ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番


◆作品紹介
ラフマニノフが1901年(28歳)に作曲。4曲あるピアノ協奏曲のなかで最も有名である。
1897年に初演された「交響曲第1番」の失敗で、ノイローゼ状態となったラフマニノフだったが、精神科医ダール博士の催眠療法によって、自信を回復した。全楽章の初演は、1901年10月27日に作曲者自身のピアノ独奏、ジロティ指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われた。作品はダール博士に献呈されている。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
ラフマニノフ(p)、ストコフスキー指揮/フィラデルフィア管弦楽団 1929 ナクソスヒストリカル 8.110601
リヒテル(p)、ヴィスロツキ指揮/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 1959 グラモフォン POCG9530
アシュケナージ(p)、ハイティンク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1984 ロンドン POCL2761 AA


ラフマニノフ(p)、ストコフスキー指揮/フィラデルフィア管弦楽団 【評価C】
自作自演。針音はけっこう聴こえるが、鑑賞には問題ない。
ラフマニノフは速めのテンポでスイスイ弾いてのける。技術的な問題を感じることはないが、あっさりしすぎでロマンティシズムを感じない。もう少し間を取って、ゆっくり味わいたい。初演から約30年を経ているためか、ピアノ独奏はスコアの強弱記号を厳密に再現しているわけではなく、いくぶん即興的に感じる部分もある。打鍵の強弱で音色や表情を使い分けていて、弱奏は繊細にやさしく演奏する。
オーケストラは鳴らし方が雑に聴こえる。録音のせいか細部が聴こえないため、やや無表情に感じる。オーケストラは脇役扱いで、ピアニストとしてのラフマニノフを聴くための録音であると言える。


リヒテル(p)、ヴィスロツキ指揮/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 【評価B】
ピアノの音色が硬くて冷たい。重さのあるタッチで、高音でも軽く響かない。鬱蒼としたロシアの空気感が伝わる。ピアノが前面に聴こえて圧倒的な存在感を放つ。テンポを揺らすなど即興的な部分もあり、演奏の主導権を握っている。オーケストラは金管楽器が鳴らない。
第1楽章冒頭のピアノはオーケストラが入った11小節以降も低音のアクセントを力強く聴かせる。245小節(Maestoso(Alla marcia))からの再現部は、リヒテルのテンポに指揮者とオーケストラが合わせている。第2楽章はクラリネットソロの音色が薄っぺらい。第3楽章431小節からのピアノは、八分連符に勢いをつけて駆け降りる。


アシュケナージ(p)、ハイティンク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 【評価AA】
アシュケナージ3回目の録音。アシュケナージの魅力が遺憾なく発揮された名演である。ピアノの透明感ある澄んだ響きがすばらしい。なかでも高音のきらめきが最高。他のピアニストでは決して聴けない音色である。オーケストラ伴奏も重心の低い落ち着いた響きで格調が高い。ピアノとオーケストラのバランスもよい。コンセルトヘボウの奥行きのある残響も理想的である。
第1楽章冒頭のピアノ独奏の和音は、手が届かないためかアルペジオで演奏している。201小節からのピアノの3連符の高音は絶品。第2楽章147小節からのヴァイオリンが歌う主旋律とピアノが奏でる四分音符がロマンティックでうっとりする。第3楽章430小節(ピアノソロ)から最後まで、聴きどころの連続。いくら字数があっても書ききれないほどである。



2008.8.11 記
2011.6.10 更新


プロコフィエフ/交響的物語「ピーターと狼」 ラヴェル/ラ・ヴァルス