◆作品紹介
プロコフィエフがソヴィエトに復帰してからの作品で、1936年に1週間程度で作曲されたという。プロコフィエフ自身が書いた物語で、登場人物が各楽器で演奏される。すなわち、ピーター(弦楽五部)、小鳥(フルート)、アヒル(オーボエ)、猫(クラリネット)、おじいさん(ファゴット)、狼(ホルン3本)、鉄砲(ティンパニ)である。「交響的物語」となっているが、管楽器はホルン以外は各1名で小さい編成である。物語を進行するナレーション(言語はロシア語)が加わる。
初演は1936年5月2日にモスクワの児童劇場において、モスクワ・フィルによって行なわれた。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
カラヤン指揮/フィルハーモニア管弦楽団、坂本九(語り) | 1956 | EMIクラシックス TOCE16296 | B |
バーンスタイン(語り)指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック | 1960 | ソニークラシカル SRCR2032 | B |
カラヤン指揮/フィルハーモニア管弦楽団、坂本九(語り) 【評価B】
カラヤン唯一の録音。台本は永六輔の脚色による。冒頭はオーケストラのチューニングから始まり、カラヤンが登場して、指揮台に向かう足音や咳ばらいが入っているが、おそらく実際の音ではない。続く楽器の紹介は短め。
坂本九の語りは1966年に録音(当時まだ20代)。東芝レコードに所属していたため起用されたか。「坂本九はカラヤンの指揮棒です」と自らの役割を語るが深い意味はない。高い声で早口。威勢がよく体言止めが多い。ラジオの実況を聞いているようで、演奏が脇役に思えるほど。永六輔の脚色は状況をイメージしやすいように説明を追加したり、「罠の縄の縄の罠」などの語呂遊びが入っている。
カラヤンは落ち着いているので坂本九の語りとのギャップがある。全体的に遅めのテンポ設定で丁寧に演奏する。木管楽器がうまい。アーティキュレーションをはっきり聴かせるのは後年のカラヤンでは聴けない表現である。冒頭のピーターの主題も弦楽器があまり流れない。練習番号38からは遅いテンポ。練習番号44はホルンがben tenuto,energicoの指示に反してレガートで演奏。練習番号49からは小太鼓が活躍して勇ましい。
バーンスタイン指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック 【評価B】
バーンスタイン唯一の録音。バーンスタインが自ら英語でナレーションを担当。美声が聴ける。冒頭で楽器を登場人物を当てるクイズ形式で紹介する。
アメリカのオーケストラとは思えないほどがっちりとした構築で、音色も暗めで重い。音質も硬めで温もりはなく、ほのぼのとした雰囲気はない。楽しく聴かせようという意図はなく、いたってまじめに演奏している。バーンスタインのうなり声がときどき聴こえる。弦楽器はあまり編成が多くない。フルートはあまりうまくない。ホルンがもさもさと重苦しい。
ピーターの主題は4小節のヴィオラとチェロの内声を聴かせる。練習番号3はオーボエの代わりにクラリネットで演奏する。練習番号34のヴァイオリンのクレシェンド、デクレシェンドは狼が気づいてしまうのではないかと思うほどおおげさにつける。練習番号47は速めのテンポ。
2013.11.8 記