◆作品紹介
ムソルグスキーの親友だった画家ガルトマンの遺作展で出展された作品から受けた印象を音楽にしている。10の小品とそれをつなぐプロムナードから構成されている。
ムソルグスキーの原曲はピアノ版であるが、クーセヴィツキーの依頼を受けたラヴェルが管弦楽版に編曲した。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
クーセヴィツキー指揮/ボストン交響楽団 | 1943 | ナクソスヒストリカル 8.110105 | C |
トスカニーニ指揮/NBC交響楽団 | 1953 | RCA BVCC9930 | D |
カラヤン指揮/フィルハーモニア管弦楽団 | 1955-56 | EMIクラシックス(輸) 7243 5 62869 2 4 | D |
カラヤン指揮/ミラノRAI交響楽団 | 1956 | ウラニア(輸) RIT55.203 | C |
朝比奈隆指揮/北ドイツ放送交響楽団 | 1961 | オードクラシックス(輸) ODCL1003-2 | D |
![]() | 1968 | デンオン COCQ84492 | C |
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 | 1974 | アリオーソ(輸) ARI300 | C |
チェリビダッケ指揮/ロンドン交響楽団 | 1980 | NHKクラシカル NSDS9487【DVD】 | C |
ショルティ指揮/シカゴ交響楽団 | 1980 | ロンドン POCL9809 | B |
アバド指揮/ロンドン交響楽団 | 1981 | グラモフォン UCCG9097 | B |
プレヴィン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 | 1985 | フィリップス PHCP10530 | B |
チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 | 1993 | EMIクラシックス(輸) 7243 5 56526 2 1 | A |
ヴァンデルロースト指揮/レメンス音楽院シンフォニック・バンド | 1999 | デ・ハスケ(輸) DHR 11.006-3 | B |
菅原淳指揮/パーカッション・ミュージアム | 2001 | ファイアバード KICC344 | B |
クーセヴィツキー指揮/ボストン交響楽団 【評価C】
この作品の生みの親であり初演者でもあるが、「プロムナード(2)」「古城」「ビドロ」「プロムナード(4)」をカットしている。また、「プロムナード(1)」の自由なテンポ設定、「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」のトランペットソロの装飾音のカットと音程の変更、「バーバ・ヤーガの小屋」での楽器の変更(ファゴット→クラリネット)など、それ以外の作品にもスコアにない自由な解釈を加えている。ライヴ録音で、聴衆の咳がたまに聞こえる。強奏でひずみ混濁し、細部がやや不明瞭なのが惜しまれる。音色は洗練されていないが、生演奏らしい勢いを感じさせる威勢のいい演奏である。
トスカニーニ指揮/NBC交響楽団 【評価D】
丁寧な演奏であるが、あまり聴きどころは多くなく平凡である。機能的でおもしろみに欠ける。テンポが速いこともあって、音程の不安定さやタテのズレなどアンサンブルにも乱れがある。アーティキュレーションの変更や楽器の追加などスコアを一部変更しているが、いまひとつ効果を上げておらず違和感を感じる。モノラル録音だがかなり状態はよい。
カラヤン指揮/フィルハーモニア管弦楽団 【評価D】
カラヤン1回目の録音。後年とは明らかに異なる演奏が聴ける。ラヴェルのスコアを忠実に再現しており、恣意的表現を意識的に抑制しているかのようである。しかし、スケール感が押し殺されており、面白くない。フィルハーモニア管弦楽団も音符を鳴らしきっておらず、音が寝ていて生気がなく、持続力にも欠ける。強奏でも盛り上がりや響きの広がりに欠け、輝きや華々しさがない。「キエフの大門」も響きがくすんでいる。音程や縦線の乱れが散見されるなど、技術面の完成度も低い。
カラヤン指揮/ミラノRAI交響楽団 【評価C】
1956年3月7日のミラノでのライヴ録音とされるが、この日にカラヤンが指揮した演奏会記録はない。ネットの情報では、カラヤン指揮の録音ではなく、1970年頃にクーベリックがバイエルン放送交響楽団を指揮した音源であるらしい。カラヤンの同時期の演奏とは特徴が大きく異なる部分が多く、カラヤンの演奏でない確率が高いと思われる。だまされた感が強いが、なぜ間違えてリリースされたのか。
