ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」


◆作品紹介
ドヴォルザーク最後の交響曲。「新世界」とは当時新大陸だったアメリカのこと。ジャネット・サーバーの招きで、ニューヨークのナショナル音楽院の院長に就任したドヴォルザークが、アメリカ滞在中に作曲した。黒人霊歌やネイティヴ・アメリカンの民謡との関わりが指摘されている。「新世界より」の標題はドヴォルザーク自身が名付けた。第2楽章は「家路」として名高く、「遠き山に日は落ちて」の歌詞もある。
初演は1893年12月16日にカーネギーホールで、アントン・サイドル指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏で行なわれた。ドヴォルザークも初演に立ち会っている。日本では1月に演奏されることが多い。


◆CD紹介
演奏団体 録音年 レーベル・CD番号 評価
シルヴェストリ指揮/フランス国立放送管弦楽団 1956 EMIクラシックス TOCE16092
アルブレヒト指揮/読売日本交響楽団 2004 オクタヴィアレコード OVEM00002


シルヴェストリ指揮/フランス国立放送管弦楽団 【評価B】
ルーマニア出身の指揮者シルヴェストリによる歴史的名盤。奏者も大らかに伸びやかに演奏していて、その開放感が作品が持つ雰囲気にふさわしい。表情豊かな木管楽器の音色も魅力。コントラバスがよく効いている。
録音場所のサル・ワグラムは容積が大きく、奥行きが広い。録音年は1959年の表記だが、『レコード芸術』によると1956年が正しい。ステレオ録音初期のため、不自然な編集(テープのつぎはぎ)が分かってしまう。第3楽章と第4楽章に目立つが、録音技術の歴史を知るうえでは興味深い。第1楽章の強奏でたまにノイズが混じる。
第1楽章冒頭は遅めのテンポで、休符の間を大きく取って歌い込む。10小節からはテンポが速い。176小節での反復はなし。241小節からティンパニが落ちる。後半はよく鳴って快感。第2楽章22小節から木管楽器の和音を大きく盛り上げる。54小節からヴァイオリンのささやくような伴奏がいい。第3楽章は123小節付近で縦線が少し乱れる。176小節からは遅めのテンポでゆったり歌う。第4楽章は34小節からヴァイオリンのアーティキュレーションをはっきり聴かせる。最後のデクレッシェンドは短い。


アルブレヒト指揮/読売日本交響楽団 【評価C】
第7代常任指揮者アルブレヒトによる「読売日響ニューイヤー・コンサート」(2004.1.13 サントリーホール)のライヴ録音。非売品。
録音はティンパニが遠く感じるが、まろやかな音質で、強奏でもきつくなったり、トゲトゲした触感にならない。弦楽器主体の音楽づくりで、管楽器はあまり前面に出てこない。ライヴなので、いくつかキズがある。
第1楽章4小節のホルンは六十四分連符を詰めて長く伸ばすので格好いい。6小節からテンポを速める。10小節からのティンパニは短く、全体的にティンパニはffでも弱い。序盤は音の立ち上がりが遅いので重く感じる。149小節からテンポを揺らして歌い込む。176小節の反復記号なし。細部まできっちり演奏しているが、横の流れやフレーズ感に乏しい。
第2楽章4小節のティンパニはトレモロではなく音符をはっきり聴かせる。46小節(Un poco piu mosso)から速いテンポ。78小節(Meno)から弦楽器が繊細な音色。
第4楽章10小節からのホルンとトランペットのメロディーはスラー気味に音符をつなげて演奏する。アクセントをつけないのが新鮮。力まないでなめらかに流す。伴奏の四分音符のトゥッティはまとまった響きで、ベートーヴェンを思わせる。最後の小節のデクレッシェンドは短め。



2013.6.21 記


ドビュッシー/ベルガマスク組曲 ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」