オルフ/カルミナ・ブラーナ


◆作品紹介
20世紀ドイツを代表するオルフの出世作で代表作。「カトゥリ・カルミナ」「アフロディテの勝利」へ続く「トリオンフィ(勝利)」3部作の第1作。「器楽の伴奏をともなう舞台上映用の世俗カンタータ」の副題を持つ。大編成管弦楽のほかに、独唱3(ソプラノ、テノール、バス)、合唱(大合唱、小合唱、児童合唱)を要する。
テキストは、1803年にバイエルンのベネディクトボイレン修道院で発見され、1847年に出版された『カルミナ・ブラーナ』(「ボイレンの詩歌集」という意味)。13世紀頃に修道僧によって書かれたと見られる。約200篇の詩からオルフは24の詩を選んで作曲した。
作品の構成は、「初春に」「酒場で」「愛の誘い」の3部からなり、序と終曲に「おお、運命の女神よ」を加え、全曲の統一を図った。
全曲を通じて、主題を展開させることなく反復させ、対位法的手法も用いられない独特の作風である。
初演は、1937年6月8日にフランクフルト歌劇場で行なわれた。オルフはゲネラルプローベの後、楽譜出版社に対してこれまでの作品をすべて破棄するよう伝えたとされる。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団、シカゴ交響合唱団、グレン・エリン児童合唱団、アンダーソン(S)、クリーチ(T)、ヴァイクル(Br) 1984 グラモフォン UCCG5150
ペンデレツキ指揮/クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団、クラクフ・フィルハーモニー合唱団、フルバ=フライベルガー(S)、クシェヴィッツ(T)、ハーヴェンシュタイン(Br) 1989 アーツ(輸) 47177-2
高関健指揮/札幌交響楽団、札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、HBC少年少女合唱団、針生美智子(S)、高橋淳(T)、堀内康雄(Br) 2009 エーエルエム ALCD8033


レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団、シカゴ交響合唱団、グレン・エリン児童合唱団、アンダーソン(S)、クリーチ(T)、ヴァイクル(Br) 【評価C】
開放感があり大きなスケールで描いているが、悪く言えばおおざっぱ。明るい音色がいかにもアメリカ産である。合唱は音程や声質が揃っていない。縦線も合っていないので、まとまって聴こえない。やや怒鳴り気味で歌詞が明瞭に聴こえない。もう少し広がりすぎず締まった響きが欲しい。
オーケストラは金管楽器が軽快に輝かしく鳴るが、音色が汚い。もっときれいな音色を聴かせて欲しい。打楽器は控えめで遠景として聴かせる。
反復はまったく同じように繰り返す。面白みがなく退屈してしまうので、表情の変化が欲しい。
第1曲「おお、運命の女神よ」は合唱と金管楽器の音色が汚く和声が決まらない。21小節からドラが大きめに聴こえる。第9曲「円舞曲」ラストの「Sla!」は音程を無視してシャウトする。第12曲「むかしは湖に住まっていた」は896小節からティンパニなどの打楽器を聴かせる。902小節の「Miser」「niger」はテヌートで歌う。第14曲「酒場に私が居るときにゃ」は964小節からの金管楽器が聴きもの。鮮やかに演奏してアンサンブル力を見せつける。さすがシカゴ交響楽団。1002小節からはホルンを聴かせる。第18曲「私の胸をめぐっては」はテンポが落ち着かない。


ペンデレツキ指揮/クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団、クラクフ・フィルハーモニー合唱団、フルバ=フライベルガー(S)、クシェヴィッツ(T)、ハーヴェンシュタイン(Br) 【評価C】
ライヴ録音。声楽中心の演奏設計で、宗教カンタータのように格調高い。スコアにないテンポ設定も多く、緩急を大胆につける。演奏水準は高くないが、ペンデレツキの個性的な解釈で楽しめる。金管楽器はさっぱり鳴らない。合唱は広がりがある歌い方だが、歌詞がぼやける。
第1曲「おお、運命の女神よ」冒頭の「Fortuna」はアクセントよりもテヌートで歌う。61小節からは木管楽器を聴かせる。93小節からはテンポを無視して打楽器が乱打。第2曲「運の女神に痛手を」は遅めのテンポではじめて、126小節(piu mosso)から猛スピードで疾走。第4曲「万物を太陽は整えおさめる」はバリトン独唱がやたら巻き舌で歌う。第5曲「見よ、今や楽しい」は262小節からのpoco rit.を大きくつけて、263小節の二分音符をフェルマータのように長く伸ばす。第6曲「おどり」は打楽器の十六分音符を前に詰めて叩き込む。357小節からの弦楽器はff指示だが弱奏で演奏。第9曲「円舞曲」の688小節の八分音符を687小節の3拍目に前倒しして弾く。第14曲「酒場に私が居るときにゃ」の1018小節からはaccel.possibileを無視して遅いテンポを維持。第15曲「愛神はどこもかしこも飛び廻る」の1080小節でソプラノ独唱の伸ばしにカンマをつける。第18曲「私の胸をめぐっては」の1202小節は、フェルマータ付きのカンマを無視して間を空けずに3回繰り返す。第22曲「今こそ愉悦の季節」の1325小節(piu lento)は遅いテンポからはじめてアッチェレランドをかける。


高関健指揮/札幌交響楽団、札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、HBC少年少女合唱団、針生美智子(S)、高橋淳(T)、堀内康雄(Br) 【評価C】
札幌交響楽団正指揮者の高関健が指揮した第520回定期演奏会(札幌コンサートホールKitara)のライヴ録音。『レコード芸術』(2010年4月号)では特選盤となったが、評価が甘いと感じた。
打楽器が大活躍で、歯切れのよいリズムを刻む。ティンパニはマレットの撥音が大きく入っている。2台のピアノも指揮台の前に置かれているようで強め。低音楽器のアクセントにパンチ力があり、演奏を引き締める。合唱は健闘しているが、響きが拡散しがちで歌詞がぼやける。独唱はバリトンがマイクから離れた位置で歌っているのか、奥まって聴こえる。
高関の演奏解釈は奇を衒ったものはなくテンポ設定も標準的。
第1曲「おお、運命の女神よ」冒頭は合唱がやや弱い。第5曲「見よ、今や楽しい」は、徐々に音量が増すのが手に取るように分かる。第9曲「円舞曲」の合唱はバスが強い。第10曲「たとえこの世界がみな」は、勢いあまって最後の「Hei!」が揃わない。第11曲「胸のうちは、抑えようもない」は、834小節からのヴァイオリンが穏やかな表情。第12曲「むかしは湖に住まっていた」は、テノール独唱が、声が裏返ったり巻き舌を効かせたりしながら感情を込めて歌う。第13曲「わしは僧院長さまだぞ」は、910小節から金属音(チューブラーベル?)を聴かせる。第15曲「愛神はどこもかしこも飛び廻る」1076小節からのソプラノ独唱のタイは、拍数分伸ばしていない。第19曲「もし若者と乙女が一緒にいたら」は、テノールが上ずる。第21曲「私のいとしい人」は、ソプラノ独唱が美しく聴かせる。



2009.8.18記
2010.10.1更新


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