シベリウス/交響曲第2番


◆作品紹介
シベリウスの交響曲全7曲のなかで最も演奏頻度が高い作品。1901年のイタリア旅行中に作曲が始められた。4楽章から成るが、第3楽章と第4楽章は休みなしに続けて演奏される。初演は1902年3月8日にヘルシンキでシベリウス自身の指揮で行なわれた。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
チェリビダッケ指揮/オスロ放送管弦楽団 1965 リヴィングステージ(輸) LS1010
プレートル指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1967 RCA/タワーレコード TWCL2009
渡邉曉雄指揮/京都市交響楽団 1972 チェントクラシックス CAPO2010
K.サンデルリング指揮/ベルリン交響楽団 1974 ブリリアントクラシックス(輸) 6328/2
バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1986 グラモフォン UCCG9027
サラステ指揮/フィンランド放送交響楽団 1993 フィンランディア WPCS21024


チェリビダッケ指揮/オスロ放送管弦楽団 【評価C】
1965年11月28日のライヴ録音。CDにはステレオ録音と表記されているが、実際はモノラル録音である。同曲で同一日付の音源がドイツ・グラモフォンに存在する(オーケストラ名はスウェーデン放送交響楽団)。
標準的なテンポ設定で進められる。しっかり歌いこんで鳴らしていて、濃厚な表情が聴かれる。第2楽章冒頭のチェロとコントラバスのピツィカートが音程と縦線が乱れるなど、オーケストラの技術にはやや不満が残る。モノラル録音のため、強奏で高揚感に乏しいのが残念。チェリビダッケのうなり声がところどころで聴こえる。


プレートル指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 【評価D】
スコアにないアッチェレランドを多用していて恣意的に感じる。明るい音色がシベリウスには不似合いである。暖かく柔らかい響きでぬくもりがある。弦楽器の音色も色っぽい。チェロ、コントラバス、テューバなどの低音が弱い。ホルンは弱々しい。オーボエは芯のある音色で一聴の価値がある。
第1楽章9小節から木管楽器の内声を聴かせるのがユニーク。210小節に向けてスコアにないアッチェレランド。第2楽章冒頭はテンポが速いが、「Tempo Andante, ma rubato.」を意識したのかもしれない。61小節と131小節からアッチェレランド。87小節と168小節からの金管楽器のコラールはmf程度の音量でやさしく演奏。204小節の弦楽器の四分音符2つをテヌートで演奏していて思い入れを感じる。第4楽章のラストは高揚感に不足する。


渡邉曉雄指揮/京都市交響楽団 【評価C】
渡邉曉雄が第5代常任指揮者を務めた京都市交響楽団を指揮したセッション録音(奈良文化会館)。
全曲を通して北欧の雰囲気が漂い、シベリウスらしい響きが聴ける。管楽器の鳴らし方が豪快でスケールが大きい。細かいことは気にしていないので、音色はあまり洗練されていない。木管楽器は音符の粒をはっきり聴かせる。弦楽器も表情豊かで、ヴァイオリンは透明感のある音色を聴かせる。
第2楽章167小節からのPiu moderato e largamente.があっさり流れてしまうのが残念。238小節のティンパニのトレモロのとどろきは聴きもの。


K.サンデルリング指揮/ベルリン交響楽団 【評価D】
ドイツ・シャルプラッテン原盤。オーケストラの編成が小さいのか、響きが薄い。録音も直接音が多く、残響が少ない。金管が鳴らない、ティンパニが弱いなど、強奏はパワー不足。ダイナミクスの幅が狭い。もう少し雄大な広がりが欲しい。技術面でもややぎこちなく感じる。音色もあまり洗練されていない。
第1楽章105小節からの木管楽器の音型はテヌート気味に長めに演奏。第4楽章66小節からと262小節からのa tempo ma tranquilloは、ゆっくりしたテンポで進める。
なお、CDケース裏面の時間表示に誤植がある(第1楽章 0'23 → 10'23)。


バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 【評価B】
ライヴ録音。遅めのテンポで雄大に描かれる。テンポに緩急をつけて、濃厚な表情を聴かせる。この作品は主観的な解釈で聴かないとつまらなく感じてしまう。音色はつややかで明るめ。太陽が降り注ぐような暖かさを感じる。ティンパニとホルンを強調する。
第1楽章冒頭の弦楽器の四分音符はクレシェンドをはっきり聴かせる。第2楽章冒頭のコントラバスとチェロの連符のクレシェンドとデクレシェンドも同様。
第2楽章が白眉で、遅いテンポで18分をかけて演奏される。彫りが深く、一大交響詩のようである。80小節のPoco larg.と85小節Molto largamente.でテンポダウン。86小節の全音符をかなり長く延ばす。81小節と83小節でヴィオラの連符を聴かせるのもすごい。第4楽章344小節で全体デクレシェンドして、348小節に向けてクレシェンドする。


サラステ指揮/フィンランド放送交響楽団 【評価C】
ライヴ録音のせいか、演奏の出来にムラがある。響きが濃厚でなく、あっさりしている。音色もあまり洗練されておらず、素朴である。低音があまり聴こえないのが残念。強奏でも音圧が強くないため、張り詰めた緊張感がない。ティンパニは部分的に大きくとどろく。スコアを見ながら聴くと、物足りなく聴こえてしまう。
クレシェンドの前に一旦音量を落とすことが多い(第1楽章206小節、第2楽章174小節)。第3楽章のティンパニは音量が大きすぎる。皮が破れそうなほど、打点をはっきり強調して叩く。第4楽章はほとんどインテンポで演奏。もう少しリテヌートを効かせて欲しい。クライマックスの盛り上がりもあっさり。348小節からはテンポを落として、じっくり演奏する。最後の全音符も派手に鳴らさないでやさしく終わる。



2007.8.7 記
2007.12.6 更新
2008.3.2 更新
2008.8.6 更新
2009.3.17 更新


ショスタコーヴィチ/交響曲第15番 シベリウス/交響詩「フィンランディア」