◆作品紹介
1924年にポール・ホワイトマンの委嘱を受けて ガーシュウィンがジャズ風協奏曲を作曲中と新聞が報じた。ガーシュウィンは正式な作曲委嘱は受けていなかったが、3週間ほどでこの作品を完成させた。クラシックとジャズを融合させた「シンフォニック・ジャズ」として高く評価される。通常の楽器編成に加えて、サクソフォーン3(アルト2、テナー1)とバンジョーが追加される。
初演は1924年2月12日にニューヨークで開催されたコンサート「Experiment In Modern Music」において、ガーシュウィン自身のピアノソロとポール・ホワイトマン楽団によって行なわれた。ジャズ・バンドの編曲はガーシュウィンのオーケストレーションが未熟だったため、ファーディ・グローフェによって行なわれた。その後グローフェはガーシュウィンの没後となる1942年に管弦楽用編曲を出版した。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
ガーシュウィン(p)、ホワイトマン&ヒズ・オーケストラ | 1924 | RCA/タワーレコード TWCL3007 | B |
ガーシュウィン(p)、シルクレット指揮/ホワイトマン&ヒズ・オーケストラ | 1927 | RCA/タワーレコード TWCL3007 | A |
カッチェン(p)、ケルテス指揮/ロンドン交響楽団 | 1968 | デッカ UCCD3301 | C |
ガーシュウィン(p)、ホワイトマン&ヒズ・オーケストラ(1924年) 【評価B】
初演の4ヶ月後に同じメンバーで録音された同曲初録音。アコースティック録音のため音像は遠いが、初演当時の雰囲気を知ることができるのが貴重。ただし、SP録音の制約で短縮版での演奏のため、カットがかなり多い。練習番号14に入らずに練習番号18の2小節前に飛ぶ。練習番号20の4小節前に入らずに練習番号Fに飛ぶ。練習番号Gに入らずに練習番号Hの8小節前に飛ぶ。練習番号39に入らずに練習番号40の3小節前に飛ぶ。
後述の再録音に比べれば初々しさがある。サクソフォンがよく聴こえる。冒頭のクラリネットソロは独特の音色とアーティキュレーションが聴きもの。ガーシュウィンのピアノソロもセンスがあり、アルペジオで弾いたりする。練習番号5の21小節からは左手を強調する。練習番号9のトランペットのフラッターや練習番号11のクラリネットのスウィング奏法がすごい。練習番号28からは意外に遅いテンポ。
ガーシュウィン(p)、シルクレット指揮/ホワイトマン&ヒズ・オーケストラ(1927年) 【評価A】
電気録音での再録音。指揮者が代わった理由は、CDの解説によるとガーシュウィンとホワイトマンが演奏をめぐって仲違いしたためらしい。
初録音よりも録音が鮮明で、各楽器のパッセージがよく聴きとれる。鑑賞するにはこちらのほうがいい。演奏も基本的に変わらないが、表現がより練れている。ジャズのムードもよく出ている。ガーシュウィンのピアノソロも慣れてきたのか、肩の力が抜けて流れるように弾く。カットは練習番号H前の4小節を繰り返す以外は初録音と同じ。初録音よりも演奏時間は30秒ほど早い。
5小節から金管低音が重厚に響く。練習番号37から音符をひきずるように演奏。練習番号40から金管楽器の鳴りがすごい。
カッチェン(p)、ケルテス指揮/ロンドン交響楽団 【評価C】
アメリカ生まれで42歳の若さで亡くなったカッチェン生涯最後の録音のひとつで、同曲2回目の録音。カットなしでの演奏。ピアノは軽いタッチで明るい音色。ロンドン交響楽団の伴奏は、即興的にしたいのか細部がそろっていない部分が多い。バンジョーが随所で聴こえる。
冒頭のクラリネットは弱音から始まり、17連符は後半からグリッサンド。開放的な音色でジャズ風のビブラートも聴かれる。練習番号6から遅いテンポ。主旋律はだあだあとアーティキュレーションを濁して演奏する。練習番号9からトランペットのフラッターが強烈。練習番号33(Leggiero)から速いテンポ。練習番号39アウフタクトのトロンボーンは楽譜通り三十二分音符のスラーで演奏。同3小節からは速く弾きたいカッチェンとオーケストラ伴奏が少しずれる。ラストの一音はピアノがオーケストラよりも先に終わる。
2013.10.28 記