ドビュッシー/ベルガマスク組曲


◆作品紹介
ドビュッシー初期のピアノ作品。完成までに15年を要している。作品名の由来は諸説あるが、ドビュッシーがイタリア留学時代に訪れたベルガモ地方の印象をもとにした説が有力である。
作品は「前奏曲」、「メヌエット」、「月の光」、「パスピエ」の4曲からなる。「月の光」が最も有名だが、どの曲も魅力的である。「月の光」は、中学校音楽科の鑑賞教材として使用されていた。


◆CD紹介
演奏者 録音年 レーベル・CD番号 評価
ギーゼキング(p) 1953 EMIクラシックス TOCE3223
ヴェデルニコフ(p) 1962 デンオン COCQ83658
フランソワ(p) 1963 セラフィム TOCE7177
アース(p) 1970-71 エラート WPCS21080
リヒテル(p) 1979 メロディア MELCD1001622
ベロフ(p) 1994 デンオン COCO80638


ギーゼキング 【評価B】
「前奏曲」、「メヌエット」、「パスピエ」は間を取らずにインテンポでスラスラ弾いている。ストレートな表現だが、素っ気ない。「月の光」では一転して、テンポを自由自在に操って、うっとりする演奏を聴かせる。弱奏での透明感がある美しい音色に惹かれる。ところどころで息を吸う音やうなり声が聞こえる。録音上のノイズは気にならない程度である。


ヴェデルニコフ 【評価C】
モノラル録音。寒色のやや冷たい音色で、フランス的な香りには乏しい。演奏もまじめすぎてやや堅苦しく感じてしまう。「月の光」では、ロシアの湖に浮かぶ満月がイメージされる。「パスピエ」は左手の伴奏型を目立たせているのがおもしろい。


フランソワ 【評価B】
いかにもフランス音楽という演奏である。油絵を思わせる明るい音色は存在感がある。和音は開放的によく鳴り、旋律も生き生きしている。速いパッセージではスピード感もある。いくぶん即興的な演奏だが、有無を言わせない説得力がある。


アース 【評価D】
交通整理が不完全で、何をどう聞かせたいのか伝わってこない。強奏でも音に広がりがなく、響きが薄い。スコアに忠実だが、イマジネーションをかき立てられるような演奏にならない。もう少し柔らかい音色が欲しい。「パスピエ」はスタッカートを意識しすぎて機械的である。二分音符の和音をスコア指定にないアルペジオで弾いている部分があるが、マイナス効果である。


リヒテル 【評価B】
ライヴ録音。4曲をほとんど休みなく弾いている。聴衆ノイズがやや耳障り。
和音を響かせるよりも、主旋律をしっかり弾くことに主眼を置いている。一音ずつ明瞭な打鍵で弾かれる。硬めの音質で温かみはない。特に高音のアインザッツはシャープに立ち上がる。
「前奏曲」は、tempo rubatoの指示通りテンポに緩急をつけて空気感がある弾き方。7小節で音量を増す。「メヌエット」は速めのテンポ。「月の光」はかなり遅いテンポ設定でゆったり弾く。柔軟で詩的な表情があり、リヒテルに対する固定観念を覆されるほど。「パスピエ」は音符を短く処理して速めのテンポで機械的に弾く。59小節から鋭い打鍵で大きく盛り上がる。


ベロフ 【評価B】
右手の故障復帰後の2回目の録音。速めのテンポで流れるように弾いており、表現もさっぱりしている。スコアから必要な音符をセレクトして聴かせており、余分な音が聞こえない考え抜かれた演奏設計である。音色も明るく繊細で蒸留水のように澄みきっている。ただ、あまりにも音色に重みがなく薄っぺらいと感じる向きもあるかもしれない。また、「パスピエ」は速すぎてせわしない。



2004.5.4 記
2009.12.15 更新


ドビュッシー/交響詩「海」 ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」