ホルスト/組曲「惑星」


◆作品紹介
イギリスの作曲家、ホルストの代表作。太陽系の惑星(地球を除く)を、大規模管弦楽で描いた。「海王星」では女声六部合唱も加わる。全曲の初演は、1920年にコーツ指揮/ロンドン交響楽団によって行なわれた。

・火星 戦争の神
・金星 平和の神
・水星 翼のある使いの神
・木星 快楽の神
・土星 老年の神
・天王星 魔術の神
・海王星 神秘の神

1930年に発見された冥王星(当時は太陽系第9惑星)は、ホルストが作曲した時点では、まだ発見されていなかったため含まれなかった。そこで、ハレ管弦楽団の委嘱を受けたイギリスの作曲家、コリン・マシューズが「冥王星 再生の神」を作曲し、2000年に初演した。「海王星」最後のヴァイオリンの持続音から休みなく続き、最後に女声合唱も加わる。しかし、2006年に国際天文学連合総会で決定した新たな太陽系惑星の定義によって、冥王星は惑星からdwarf planet(準惑星)に降格することになった。
また、「木星」の第4主題に歌詞をつけた平原綾香「Jupiter」(作詞:吉元由美、編曲:坂本昌之 ドリームライフ MUCD5046)が2003年にリリースされヒットした。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
ホルスト指揮/ロンドン交響楽団、女声合唱団 1926 ナクソスヒストリカル 8.111048
カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団 1961 ロンドン KICC9220
メータ指揮/ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団、ロスアンジェルス・マスター・コラール 1971 デッカ UCCD7016
冨田勲(syn) 1976 RCA BVCC37508
ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ジョフリー・ミッチェル合唱団 1978 エンジェル TOCE7041
カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、RIAS室内合唱団 1981 グラモフォン POCG7003
デュトワ指揮/モントリオール交響楽団、モントリオール交響合唱団 1986 ロンドン POCL5152
C.デイヴィス指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送女声合唱団 1988 フィリップス PHCP9555
バンクス指揮/ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ、ブライトン・フェスティヴァル女声合唱団 1989 EMIクラシックス TOCE56081
レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団、シカゴ交響合唱団 1989 グラモフォン POCG50041
スヴェトラーノフ指揮/フィルハーモニア管弦楽団、ザ・シックスティーン 1991 メモリーズ(輸) MR2123
ロイド=ジョーンズ指揮/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル女声合唱団 2001 ナクソス 8.555776
エルダー指揮/ハレ管弦楽団、ハレ女声合唱団 2001 ハイペリオン CDA67270
ノリントン指揮/シュトゥットガルト放送交響楽団、シュトゥットガルト国立歌劇場合唱団、女声シュトゥットガルト声楽アンサンブル 2001 ヘンスラークラシック(輸) CD93.043
パーカッション・ミュージアム 2003 ファイアバード KICC432
トルヴェール・クヮルテット、小柳美奈子(p) 2004 イマジンベストコレクション IMGN3001
安田正昭、小野文子(p) 2010 日本アコースティックレコーズ NARC2061


ホルスト指揮/ロンドン交響楽団、女声合唱団 【評価C】
作曲者指揮による2回目の録音。ノイズや針音はほとんどないが、平板な録音である。
全体的に速いテンポで演奏している。貴重な自作自演だが、演奏の完成度は低い。縦線の乱れが散見され、音程もかなり悪い。打楽器はほとんど聴こえない。
「火星」はテンポの速さに驚く。96小節からの中間部もテンポを落とさずに演奏している。ラストの金管楽器のトゥッティは、アクセントをあまりつけていないため、鋭さに欠ける。「金星」は30小節からのAndanteを速く演奏するなど、テンポ設定を頻繁に変える。「水星」は演奏技術の問題でテンポが揺れて一定しない。「木星」の有名な第4主題は、スコアに書かれているように「non legato」で淡々と演奏している。「海王星」の女声合唱は大きめに入っている。また、最後の小節には「This bar to be repeated until the sound is lost in the distance.」との注釈があるが、この録音では2回しか繰り返されていない。


カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団 【評価C】
カラヤン1回目の録音で、この作品の存在を世間に知らしめた録音とされる。音程や音型の乱れなど細かいことは気にせず、突進している。ウィーンフィルとは思えないエネルギーである。この作品を世に広めようとする使命を感じるが、技術的にはいまひとつである。録音のせいか響きが平面的で広がりがなく、立体的な盛り上がりに欠けるのが残念。弱奏ではもう少し音色の透明感が欲しい。


メータ指揮/ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団、ロスアンジェルス・マスター・コラール 【評価D】
強奏でも音が飛んでこないため、盛り上がりに欠ける。大規模オーケストラで演奏しているとは思えない。音色も混濁気味。技術の弱さも耳につく。ティンパニを強調しがちだが、「天王星」のクライマックスでは金管楽器とティンパニしか聴こえないなどいただけない部分が多い。私の趣味に合わない演奏である。


