◆作品紹介
1880年、チャイコフスキーが40歳のときに作曲された。四つの楽章からなり、弦五部で演奏される。第1楽章についてチャイコフスキーは「モーツァルトに対する崇敬、彼の様式の意識的模倣である」と語っている。
初演は、1880年12月3日にモスクワ音楽院でニコライ・ルビンシテインの指揮で非公式に行われた。公開初演は1881年10月18日にペテルブルクでエドゥアルド・ナプラヴニクの指揮で行なわれた。モスクワ音楽院教授のコンスタンチン・アルブレヒトに献呈された。1934年にバレエ振付師ジョージ・バランシンによってバレエ化された。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
メンゲルベルク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 | 1938 | ミュージックグリッド MSCM10039 | C |
宮本文昭指揮/オーケストラMAP'S | 2012 | キングレコード KICC1045 | B |
メンゲルベルク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 【評価C】
金沢蓄音器館名曲コレクション。モノラル録音のレコード盤を蓄音器で再生し、デジタル録音で収録している。原盤はテレフンケン。解説書には録音年が1928年と書かれているが誤り(1928年にもメンゲルベルクは録音している)。蓄音器ならではの柔らかさや広がりが感じられるが、ノイズが大きめに入っている。
第1楽章冒頭は、アクセント+マルカートのスコア指示通り、音価をはっきり切って演奏する。非常に個性的だが、意外にチャイコフスキーの感覚に近いのかもしれない。53小節からもスラーごとに音価を区切る。91小節以降および208小節以降はテンポが速い。136小節からの第2ヴァイオリンとヴィオラのピツィカートはp指定だが強調する。146小節で音量を落としてクレシェンド。第2楽章も21小節からスラーごとに音価を区切るので聴こえ方がおもしろい。53小節と166小節の溜めがいい。73小節から速いテンポ。第3楽章は43小節から盛り上がる。第4楽章は9ヶ所もカットがある(132〜167小節、188〜191小節、196〜199小節、204〜207小節、212〜215小節、233〜260小節、344〜363小節、416〜420小節、430〜437小節)。444小節で急激にリタルダンドして終わる。
宮本文昭指揮/オーケストラMAP'S 【評価B】
宮本文昭が自ら立ち上げたオーケストラMAP'S(マップス)を指揮。ブックレットによると、指揮者を除いて20名での演奏。
津田ホールでのセッション録音で、残響が少ない。客席前方で聴いているようで、もう少し豊かな響きが欲しい部分がある。後述する映像では指揮台の周りにマイクが数本立てられているのが確認できる。
主旋律以外の伴奏もしっかり聴かせる。勢いに乗って演奏しているが、高音域はたまに音程が乱れたり音色が汚くなったりすることがある。コントラバスは2名だがよく聴こえて、下支えがすばらしい。
第1楽章冒頭は芯のある硬質の響きで、ノンビブラート奏法を採用している。41小節からのコントラバスのピツィカートはもっと跳ねてほしい。136小節からの第2ヴァイオリンとヴィオラのピツィカートはp指定だが強調して聴かせる。146小節で音量を落としてクレシェンド。第2楽章は114小節からヴィオラの対旋律を強調する。第3楽章は遅めのテンポ。21小節からヴィオラと第2ヴァイオリンがピツィカートを聴かせるが、全体の流れが少し悪くなっている。宮本が息を吸う音がよく聴こえる。第4楽章は44小節から強い音圧で躍動感がある。最後の5〜6小節の四分音符はアルペジオで聴かせる。
エンハンスドCD仕様で、特典映像「宮本文昭弦セレを振る」(11分)が再生できる。レコーディング風景が収録され、宮本は指揮棒なしで大きな身振りで指揮している。
2013.10.1 記