◆作品紹介
ブラームス最晩年の作品。創作力の衰えを感じ、引退を考えたブラームスであったが、1891年に聴いたマイニンゲンの宮廷管弦楽団クラリネット奏者のリヒャルト・ミュールフェルトの演奏に魅了され、再び創作意欲を取り戻した。彼のために「クラリネット三重奏曲」「クラリネット五重奏曲」「クラリネット・ソナタ第1番」「クラリネット・ソナタ第2番」を作曲した。「クラリネット五重奏曲」は最も有名で、モーツァルトと並ぶ名曲である。
4つの楽章からなり、第4楽章は変奏曲の形式で書かれている。
公開初演はミュールフェルトのクラリネット独奏とヨアヒム四重奏団の演奏で、1891年12月に行なわれた。
◆CD紹介
演奏団体 | 録音年 | レーベル・CD番号 | 評価 |
ライスター(cl)、ベルリン・ゾリステン | 1988 | テルデック WPCS21062 | C |
マイヤー(cl)、アルバン・ベルク弦楽四重奏団 | 1998 | EMIクラシックス TOCE14207 | B |
ライスター(cl)、ベルリン・ゾリステン 【評価C】
ライスター4回目の録音。気心が知れたベルリン・フィル団員との共演である。協調が取れたアンサンブルで、各楽器の聴かせどころを尊重している。
弦楽四重奏はチェロがよく聴こえるなど見通しがよい。アーティキュレーションをはっきり浮き立たせる。全体的にゴツゴツしていて、スムーズに流さない。
ライスターの音色は明るく甘い。まろやかに響いて、押し付けがましいところがなく、リラックスして演奏しているが、軽すぎて薄っぺらい。息を強く入れないで吹いているように聴こえるので、もう少し重厚感が欲しい。第2楽章では連符にアゴーギクをつけてソリスティックに聴かせる。
第2楽章冒頭は遅めのテンポで演奏。66小節から弦楽器を丁寧に聴かせて盛り上がる。第4楽章は最後から2小節(221小節)の指定fだが、ffくらいの強い音圧で演奏する。
マイヤー(cl)、アルバン・ベルク弦楽四重奏団 【評価B】
マイヤー2回目の録音。ライヴ録音のため、やや興奮気味で熱気がある。晩年の作品と思えないほど、エネルギッシュで躍動的に聴かせる。マイク位置が近いせいか、音圧が強く力が入りすぎている。もう少し落ち着いて聴きたい。
バランスも弦楽四重奏が全面に出てクラリネットに密接にからむ。クラリネットは奥まっていて聴こえにくいのが残念。アンサンブルの主導権も弦楽四重奏にあり、クレシェンド・デクレシェンドの抑揚を少しおおげさすぎるほどつけて、クラリネットに負けないくらい目立とうとする。
マイヤーのクラリネットは、厚そうなリードで深みのある音色。アインザッツの立ち上がりもソフト。
第2楽章43小節以降でクラリネットが大きな音量で盛り上がる。67小節は弦がクラリネットに対抗するように、激しいアクセント。85小節からは速いテンポで一気に演奏する。第3楽章は34小節(Presto non assai, ma con sentimento)から速めのテンポがスリリング。第4楽章は97小節からの第3変奏と161小節からの第5変奏が絶品で、何度も聴きたくなる。
2009.11.17 記