冨田勲(syn) 【評価B】
冨田勲編曲によるシンセサイザーでの演奏。冨田一人で制作されたことに感嘆する。今聴いても古さをまったく感じない。多くの機器を使用し、多重録音など大変な手間をかけ、多様な音色を駆使して表現している。ステレオやエコー効果による遠近感と空間の広がりがすごい。音量の変更や内声の省略があるが、ほぼ原曲に忠実な編曲である。スコアにない音やノイズを大量に追加して、遊びの要素が感じられる。ほぼ全曲休みなしに続けて演奏される。各曲の前後に、宇宙空間を移動するような轟音が挿入される。
「火星」は、まずはじめに「木星」の第4主題がオルゴールで演奏される。宇宙飛行士と思われる男性2名の無線での会話や歌のあと、ロケットの発射音が聴こえる。3分頃からようやく「火星」が始まる。「金星」は、主旋律が女声や琴や口笛で演奏され、やさしい音色に癒される。「水星」は、主旋律を演奏するエレクトロニック・ハープの音色が面白い。左右へのステレオ効果も絶大で、原曲よりも数倍楽しめる傑作である。「木星」は、第4主題が風の音や合唱で荘重に演奏される。後半はカットされている。「土星」は、時計のカチカチという音がリズム音型として刻まれる。後半のAndanteでコントラバスパートを琵琶が演奏しているのも効果的。「天王星」は、大幅に短縮されて全曲で最も短い。電子音が似合いそうな作品なのに意外である。「海王星」は、前曲の「天王星」の合間を縫って始まる。原曲で指定されている音量(pp)よりも大きい。女声合唱は本物っぽく人工音とは思えない。最後は、冒頭に現れた「木星」のオルゴールで終わる。


ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ジョフリー・ミッチェル合唱団 【評価B】
この作品の非公開初演で指揮したボールトの5回目の録音。どっしりとした重厚感のある演奏である。初演者の風格や貫禄を感じさせ、安心して聴ける。全体的にやや速めのテンポを採用している。スコアに指示のないところで、積極的にテンポを揺らしている。「火星」が好演。小太鼓を強めに聴かせているのが効果的。109小節のホルンの扱いなど聴きどころが多い。


カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、RIAS室内合唱団 【評価A】
カラヤン2回目の録音。ベルリンフィルを駆使して巨大なスケールで描いている。まさに宇宙的な広がりを感じさせる。トランペットの強調やレガート奏法など、晩年のカラヤンの演奏スタイルがはっきりあらわれている。「火星」「天王星」が圧巻。「金星」「海王星」も細かいところまで丁寧に演奏していて絶品。


デュトワ指揮/モントリオール交響楽団、モントリオール交響合唱団 【評価B】
強奏でも攻撃的にならず、整然として落ち着いた軽い響きを聴かせる。打楽器も抑えめで、強奏は物足りなく感じる。オルガンを強調しているのも特徴。特に「火星」は準主役級の扱いで、SF映画を観るようである。「金星」「水星」の弱奏の透明感がすばらしい。なかでも「水星」と「木星」第4主題前後の木管楽器のアンサンブルが最高。この作品の違った魅力を教えてくれる演奏である。


C.デイヴィス指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送女声合唱団 【評価C】
同じイギリスの作曲家に敬意を払って演奏している。バランスの取れた音響で、すっきりスマート。大編成で演奏していることを誇示したくないかのようである。その分、表情のつけ方や響きの密度は薄い。あまり感傷に浸らず、サラリと演奏している。「火星」は速めのテンポでキビキビ演奏。「木星」の第4主題の有名なメロディーは、弦楽器がすすり泣いているように聴こえる。「海王星」は最後のAllegrettoが速すぎて余韻に浸れない。


