◆作品紹介
1830年に訪れたイタリアの印象をもとに構想され、1832年にロンドン・フィルハーモニック協会の委嘱で作曲された。「イタリア」の副題は、メンデルスゾーンの私信に書かれているが、自筆譜には書き込まれていない。第4楽章にイタリアの民族舞踏「サルタレロ」を取り入れている。
初演は1833年にメンデルスゾーン自身の指揮で行なわれた。その後、第2楽章から第4楽章の改訂を行ない、1838年に改訂版を初演した。しかし、改訂版にも満足しなかったため、総譜は出版せず手元に置かれた。出版はメンデルスゾーン没後に初演譜を元にして行なわれた。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団 | 1970 | RCA/タワーレコード TWCL4015 | C |
カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 | 1971 | グラモフォン(輸) 449 743-2 | B |
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 | 1982 | イエダンクラシックス(輸) YCC0072 | D |
チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 | 1993 | ヴィブラート(輸) VLL28 | C |
プレヴィン指揮/ロンドン交響楽団 【評価C】
プレヴィン1回目の録音。各パートの役割と性格付けが明確で、意志を持って演奏される。立体感や奥行きがある音響で、躍動感もある。チェロとコントラバスを積極的に聴かせる。ただし、管楽器の精度はいまひとつ。
第1楽章冒頭は木管楽器の連符の明るい雰囲気のなかで、主旋律が浮き出て聴こえる。アクセントやsfは弾んで演奏する。73小節からチェロとコントラバスのオブリガートを聴かせる。反復記号をスコアどおり行なう。497小節からのトランペットは軽やかに鳴る。第2楽章は、オーボエ、ファゴット、ヴィオラによるメロディーが少し重たい。第4楽章は表情に変化があり、身のこなしも華麗。金管楽器は84小節から華やかに鳴るが、それ以外は元気がない。250小節から第2ヴァイオリンのピツィカートが聴こえるのが珍しい。
カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 【評価B】
カラヤン同曲唯一の録音。弦楽器が緊密なアンサンブルを聴かせる。量感が充実した音響で、演奏の完成度も高いが、イタリアらしい陽気さはあまり感じられない。
第1楽章冒頭からレガート奏法全開で、ヴァイオリンが抵抗なくなめらかに流れる。第2楽章は、低弦の八分音符をしっかり聴かせる。第3楽章はやや遅めのテンポ設定。ヴァイオリンのメロディーに休符がないことを強調するようにレガートをかける。第4楽章は鋭い音圧で一糸乱れぬ正確なアンサンブルを聴かせるが、ヴァイオリンが必死に演奏する様子が伝わってしまう。温かみに欠け、ダンスというより軍隊の行進のようである。
スヴェトラーノフ指揮/ソヴィエト国立交響楽団 【評価D】
響きが硬くゴツゴツしていて、貧弱に聴こえる。色彩感が乏しく作品が持つ雰囲気と相容れない。全体的に音程が怪しい。ティンパニはほとんど鳴らない。
第1楽章は2小節からのヴァイオリンの主題の歌い方がせせこましい。187小節からの反復をスコアどおり行なう。第4楽章は高速テンポで、オーケストラがなんとかついていくが、技術的に危なっかしい。
チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 【評価C】
1933年6月12日のライヴ録音。客席後方で聴いているような音響で、間接音が多く輪郭がぼやけがちである。また細かな表情が聴きとりにくい。聴衆ノイズもそれなりに多い。
オーケストラ全体で呼吸しているような一体感がある。弦楽器と管楽器のユニゾンなど音色を融合させて聴かせる。アンサンブルも完成度が高い。
第1楽章は遅いテンポでじっくり歌わせるが、やや重い。最後の小節はテヌート気味に響かせる。第2楽章はフルートの対旋律を浮かび上がらせる。第3楽章はfからppまでの音量変化に乏しい。第4楽章は躍動感がすばらしい。
2008.5.3 記
2009.2.28 更新
2011.8.2 更新