ラヴェル/ラ・ヴァルス


◆作品紹介
「ダフニスとクロエ」に続いて、ロシア・バレエ団主宰のディアギレフの委嘱によって作曲された。「管弦楽のための舞踊詩」の副題を持つ。「LA VALSE」とは、フランス語でワルツの意味。
1906年頃に構想された交響詩「ウィーン」を発展させて作曲された。スコアの冒頭に「渦まく雲が、切れ目を通じて、円舞曲(ヴァルス)を踊る何組かを垣間見せる。(中略)1855年ごろの皇帝の宮廷」という文章が掲載されている。しかし、ディアギレフは、踊れないことを理由に上演しなかった。この件で、ラヴェルとディアギレフは絶交してしまう。
演奏会形式での初演は、1920年にパリでシュヴィヤール指揮のラムルー管弦楽団によって演奏された。バレエ初演は、1928年頃に行なわれたとされる。パリ・オペラ座での初演は、1929年にイダ・ルビンシテインのバレエ団によって行なわれた。
なお、ピアノ譜と2台ピアノ譜の自筆譜も残されている。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団 1961 EMIクラシックス TOCE14066
クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団 1964 アルトゥス ALT004
コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 1967 アルトゥス ALT020
ブーレーズ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック 1974 ソニークラシカル(輸) SK92758


クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団(1961年) 【評価A】
やや速めのテンポで躍動感がある。演奏する楽器の組み合わせによって、音色が変化するさまが楽しめる。打楽器を派手に鳴らす。タンバリンとカスタネットが情熱的に叩かれる。ラストに向けての盛り上がりもよい。
練習番号5から弦楽器の絶妙にブレンドされた色気のある音色がすばらしい。 練習番号6の3小節からのフルートのトレモロは、フラッター奏法で聴かせる。練習番号13からハープを目立たせて華やかさを増す。練習番号29からの2小節は、テンポを落として弦楽器のグリッサンドを待つ。練習番号43の1小節にあるクロタルのppの付点二分音符をfくらいに大きく響かせる。練習番号76からのシンバルはpp指定だがかなり大きい。練習番号63の1小節は、3拍目にむけてデクレシェンドさせて音量を落とす。練習番号90で小太鼓が入り間違って、アンサンブルが少し乱れる。


クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団(1964年) 【評価C】
パリ音楽院管弦楽団の最初で最後の来日公演(1964.5.7 東京文化会館)のライヴ録音。モノラル録音だが、後年発見された同一演奏のステレオ録音(ALT168)も発売されている。
録音は直接音が多く残響に乏しい。スタジオ録音を聴き慣れた耳には軽い衝撃を受ける。音色もバラエティに欠け、硬直気味であまり美しくない。トランペットが突出し、木管があまり聴こえないなどバランスも悪い。
やや速めのテンポで、インテンポを守りつつ即興的で自由に流れる。弦楽器のグリッサンドが滑らかで気品がある。練習番号16からの弦楽器が超レガート。練習番号41からも速いテンポを維持する。練習番号85で大太鼓が落ちているようだ。


コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 【評価D】
東京文化会館でのライヴ録音。アンコールとして演奏された。
ほぼインテンポで進められ、3拍子のリズムも直線的で伸縮性に欠ける。中盤以降はテンポが速くなり、練習番号41以降は特に速い。ラヴェルらしい和音がほとんど響かず、モノトーンである。最後の四分音符5つも小太鼓しか聴こえない。
録音もよくない。マイク位置のせいか、金管楽器と打楽器がやたら聴こえるなどバランスが悪く、演奏の全体像を収録できていない。


ブーレーズ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック 【評価B】
ブーレーズ1回目の録音。細部の動きをあいまいにせず明瞭に聴かせる。ただ期待したほどではなく、まだ聴こえない音符がスコアに多くある。曲想に合わせて遠慮したのかもしれない。逆に、イマジネーションが喚起されないので、もう少しぼやかして欲しいと思う部分もある。目指している演奏の方向性ははっきり示されているが、アプローチがやや中途半端になってしまった感はある。響きは冷たく華やかさはない。音色に厚みが欲しい。
冒頭の3拍子はひきずるように始まる。練習番号9からクラリネットの連符がよく聴こえる。練習番号26の金管楽器はアクセントとスタッカートはっきり吹き分ける。



2008.9.23 記
2009.10.19 更新
2011.5.19 更新


ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 ラヴェル/ボレロ