バンクス指揮/ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラ、ブライトン・フェスティヴァル女声合唱団 【評価D】
サイ・ペイン編曲の吹奏楽による演奏。オルガン、チェレスタ、女声合唱も加わる。原曲に忠実な編曲だが、曲によっては弦楽器がないのが相当のマイナス。管楽器と打楽器だけでは表現に限界を感じる部分があり、作品の印象が変わってしまう。この編曲ならではの魅力を見つけられなかった。
ロンドン・シンフォニック・ウィンド・オーケストラは、イギリス国内のオーケストラ団員などを集めた臨時編成の62名。通常の吹奏楽の編成と比べると、バスーンは5名もいるが、サキソフォーンがアルト・テナー各1名と少ない。技術的には健闘していて、バランスもよく、見通しが効いた軽めのサウンドである。ただし、クラリネットの明るい音色が直接的にキャンキャン聴こえるのが耳障り。
「火星」の冒頭は、原曲通りコントラバスがコル・レーニョ(col legno)奏法で演奏する。強奏はあまり盛り上がらない。もっと強い音圧で大胆なスケール感が欲しい。ラストの金管楽器のffffのアクセントもあまり攻撃的に響かない。「金星」はAndanteから独奏ヴァイオリンのパートをフルートが演奏するが、やはり弦楽器の音色が恋しくなる。「水星」は木管楽器の明るい音色がやや不似合い。表情の変化にも乏しい。「木星」の冒頭は弦楽器の速い連符をクラリネットが演奏するが、高音がきつすぎ。鳥が鳴いているように聴こえる。有名な第4主題は終盤でオルガンが追加されて重厚感が増す。「土星」Andanteからコントラバスのパートをオルガンで演奏する。「天王星」64小節からの木管楽器は、音階が下降しているように聴こえない。「海王星」は弦楽器がないと音色が暖かくなってしまう。もっとひんやり冷たい音色が欲しい。


レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団、シカゴ交響合唱団 【評価C】
開放的で派手に鳴らしている。この作品はここまで鳴らせるのかと驚く。シカゴ響の総合力を見せつけられる。強奏の迫力はすごいが、音色が汚く、吹き捨てたりするなど乱雑に聴こえる。ティンパニもうるさく感じる部分がある。「火星」102小節でトランペットが5/2拍子を取り損なっている。「水星」はもう少し音量を落として欲しい。「天王星」60小節5拍目のクラリネットと第2ヴァイオリンのCの音は、♭がついてない(写譜のミス?)。


スヴェトラーノフ指揮/フィルハーモニア管弦楽団、ザ・シックスティーン 【評価C】
スヴェトラーノフ同曲唯一の録音。コリンズクラシックス原盤。スタジオ録音だが、ライヴ並みのエネルギーが感じられる。調和されたサウンドではなく、楽器の生音が聴こえる。手兵ではないイギリスのオーケストラを指揮してもスヴェトラーノフの音になるのはさすが。
各曲の副題や性格は意識されず、どの曲も同じように聴こえる。テンポ設定は常識的で、期待したほどの爆演ではないが、それでも十分個性的である。細かな音符を背景や脇役扱いにせずまじめに演奏するため、遠近感がない。直線的な音響で、宇宙的な広がりやスケール感は感じない。音符をじっくり濃厚に歌うが、一生懸命すぎて重い。「金星」「土星」「海王星」は、弱奏でも音量が大きい。
「火星」は遅めのテンポで、冒頭からリズム音型がしっかり鳴らされる。66小節からの弦楽器の四分音符は引きずるように弾かれる。「金星」は冒頭から音量が大きい。しっかり濃厚に歌われる。水彩画ではなく油絵のような演奏。「水星」はスタッカートがブレーキ役になって、音楽の流れが止まってしまう。低音が効いていて軽やかさに乏しい。「木星」は冒頭からの十六分音符の連符をきっちり聴かせる。有名な第4主題(194小節〜)は〔non legato.〕とスコアにあるが、歌い込みがすごい。音符から音が溢れそうである。466小節から木管楽器の連符を聴かせる。最後のPrestoはアッチェレランド気味に飛ばす。「土星」の冒頭は、フルートよりもバスフルートを聴かせる。Andante(105小節〜)は、ハープがよく聴こえるのが珍しい。「海王星」はかなり音量が大きい。女性合唱がマイクに近い。隣の部屋ではなく、オーケストラと同じ空間で歌っているようだ。最後の小節の反復がかなり長く続く。デクレッシェンドしながら12回も繰り返される。


ロイド=ジョーンズ指揮/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル女声合唱団 【評価D】
「冥王星」付きの録音。強奏でもおとなしく、小さなスケールでまとまっている。和音の響きも薄い。強奏ではオーケストラの音量の限界を感じてしまい、音量的に満たされない。オーケストラはあまり鳴っていないが、ホールの残響でごかましたような録音である。その代わりにティンパニの強打が目立つ。「天王星」にいたってはティンパニ協奏曲になってしまっている。「冥王星」はどういう作品なのか全体像が見えない。


エルダー指揮/ハレ管弦楽団、ハレ女声合唱団 【評価D】
「冥王星」付きの録音。全体的に強奏をためらっているように聴こえる。特に低音が鳴らない。遠鳴りしていて、かすんで聴こえる。迫力不足で聴きどころに乏しく、印象に残らない。「土星」などfffでもスケール感がさっぱり。連符など技術的に危なっかしく感じる部分がある。「海王星」は「冥王星」があるのとないのとでご丁寧に2バージョン収録している。「冥王星」は委嘱・初演オーケストラによる演奏だが、やや期待外れ。


