガースのユニフォームを身にまとうなどの演出もあって大いに盛り上がりました。この作品が一番聴衆の反応がよかったです。関西人は単純。終わりよければ全てよし。もっとも、この作品がアンコールとして使われるのも今年だけの現象でしょう。
岩城宏之は、以前は「東洋の火山」と称されたほど激しい指揮をしたようですが、年齢のせいか落ち着いた地味な指揮ぶりでした。著書の『指揮のおけいこ』は、非常に楽しめるエッセイで、事前に読んでおくと演奏会がいっそう楽しめます。例えば、指揮台は「覚えている作品なら使わない」とのことでしたが、この日の演奏会ではベートーヴェンのみ指揮台を使用していました。一度読まれることをおすすめします。
オーケストラ・アンサンブル金沢は、少人数ながらまとまった演奏を聴かせました。ただし、個々のプレイヤーの技術には少し物足りなさを感じさせることがありました。今後の研鑽に期待したいです。
余談になりますが、この日の演奏会はTV収録されるということでステージ上にカメラが4台ありましたが、オーケストラに異常に接近するなど目障りでした。
(2003.9.29記)