CDには「MONO」と表記されているが、実際にはステレオ録音である(ただし、演奏終了後の拍手はモノラル)。残響が増やすなど、かなり人工的なマスタリングである。
オーケストラは開放的に鳴るが、縦線が乱れるなどやや荒削り。管楽器は明るい音色で色艶があり、イタリアのオーケストラと言われても納得してしまう。
冒頭の「プロムナード」はかなり遅いテンポで演奏している。また、「ビドロ」は、コントラバスとティンパニを強めに聴かせている。
朝比奈隆指揮/北ドイツ放送交響楽団 【評価D】
モノラルライヴ録音。録音は細部が不鮮明で、低弦の響きも貧弱である。余韻をつけずキビキビと進められるが、あまり生気が感じられない。1番トランペットが危なっかしい演奏で、冒頭の「プロムナード」は音圧が低く、「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」では細かな音符でタンギングがしっかり吹けていない。「キエフの大門」は、全楽器でがぜん元気に演奏する。
山田一雄指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 【評価C】
学校教材用として録音された。硬い音質で、響きはあまり濃密でない。楽器の音色を融合させるのではなく、ぶつけ合うことで音色の違いを際立たせている。
冒頭の「プロムナード」は、独奏トランペットと金管アンサンブルが乾いた音色で演奏される。最後の四分音符はアクセント気味に短く切る。「テュイルリーの庭」は、フルートの十六分音符が指が回っていないようで怪しい。「ビドロ」は練習番号40から、第2ヴァイオリンのを効かせて、メロディーが八分音符のように聴こえる。練習番号42からティンパニの八分音符が重々しい歩みを表す。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」はトランペットの技術的な問題からか、練習番号60からテンポがどんどん遅くなる。「バーバ・ヤーガの小屋」は練習番号90からのフルートとテューバの音量を抑えた弱奏が聴きもの。「キエフの大門」は練習番号118から徐々にアッチェレランドで盛り上げる。
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 【評価C】
ドロドロでベタベタの演奏かと予想したが、意外にさっぱりした音響である。必要以上にロシア色を強調することはない。アーティキュレーションがぼやけて音型が不鮮明な部分があるのが残念。「カタコンブ」は金管楽器の威圧感がすさまじい。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」と「カタコンブ」で打楽器を追加しているが、安っぽく聴こえてしまう。「ビドロ」でも最初と最後のテューバソロにトロンボーン(?)を重ねている。「キエフの大門」は音量に不足する。
チェリビダッケ指揮/ロンドン交響楽団 【評価C】
1980年4月18日のNHKホールでの来日公演のライヴ映像。意外にも、客席は空席が目立つ。
やや遅いテンポで演奏される。縦線が合わないなど演奏精度はいまひとつで、後年のミュンヘン・フィルとの録音には及ばない。打楽器は常に控えめである。ヴァイオリンはボウイングの向きやタイミングが揃ってないことが視覚的に分かる。
チェリビダッケは譜面台なしで指揮している。眉間にしわを寄せて、鋭い視線で団員をにらみつけている。演奏が不満だと、さらにしかめっ面になる。音量を抑えるときは左手を広げて、音量が欲しいときは左手の人差し指を立てて奏者を指差す。「リモージュの市場」では笑顔が見られる。
「ビドロ」のソロは、テューバではなく、トロンボーン奏者がユーフォニアムで演奏している。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」練習番号57の3小節3拍目で音量を落としてゆっくり演奏する。「死者の言葉による死者との対話」は、徹底的に弱奏を追求している。「バーバ・ヤーガの小屋」最後の小節で、小太鼓の一発が入る。
演奏終了後は、幼稚園児のような小さな女の子がチェリビダッケに花束を渡す。チェリビダッケは笑顔を見せ、首席トロンボーン奏者とコンサートマスターに一輪を抜いて渡している。チェリビダッケは気をよくしたのか、この後アンコールを2曲演奏する。
ショルティ指揮/シカゴ交響楽団 【評価B】
明るく軽いタッチで重量感がなく重苦しくならない。音色も薄っぺらく、スカスカしていて中身が詰まっていない。作品によっては物足りなさを感じる。「殻をつけたひなどりの踊り」「リモージュの市場」は雰囲気が出ている。「キエフの大門」は金管アンサンブルがすばらしい。アクセントが効果的。