ノリントン指揮/シュトゥットガルト放送交響楽団、シュトゥットガルト国立歌劇場合唱団、女声シュトゥットガルト声楽アンサンブル 【評価D】
ライヴ録音。随所でスコアに手を加えて演奏している。おもしろがってやっているようだが、人工的な表現が多い。弦楽器はノリントン好みのノン・ヴィヴラート奏法を採用していて、スリムな音響である。また、音を短く切って処理していて、テヌートがついていてもスラーがついてなければスタッカート気味に演奏している。しかし、短くしていない部分もあって一貫性がない。「火星」のリズム音型にスコアにないアクセントをつけているが、演奏しにくそうで音楽も停滞している。「金星」は音符が短すぎてせわしなく聴こえて落ち着かない。「木星」は第4主題で変な抑揚をつけているのが気に入らない。「土星」はフルートとバスフルートのテヌートを無視して、休符があるように聴こえてしまうのは疑問。「海王星」は、合唱が左右からはっきり分離して聴こえるのがおもしろい。


パーカッション・ミュージアム 【評価D】
ライヴ録音。菅原淳編曲による打楽器アンサンブル12名での演奏。原曲をかなり忠実に打楽器に置き換えている。音の持続が難しいという打楽器の特性が現れてしまい、スケールは原曲に及ぶべくもない。また、音色のバラエティにかける。意外にも縦線が乱れるのが惜しい。トレモロの音の粒がそろっていないのも気になる。「金星」「水星」「土星」「天王星」「海王星」で小節のカットがあるが、あまり気にならない範囲である。「水星」と「天王星」が編曲効果をあげておりおもしろく聴ける。「海王星」は合唱パートをビブラフォンで演奏しているが、やはり合唱で終わって欲しい。


トルヴェール・クヮルテット、小柳美奈子(p) 【評価C】
長生淳編曲によるサクソフォン四重奏+ピアノでの演奏。原曲7曲に加えて長生淳が「彗星 Comets」「冥王星 Pluto」「地球 The Earth」を新たに作曲した、その名も「トルヴェールの《惑星》」。装飾音の追加やリズムの改変にとどまらず、他の作曲家の作品を自由に引用しており「編曲」というよりもほとんど「作曲」である。ホルストの原曲も素材を引用したに過ぎない。冗談音楽のノリに近く、あまりにも飛躍しすぎている。サクソフォン四重奏の長所を生かしてかなり技術的に作曲されているため、演奏効果は絶大。オーケストラにくらべてもあまり聴き劣りはしない。ファーストチョイスには薦めないが、新鮮である。各曲の紹介は演奏会レポート 「トルヴェールの「惑星」」(2004.10.10)を参照。


安田正昭、小野文子(p) 【評価B】
作曲者自身による2台ピアノ版での演奏。オーケストラ初演に先立つ1916年に試演された。オーケストラよりも楽器の数がはるかに少ないが、オーケストラ版よりも先に作曲された経緯から、オーケストラに近づけようとして音の数を増やそうとはしない。全音符もトレモロしないで余韻で聴かせる。強奏の迫力は物足りないが、余計な装飾をつけないでシンプルに作曲されている。オーケストラのスコアを見てそのままピアノで弾いたようで違和感なく受け入れられる。ピアノ2台でもじゅうぶん聴くことができる。逆にオーケストラでは難しい表現がピアノでは容易に表現された部分もあり、新鮮に聴こえる。作品の原型を知ることができ、作品の再評価にもつながる。
当盤は「邦人演奏家による初めての全曲録音」を謳っている。残響を多くつけずに、明るく透明感ある音色が魅力である。必要以上に鍵盤を強打することもない。
「火星」冒頭の連符は音程が変わる第2ハープのパートを演奏する。66小節からの弦楽器の四分音符はスタッカート気味に軽い。ラストはテンポを落とさずに機械的に演奏する。「金星」はオーケストラが厚化粧だと感じるほど。「水星」は意外に低音が聴こえる。189小節からの弦楽器パートの四分音符が最高。「木星」は冒頭の十六分音符が淀みなく滑らかに流れる。有名な第4主題は淡々と弾かれる。「土星」冒頭はオーケストラ版のフルートに近い響き。Tempo I.(50小節)から速いテンポで頂点まで上り詰める。「天王星」は打楽器がないのでおとなしい。222小節のフェルマータもあっさり。「海王星」はピアノだと音質が硬く輪郭もはっきりしすぎる。チェレスタやハープのパートが演奏されるので、細かな音符が耳につく。女声合唱もピアノで演奏される。原曲以上にものさびしい終曲である。



2005.9.25 記
2006.8.26 更新
2007.6.17 更新
2008.6.20 更新
2009.10.27 更新
2010.6.5 更新
2013.1.25 更新


グローフェ/組曲「グランド・キャニオン」 ヤナーチェク/シンフォニエッタ