アバド指揮/ロンドン交響楽団 【評価B】
個々の楽器は美しく整理されているが、全体としての統一感に欠ける。強奏でもやや枠にはまった感じがある。低音が音量的にややさびしい。「殻をつけたひなどりの踊り」など木管楽器が活躍する作品がよい。「こびと」「テュイルリーの庭」のスピード感もよい。「キエフの大門」は晴れやかさがありすばらしい演奏。
プレヴィン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 【評価B】
ライヴ録音。ウィーンフィルの柔らかい響きが魅力的。透明感のある軽くクリアーなサウンドだが、音圧が低く威圧感がないため、ムソルグスキーにもラヴェルにも聞こえない。明るく喜びを感じる音楽になっている。この作品のイメージを変えさせるある意味新鮮な演奏。「テュイルリーの庭」「殻をつけたひなどりの踊り」「リモージュの市場」はヨハンシュトラウスのように聞こえてくる。「ビドロ」は美しすぎて悲劇的な感じがしない。「キエフの大門」は金管をフルに鳴らしきらない余裕を感じる。鐘の音程が低すぎて作品に合っていない。
チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 【評価A】
ライヴ録音。遅いテンポでじっくり仕上げられていて完璧に近い演奏である。和音の美しさや音程の正確さ、見通しのよさ、バランスのよいサウンドなど清潔感がある。「プロムナード(1)」は神聖な雰囲気を感じる。「こびと」は緊迫感に不足する。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」は弦楽器が重厚感に欠け、おとなしい。「リモージュの市場」は整理されすぎて市場の喧騒感が表現できていない。「カタコンブ」は遅すぎて旋律が途切れがちになっている。「バーバ・ヤーガの小屋」は冷静すぎる。もっと鳴って欲しい。「キエフの大門」のラストの盛り上がりはすばらしい。
ヴァンデルロースト指揮/レメンス音楽院シンフォニック・バンド 【評価B】
高橋徹(大阪音楽大学助教授)の吹奏楽編曲による演奏。外面的効果をねらった編曲ではなく表現力があり、弦楽器がないという吹奏楽のハンディを感じさせない。アーティキュレーションを変化させたり、音符を追加したりしているが、原曲を大きく逸脱するようなアレンジではない。ラヴェルの管弦楽編曲と比べても遜色はなく、楽しく聴ける。打楽器が随所で活躍し、色彩感を与えている。強弱をはっきりつけて、各曲の性格を端的に描いている。
冒頭の「プロムナード」は、チャイムの弱奏から静かにはじまるので、意表を突かれる。荘厳な教会音楽のようである。「こびと」は、打楽器が野性的に叩かれる。練習番号14の7小節からの木管楽器のトリルはものすごい演奏効果をあげており見事。「古城」は、イングリッシュ・ホルンとアルトサクソフォーン(ラヴェル編曲よりも1オクターヴ高い)がソロを受け持つ。「殻をつけたひなどりの踊り」は、木管楽器の和音が斬新で躍動感がある。ラヴェル編曲では省略された「リモージュの市場」の前の「プロムナード」もきちんと編曲されている。「キエフの大門」は、練習番号115からチャイムが派手に鳴り響く。
演奏は、美しく上品な音色で、ソフトでのびやかな響きがすばらしい。
菅原淳指揮/パーカッション・ミュージアム 【評価B】
菅原淳編曲による打楽器16重奏での演奏。ムソルグスキーのピアノ原曲をベースに編曲されている。ラヴェル編曲のオーケストラを単純に打楽器に置き換えた編曲ではなく、曲想に合わせて打楽器を変えている。
16人で演奏しているとは思えないほど、すっきりしたまとまった音響である。珍しい楽器も使われ、いろいろな音色が楽しめる。色彩感が豊かで、この作品が持つ雰囲気にふさわしい。
冒頭の「プロムナード」は、チューブラベル(チャイム)で演奏される。「古城」のソロは、ヴィブラフォンが演奏する。「ビドロ」でムチが使われるが、異質で違和感がある。「殻をつけたひなどりの踊り」は、笛と木魚が効果的に使われる。ラヴェル編曲でカットされた「リモージュの市場」の前の「プロムナード」は、アンクルン(インドネシアの竹製の打楽器)で演奏される。映画「もののけ姫」に出てきた「こだま」を連想させる。
2003.8.15 記
2004.9.19 更新
2005.2.19 更新
2006.6.15 更新
2007.4.6 更新
2007.7.15 更新
2008.1.8 更新
2008.3.8 更新
2011.8.28 更新